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健忘

 以下、2023年10月に書いたまま眠らせていた日記だ。特に意味もなく下書きに置きっぱなしにしていたので放流しておく。

 ここ1ヶ月、眠る前に薬を服用している。正確にはもっと前からではあるが、明らかにこれにより眠りにつかされている感覚があるものを処方されたのが1ヶ月前だ。寝たいのに寝れなくて寝れないから体が怠くて不安も強くていつだって泣いてしまいそうな焦燥感のなかで日々を過ごしていた。台風が過ぎ去るのをただ待つように、荒れ狂う私の心の隅で普段の私が膝を抱えていたが、たまらず月に一度通っている病院へと月末を待たずに駆け込んで、詳細を話すと追加で処方された薬が、それというわけだ。

 それで、その薬は私にきちんと睡眠をもたらしてくれている。大変ありがたいことだ。心が波打つことがあっても、これを飲めば考えている暇がなく眠ることができる。夜の不安で何にもならない不毛な時間を一瞬でスキップしてくれる。だがそれと同時に”健忘”という症状をもたらす。要するに、薬を飲んでから寝るまでの記憶がおおよそ無い。これが妙に恐ろしく、面白い。深夜のツイートや、ゲームアプリなどに夜の私の痕跡が残っているのにちっとも思い出せない。まるで誰かが数十分、私の身体を乗っ取っていたのかもしれないと思わせるほどだ。存在しない隣人を感じ取る不思議な体験が続いている。

 同時にこの現状に少しだけ怯えている。知らないうちに誰かに連絡していたらどうしようとか、SNSで変な言い掛かりをつけて翌朝まともな私がその尻拭いをするはめになったらどうしようとか、不安に思うことはいくつもある。今のところその兆候はないので暫く面白がっていようと思う。


 以上が2023年10月に書いたまま眠らせていた日記だ。現在は2024年1月上旬、それから2ヶ月以上経っているが誰かに迷惑をかけるには至っていない。覚えていないからと言って正気を失っているわけではないのだなと少し安心しつつ、今もまだ覚えていない昨晩の痕跡を面白がる毎日を続けている。前よりはよっぽど眠れるようになって身体も調子を取り戻している。ただ冬の間はもう少しだけ気を付けていようと思う。何事も油断は禁物なのだ。

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