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【映画感想文】オタクが今さらスーパーマリオブラザーズムービーの感想を語る

 今さら近所のレンタルビデオ屋さんで『スーパーマリオブラザーズムービー』を借りて見ました。最初はSNSにポチポチ感想つぶやこうかなとも思ったのですが、下書きするうちに想像よりも書きたいことが多かったので、折角ならブログで長文読んでもらいたいな~という結論に至り、ここに書くことにしました。ネタバレ含みます。ルマリーかわヨ。

 まずシンプルに言ってめちゃくちゃ楽しめた。ハイクオリティな映像もともかく、私個人としても所謂ビデオゲーム『スーパーマリオ』シリーズの作品のオタクであるため、本映画においてもちょっとしたBGMのライトモチーフを聴いただけでテンションが上がったり、制作側が私のようなオタクに向けて置いた小ネタに気づいたときの喜びがあったり、映画そのものを楽しむのに加え、そういった文脈に浸かってきたからこそファンムービーとしての楽しみ方ができた。少し詳細に語りすぎたので、以下細かく分けて各要素についての感想を主観たっぷりに記載していきます。

1 ストーリー

 早速ネガからになって申し訳ありませんが、やはり事前評価にあったようにストーリーはそこまで……プロットは改めて振り替えると至ってシンプルそのもの。カタルシスを感じるシーンもないことはないのですが、やはりマリオという40年間現役の超ビッグブランドに裏打ちされた説得力からくるものだなぁといった印象が強いです。(要するにマリオの映画じゃなかったらそこまでのシナリオの映画だよな~といった感覚)
 それでも最初にスパイク(ピザ屋で喧嘩売ってきたヒゲのあいつ)に弟を貶されたマリオが果敢に啖呵を切るシーンに始まり、ルイージが家族から蔑ろにされ落ち込む兄を励ますシーン、二人の幼少期のシーン等、ちょくちょく挟まるマリオとルイージの兄弟愛の描写に関してはグッとくるものがあったので、この部分ををもっと深掘りすれば最後ルイージがマンホールでクッパの炎を受け止めるシーンでも今以上の感動が得られたんじゃないかな~と素人目には思ったり思わなかったり。
 筆者は予め「エンタメとして最高だけどストーリーはさほど」という評判は耳にしていたので、そこに関してはハードルも下がり、そこまでガッカリすることはありませんでした。まぁここはこんなもんだよね、っていう。
 というかストーリーなしで(なしって言ったら失礼だけど)ここまで面白いのが逆にすごくない???という思いの方が強かったです。既にマリオの映画に関しては次回作の製作が決定していると聞きましたが、もしこのエンタメ力に重厚なストーリーが加わったとき、とんでもない映画が誕生するんじゃないか、というワクワクがありました。"伸び代がある"という見方ですね。本当に期待しています。

2 映像

 とにかく私が一番誉めたいのはキャラデザ。キャラデザのすごさにつきます。キャラクターデザインという言葉に馴染みのない人は「マリオもルイージもドンキーも元々デザインされたキャラじゃないか」と思うかもしれませんが、キャラデザとはそれだけのことを指すわけではなく、元々あるキャラクターデザインを映像のスタイルに合わせて変化させるため、どこを削り何を追加すればいいかを考える、というのもキャラクターデザインです。
 少々脱線になりますが、私は個人的に昨今のゲームがリアル方面のグラフィックを目指しすぎることに懐疑的で、元々トゥーンスタイルのアートで結果を出してきたゲームが無理にリアル路線とちゃんぽんしようとした結果、どっちつかずで微妙なグラフィックのものが生まれるというシーンに何度も遭遇してきました。
 例えばファイナルファンタジーシリーズは人物の毛穴まで再現する程気合いの入った写実的でリアルなグラフィックをしていますが、もしポケモンが急きょその路線に舵を切り、かわいいゼニガメちゃんやヒトカゲちゃんが目の異常に発達したパステルカラーの爬虫類になったら……と想像すれば分かりやすいと思います(それはそれで喜ぶ人も中にはいるかもだけど)。
 それを考えたとき、本映画におけるマリオにクッパ、ドンキー達のデザインは本当に完璧で、元々あったものをそぼままリアルにしたらグロテスクになってしまう部分をうまいことデフォルメによって誤魔化して調整し、かつ原作からビジュアルが離れすぎないよう細心の注意も払いながら、全体的に可愛らしい雰囲気に纏めあげて……と、一目見ただけでそこに至るまで膨大な数の試行錯誤があったのだと伝わるような、それ程完璧に調節されたデザインだと感じました。今までのゲームより格段にリアルなのにそのままビデオゲームから出てきたような安心感。この矛盾。ほんの数秒しか出ないゲッソーとかめっちゃかわいい。
 もちろん背景その他光源とかも素晴らしかったのですが、キャラデザについて熱く語りすぎたので割愛します。

3 ローカライズ

 吹き替えで見たんですけど、ちょっと吹き替えの翻訳どうなの……?と思ったり。
 言語版でクッパがスーパースターを氷の国から強奪してからマリオブラザーズのCMにつながるまでの流れは
クッパ、氷の国を滅ぼす。
    ↓
スーパースターを手中に収めるクッパ
    ↓
クッパ「I finally found it…Now who's gonna stop meeeeeeeee!?」
    ↓
暗転と共に流れるおなじみのイントロ
    ↓
CM「We are the Mario Brothers♪」
という、圧倒的な力を持つクッパの「誰が私を止められるものか!」という問いに対して間の抜けたCMが「俺達マリオブラザーズ」というアンサーを出すクッソお洒落な演出もニュアンス的になくなってしまっていて少し残念だった。
 あと宮野真守演技力は申し分ないけどキャスティングがあんま合ってた感じがしなかった。ルイージの畠中祐はよかった。

4 BGM
 冗談抜きでこの映画で一番の評価点じゃないかと思ってます。原曲の天才的にキャッチーなメロディは劇伴のそこかしこにライトモチーフとして登場し、EDのマリオBGMメドレーはどの曲もアレンジが最高。例え原曲を一曲も知らない人でもいい曲だなぁ、と感じるに違いなし。曲のためだけでも見る価値があります。
 今さら私ごときの口から言うことではありませんが、改めてマリオのBGMって最高なんだな、と再認識させてくれます。

5 メッセージ性 ついでに総括
 さんざんストーリーがないだなんだ書き連ねてから言うと違和感があるかもしれませんが、自分はこの映画にはとても強いメッセージが込められているように感じました。
 そのメッセージとは「失敗してもとにかく諦めるな」という、やや陳腐ではあるものの、単純であるがゆえにしっかりと伝えやすいものです。
 この映画において、マリオは始終とにかく失敗、敗北を幾度となく繰り返します。序盤でスパイクに負けたことに始まり、初仕事で失敗、ピーチ城の練習コースでも失敗に次ぐ失敗、ドンキーにボコボコにされ、クッパにも吹っ飛ばされ、こんなにやられる主人公いるかってぐらい何度もこっぴどくやられ、また挑戦し、またやられます。
 しかし、初めてこの映画を見た筈なのに、なぜか観客は全員その姿に覚えがあります。
 それは、他でもない"あの日あなたが操作したマリオ"がそこに居るからです。
 最近『ネネチニャン』という動画投稿者さまの、やたらと不注意な失敗を繰り返しながらスーパーマリオシリーズを遊んでいく、という動画が爆発的にバズったのも記憶に新しいですが、あなたもマリオを操作しては、穴に落ち、自分で投げた甲羅にぶつかり、強制スクロールに挟まれ、それでもクリアのためにまたやり直し、最後のゴールと同時にガッツポーズをした経験があるのではないでしょうか。映画の中で失敗を繰り返しつつも決して諦めないマリオは、マリオであり、あなたなのです。
 ラストシーンでマリオはスパイクよりも、ドンキーよりも圧倒的な対格差を誇る相手にも諦めずに立ち向かい、ブルックリンで大魔王クッパを撃破し、英雄として皆から称賛を受けます。コンプレックスだった父親には「自慢の息子」として紹介され、かつて自分を馬鹿にしてきたスパイクを見返すことにも成功します。キノコ王国で諦めずに立ち向かい続けた経験が、マリオをブルックリンの英雄"スーパーマリオ"にしたのです。
 私は全体を通して、キノコ王国はゲームの世界、ブルックリンは現実世界のメタファーであるように感じました。つまりこの映画が伝えたいことがなんなのかというと、例えそれがゲームだろうとなんだとうと、心が折れそうになったときに立ち上がった経験は、現実でもきっとあなたが将来何かを成し遂げる糧になるんだよという、この映画の本来の対象年齢である子供たちにもはっきりと伝わる、分かりやすくも力強く、かつスーパーマリオというゲーム作品の映画化だからこそ伝えることのできるメッセージを、私は確かに感じました。
 雨垂れ石を穿つ。最初は無理に思えたことも、失敗を繰り返しても諦めず、何が悪かったかを分析し次の挑戦に活かし続けることで、前のトライより少しずつ前へ進み、最終的には達成できるというのは、なにもゲームに限った話ではありません。分かりやすい例で言うと、大学入試の過去問を解いているときに近いかもしれません(笑)。
 もし人生で果てが見えない程高い壁にぶち当たったとき、少しでも登る前から無理だと諦めてしまう人も居ます。それはそれで賢いともいえますし、決して間違った選択ではありませんが、諦めずに成功を掴んだ体験がある人には"立ち向かう"という選択肢が一つ増えていて、"諦める"しか選択がない人よりお得なのです。諦めずに挑戦を続けていれば、ある日高い高い壁をマリオのように飛び越えらるようになってしまう可能性だってあるのです。
 感じただけなのでそこまで考えてないかもしれませんが、まあそういう捉え方もあるんだな~ぐらいで済ませておいてください。

6 しめ

 書きたいことはあらかた書けたので、この辺で適当に終わろうと思います。まとまりのない駄文でしたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
 シェアされると私がよろこびます。どうぞよろしくお願い致します。


 

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