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「病院」の4類型(特定機能病院・地域医療支援病院・精神病院・一般病院)

written by 病院建築note(医療機器出身のゼネコン社員)

医療動向を調べていると「急性期病院の経営は厳しい」「診療報酬改定で回復期リハビリテーション病棟は減収」など病院や病床の種類毎に課題や施策が設定されています。

手術用内視鏡の営業をしている際は「担当施設での胃がん、大腸がん等の症例数」「どの先生が執刀しているか」「手術に使用しているデバイス」「いま困っていること」といった各論から病院に入り込んでいました。

今回はもっと俯瞰した視点から「病院組織」について記事にしようと思います。

私は医療機器メーカー時代、埼玉県内を担当していました。当時は担当している病院がどれに該当するか知りませんでしたが、この機会に合わせて整理したいと思います。

■病院組織は「病床<病棟<病院」で構成されている

病院組織は「病床<病棟<病院」という単位で構成されていおり、それぞれ医療法によって分類されています。その分類毎に施策が立案されています。会社に例えると「座席<部署<会社」でしょうか。

今回は「病院」の分類について書いていきます。

■病院は4パターン

病院は医療法によって、機能別に4つに分類されます。

①特定機能病院 (イメージ:大規模病院)


大学病院クラス。厚生労働大臣の承認を得た病院。全国には約8,300の病院がありますが、その中で特定機能病院は88病院だけです。(2022年12月現在)

病床数400床以上に加えて下記の厳しい認定要件があります。
・高度先進医療(厚生労働省の認可を得た新しい手術や治療)の提供と開発及び評価能力を有する
・16の診療科を標榜している
・集中治療室、無菌室、医療品情報管理室を保有している
・地域の病院やクリニックから紹介された患者に対して医療を提供している
(紹介率50%、逆紹介率50%以上)
・看護師等は入院患者÷2が最低基準
・医師は通常の2倍以上の配置が最低基準で、半分以上がいずれかの専門医であること
※ほかにも諸要件あり


医療機器営業にとってこのクラスの病院を担当した経験があることはステータスです。

各都道府県の特定機能病院には医療機器メーカーのエース級が投入されています。
特に東京の特定機能病院はハイポテンシャルなので最重要施設です。

埼玉県の特定機能病院:埼玉医科大学病院、防衛医科大学の2つのみ。


特定機能病院の中から「臨床研修中核病院」が更に選定されます。(全国に12病院のみ)

②地域医療支援病院(イメージ:中規模病院)

地域の基盤病院クラス。都道府県知事から承認を受けた病院。全国に685病院ある(2022年9月1日現在)

病床数200床以上に加えて下記の認定要件があります。
・救急医療を提供する(義務)
紹介状中心の医療を提供していること
(紹介率80%以上・紹介率が60%を超え、かつ逆紹介率が40%を超えること・紹介率50%を超え、かつ逆紹介率が70%を超えること)
・建物、設備、医療機器の共同利用
入院施設や高額医療機器による検査体制(MRIやCT、マンモグラフィー等)を保有していない診療所やクリニックに入院病床を提供したり、検査の場を提供します。
具体例→https://www.f-toku.jp/cooperation/shared.php




埼玉県の地域医療支援病院:合計22病院


埼玉小児医療センター、北里大学メディカルセンター、済生会栗橋病院、深谷赤十字病院、上尾中央総合病院、獨協医科大学埼玉医療センター、川口市立医療センター、さいたま市立病院、戸田中央総合病院、埼玉医科大学総合医療センター等、

各地域の基盤病院のイメージです。

■紹介状なしで特定機能病院、地域医療支援病院を受診すると7,000円の追加料金

病院の機能分化のため、紹介状なしの受診は追加料金が徴収される

元々大病院を紹介状なしで受診した場合、5,000円の追加料金がありました。これは病院を機能分化させ、効率化を図るためです。

2022年10月にこの規定が厳しくなり、紹介状なしで受診した場合は7,000円になりました。
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●初診 医科7,000円、歯科5,000円
●再診 医科3,000円、歯科1,900円
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合わせて紹介状なしの患者の割合が多いと,、病院が受け取る診療報酬が減る仕組みもできました。
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初診では医科・歯科ともに200点(2,000円)、再診では医科50点(500円)、歯科40点(400円)が保険給付範囲から外れる
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初診の2,000円、再診の医科500円、歯科400円というのは、ちょうど全額自己負担となる特別料金の増額分と同じです。

このように病院の収入も増えず、特定機能病院や地域医療支援病院の要件に「紹介状の割合」があることから、機能分化が進む仕組みになっています。

③精神科病院


精神疾患を抱える患者の治療を目的とした専門病院です。
自身または他人に危害を与えると精神保健指定医が判断した場合は、都道府県知事の権限によって措置入院になる場合もあります。

そのため都道府県は精神科を設置しなければなれないと定められています。

埼玉県の精神科病院:埼玉県立精神医療センター等

④一般病院(イメージ:小規模病院)


①~③に該当しない病院。病院数は病院の定義である20床以上という以外に決まりはありません。~19床は「クリニック」「診療所」「医院」と分類されています。
人員配置は病床区分によって異なり、一般病床は医師16:1、看護師3:1です。

以上が医療法で規定されている「病院」の4パターンです。
次の記事では「病棟」の分類について記載したいと思います。

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hospital architecture note
mail:07jp1080@gmail.com
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同じように病院建築に関わっている方、ご質問がある方がいましたら、是非メールで情報交換させて下さい。ご返信させて頂きます。

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