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初めて手を握り合った日のこと

手、出して と隣の君が言った
わたしは左手を反射的に出してから
(違うか)と気付いて右手を出した
握手をした
右手と右手で握手をした
君のすべすべとした手のひらと
わたしの乾燥しがちな手のひらが
初めてまざり合った
ぬるい体温を感じた
骨も肉も わたしのものよりずっと大きく広がっていた

触れ合っている握手に物足りなさを感じた
こんなにもぴったりと手のひらと手のひらを合わせ
指と指を握り
近くに居るのに
君とわたしは、それぞれ別の容れ物に入っている
実のところわたしは少しずつこぼれ出してしまっているのだけど
「君」と「わたし」だった

「君」と「わたし」に物足りなさを感じた
誰よりも何よりも近い隣に居る瞬間なのに
その瞬間を「君」と「わたし」だけで過ごしているのに
言葉にしていない気持ちが多すぎて
気持ちを発する間も無いほど追いつかなくて
気持ちを伝える手段が他にわからなくて
言葉としての形すら成さなくて
君の手を強く握った
ただ君の手を強く握った

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