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ものを売るためのコミュニケーションをこえて

今朝、ポストをのぞいたところ一通のお手紙が入っていました。
いつも贔屓にしている着物屋さん、なでしこ新宿店の担当販売員Sさんからでした。

「この度、11月いっぱいで転勤の為、新宿店から異動になりました。」

なでしこ新宿店には2016年の初夏からお世話になっており、担当販売員さんからこういったお手紙をいただくのは実は2度目です。2度目とはいえ、やはり悲しいものは悲しいです。いや、もう本当にショックで1日しょげ返っています。
現担当のSさん、前担当のOさん、そして新宿店の皆さんからはいつもよくしていただいており、いつも買い物を手伝っていただいています。「買いすぎた」と後悔することはあっても「買わなきゃよかった」と後悔したことは一度もなく、いつも楽しい気持ちでお店を後にします。

これ、当たり前のようでいて本当に難しいことだと思うのです。同じ会社の系列店に行っても、なでしこ新宿店で買い物した時以上の明るい気持ちで帰ったことはありません。何故だろうと考えるのですが、それはきっとお店のファンを作るためのコミュニケーションがポイントなのではないかと思います。

ものを売ることを考えるとき、まずは「商品」が念頭に来ますが、それだけがお店を成り立たせているのではありません。販売員さんも、内装も、私たち客も全て含めてお店です。そのすべてに対して行き届いているなあというのが私の感想です。(これをブランドというのだと思います。)

1.頼れる販売員さん

反物ひとつとっても、布の素材や品質の話から職人さんの話のような生産側の視点から、季節やアイテムの合わせ方のアドバイスまで多角的に教えてもらいました。商品一つ一つに対するこだわりがわかり、販売員さんのプロフェッショナルとしての姿勢を見せていただきました。また、予算があればそれに合わせて見立ててくれたり、話し合いながらアイテムの優先度を示してくれたりと、非常に巧みです。これは買わなくてもいい、といってくれるあたりが特に。

2.好きに、楽しく着ればよいというメッセージ

「着物警察」なる姐さんがたが巷には出没するそうですが、このお店にはそんなことをいう人は一人もいません。「帯がうまく結べなかったら羽織でごまかせばいいよ!」「着物でも自転車乗ってもいいと思う、そういうスタッフいるし」「下はヒートテック着てるよ?」「まだ6月だけどスタッフの○○さんはもう浴衣着てるし大丈夫」などなど、「着物は斯くあるべし」という考えを打ち砕いてくれるような声を掛けていただきました。しかもそうじゃないことを言うスタッフさんは一人もいないのです。着物を初めて着る人、もっと楽しみたい人、その全員に寄り添ってくれるような空気がとても居心地よく、ありがたいのです。

3.「かわいい」の魔法

正直これが私にとって一番なのですが、試着しているときにネガティブなことを一切言われないのです。「かわいい!」「青似合いますね」「それ私もこの間買ったんです」とお店のスタッフさんからかわるがわる言われます。ほんとうにその時間お店にいるスタッフさん全員から。嫌な気持ちになるはずがありません。おだてられて買っていると言われるとそれまでですが……。ただ買わせることが目的ではなく、「着物を着た後のすてきな私」を売ってくれるように思えるのです。これが最高に上手だなあと思います。(他のお店に行きたくないくらいに)

ウェルカムな雰囲気とこの人たちにまかせておけば大丈夫だ、という安心感がなでしこ新宿店の魅力です。若年層に着物を着てもらいたいという本気度が見えて、私もたくさん着ようと思うのです。もう大好き。

Sさんの餞別とばかりに褒めちぎってしまいました。でも、Sさんが移動してしまっても新宿店は贔屓にしたいと思うあたり、ブランドづくりというかお店作りが上手なんだなあと思います。これを読んで気になった方はぜひ行ってみてください、絶対後悔しない時間が過ごせると思います。

そしてSさん、どうかお元気で……。勧めてもらったヒルトンのスイーツブッフェめっちゃ楽しかったです……。

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