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【保育園エピソード】こんなこいるかな?「笑わないしゃべらない泣かない女の子」編

こんにちは。
保育園で園長をしているSanaminaです。

今回は、「こんなこいるかな?」シリーズ第5段
です!

お家の姿とは違って
保育園では無表情で、
まったく声を出さない
1歳児クラスの女の子が
笑顔と言葉が出るまでの
成長ストーリーです。

#慣らし保育の始まり

1歳児クラスで入園したリオちゃん。
リオちゃんにとっては、
初めての保育園です。
新入園児のお友達は
みんな泣いて保育室は大騒ぎ。
そんな中、リオちゃんはというと…

泣きません。
笑いもしません。

玩具を渡しても遊びません。
話しかけても返事もありません。

みんなが大騒ぎで泣いて、
私たちが抱っこや玩具やスキンシップで
信頼関係を必死で作っている横で
リオちゃんは
ちょこんとずーっと正座で座って、
ぼんやりし続けていました。

リオちゃんは、
朝の登園時にママと離れる時も
全く泣いていません。
泣いて登園した姿は
今思い返しても見たことがありません。

でも、
活動の切り替えの
声掛けなどには反応して、

しっかりしすぎてるというくらい
集団行動が出来ています。


私たちも
新年度の慣らし保育期間の
大騒ぎにいっぱいいっぱいでした。
リオちゃんは
「泣かない」
「先生のお話をしっかり聞ける」
良い子
というイメージのまま
順調に慣らし保育が進んでいきます。


お迎えに来たママには
「今日もがんばりました!
泣いたりはしてないですが、
緊張や不安でいっぱいだと思います。
いつか、
リオちゃんの気持ちが
溢れることがあるかもしれませんね。
お家でも変わったことがあったら
何でも話してくださいね」
とお伝えしていました。

#慣らし保育終了

何も困ることなく、
心配することなく
リオちゃんの慣らし保育が終わりました。

ちょっとこの先頑張ることは
「給食」くらいでした。

好き嫌いというよりは、
お肉とか繊維質の野菜とか、
ほとんど全部の食べ物において
噛んで飲み込むまでに
かなりの時間が必要でした。
これにはお家でのご飯も
困っていました。
数少ない好きなものは
早いんですけどね。

朝の会、お散歩の時、お帰りの会。
保育者がお名前を呼ぶ機会は
何度かあります。
同じクラスのお友達は元気いっぱいに
「はーい!」
と手をあげて返事をします。
「リオちゃん」
と呼ばれても

リオちゃんは返事はしません。
手もあげません。

1ヶ月ほど経って、
ようやく手をあげるようになってきました。

まだ、

笑った顔は見たことはありません。

みんなが玩具で遊んでいる中、
1人正座をしているリオちゃん。

少しずつ慣れてきたのか

保育者が
「リオちゃんおいで!」
というと、保育者の方へ行き、

ぎゅーっとして
スキンシップをしたり、
お膝の上に座ったり
するようになりました。

私たちも、
新年度が落ち着き始めやっと
一人ひとりとじっくりと
関われるようになってきたのです。

3ヶ月が過ぎ、
徐々に保育者との信頼関係は深まりつつ、
玩具で1人遊びをするようになりました。
お兄ちゃんがいるのでその影響なのか、
リオちゃんは電車や車が好きでした。

でも、まだ返事はしません。
声を聞いたことがありません。

#保護者との共有

お家の人には、
こまめにリオちゃんの様子は伝えています。
まだ一回も言葉が出たことがないこと。
笑顔を見たことがないこと。
お家の人はいつもこう言います。
「おうちでは
めちゃくちゃよくしゃべるので、
一言もしゃべらないなんて
考えられません!
本当はしゃべりたくて
仕方ないはず。
保育園楽しかった
とよく言っています。
猫かぶってるんですかねー。」
と、あんまり心配はしてなさそうでした。


保護者の声とは裏腹に

私にとってリオちゃんは
「少し気になる子」
になりつつありました。

そんなリオちゃん。
お迎えの時、
ママのところに行くと

笑顔が出るようになりました。

初めてリオちゃんの笑顔を見た時は
嬉しくて嬉しくて
たまりませんでした。

「さようなら」は言いません。

でもママと一緒なら
笑顔は見せてくれるようになりました。

#保育参観での発表

6月に初めての保育参観がありました。
リオちゃんのクラスも
お勉強や歌などの発表がありました。
おともだちは元気に発表しています。
リオちゃんは言葉が出ず、
先生と一緒に発表しました。
泣いたりもしていません。

お家の人とは
事前にこうなることも予測して
話はしていたし、
日常的にも
こまめにリオちゃんの様子を
共有していたので、
参観でのリオちゃんの様子をみて
心配や不安が高まったというよりは、
リオちゃんなりによく頑張った!

みんなでたくさん褒めることができました。

やっぱり、
日々の保護者との
コミュニケーションって大事ですよね。
保育参観という大舞台でも、
泣かずに笑わずに
声を出さずに
いつもの保育園モードの
自分を貫いたリオちゃん。
そのぶん、
お家に帰ってからは
やっぱり
めちゃくちゃお話していたようです。

いつ、
リオちゃんがお家みたいに
いっぱいしゃべって
いっぱい笑って
いっぱい甘えてくれるんだろうと、
その日が待ち遠しくてたまりませんでした。

#職員間でのミーティング


入園してから半年近く経ち
いくらまだ1歳クラスといえども、
リオちゃんは2歳。

リオちゃんの発達面が
私は心配になってきました。

ただの人見知り、
場所見知りだけではないんじゃないか
という気持ちが
日に日に強くなっていきます。
だって笑わないんです。
色々私なりに調べたり情報収集もしました。
でも、まだ2歳のリオちゃんです。
これと言った答えなんて出てきません。

職員みんなでミーティングをします。
それぞれが感じるリオちゃんの様子や成長、
心配を話していきます。
そして、1つ出たリオちゃんへの配慮。

まずは1対1での信頼関係を
深めていくこと。

1対1といっても、
その1とは
常に同じ人という意味合いになります。

担任や先生たちは
日々の保育で慌ただしく
本当に無制限にじっくり関わることは
難しいですが、
私は園長なので、
保育から抜けて
リオちゃんとの時間を
過ごすことは可能です。
私はリオちゃんと
1対1でじっくりと関わる時間を
設けることにしました。
もちろん1日中とかではなく、
ほんの10分15分です。

#リオちゃんとの2人の時間

「リオちゃんと、
リオちゃんの選んだ絵本を
2人で読む」
というのを日課にしました。

その時には「リオちゃん」と
お名前呼びをして、
リオちゃんの片手をあげながら、
代弁して「はーい」と私が言ったり、
私が絵本を指さして
「これはりんご?」なんて問いかけて、
リオちゃんは
「ううん」「うん」と
頷いたり首を振ったり…など、
少しずつコミュニケーションを
とっていきました。
「おはよう」
「さようなら」
もリオちゃんの目を見て
笑顔で私から言います。
リオちゃんが
反応しても反応してくれなくても、
どちらでも構わなくて、
ただ私からのコミュニケーションを
はかりつづけました。

そして
ある時の2人の時間

「リオちゃん」とお名前呼びをすると
「…はい」
とのお返事が!!!

かなりかなーーり小さな声でしたが
聞き逃したりなんてしません!
嬉しすぎて驚きすぎて
リオちゃんをぎゅーっとしながら
「言えたね!」と、私の喜びを伝えました。

リオちゃんも笑顔です。

その出来事を担任の先生に伝え、
保護者にも伝え、
みんなで喜びあいました。

#少しずつ笑顔と言葉が出始める

それからリオちゃんは
少しずつ笑顔が増え、
お迎えの時は
「さようなら」は言えなくても、
私たちを目の前にして
笑顔を見せてくれるようになりました。
言葉も、
ほんの少しずつ保育園で出始めました。
みんなと一緒の朝の会のお名前呼びでは
小さく「はい」と言えるようになったり
お散歩できれいなお花を見つけたら
「きれい」と言ったり
毎日リオちゃんの声が
聞けるわけではないですが、
ほんとに少しずつ言葉が出てきたんです。

保育者とお友達が
スキンシップを取りながら遊んでいると、
リオちゃんも近寄ってきます。
「いいな」というオーラを出しながら、
お友達と保育者が楽しんでいる様子を
ニコニコ見ています。
それに気づいた保育者が、
リオちゃんにも声を掛けて輪の中に入れると、
はしゃいで楽しめるようにもなりました。
お家のように話すまで、
あともう少し!といったところです。

# 2回目の保育参観での発表

年間を通して
保護者参加型の行事はいくつかあります。
運動会やクリスマス会…
リオちゃんの声は
聞くことができませんでした。

そして、

その年の最後の行事でもある
2回目の保育参観の日がきました。
リオちゃんは小さな小さな声でしたが、
しっかりと発表出来ました!!!

その時のママの反応は
「声が小さすぎて
何言ってるのか
わからなかったですよねーー。笑」と、
これも笑い話に。

でも、内心とっても嬉しかったはずです。
それからは、
次第に言葉はどんどん増えました。
「おはようございます」も
「さようなら」も
言えるようになりました。
お友達と言葉のやりとりを
楽しむようにもなりました。

リオちゃんが、
お家のようにお話ししたり
笑顔を見せてくれるようになるまで
1年ほどかかったのでは無いでしょうか。
きっと、頑固ちゃんなのでしょう!!笑

# 進級してからのリオちゃん

2歳児クラスに進級した
リオちゃんは
毎日とーーーっても楽しそうでした。

お友達を誘ったり、誘われたり
お友達に注意したり
お友達に怒ったり。
私の名前を呼びながら
笑顔で抱きついてくれたり
表情豊かに過ごしています。

ただ、もう一つ心配なこともありました。
リオちゃんはまだ

保育園で泣いたことがありませんでした。

泣くことがいいというわけでは
ありませんが、
小さい子は
言葉に出来ない気持ちや、
コントロール出来ない気持ちを
泣いて表現することは誰にでもあります。

なのに、
リオちゃんの涙は
本当に一度も見たことがありません。

そんな時、
お給食の時間に
リオちゃんが泣き始めました。
「ごちそうさま」
になっても
リオちゃんの目の前には
お給食がたくさん残っていました。
それをたまたまお部屋に遊びにきた
リオちゃんよりも小さいお友達に
見られてしまったのです。
リオちゃんは給食に時間がかかります。

もちろん完食が目標ではありませんが、
リオちゃんは
食べるのが嫌なわけではありません。
途中で眠くなることもありません。

ただただ、
飲み込むまでに時間がかかるのです。
赤ちゃん達に見られたリオちゃんは、
お姉さんの意識がありました。

だから、
恥ずかしさや
悔しさや
悲しさが

込み上げてきたのかもしれません。
泣いているリオちゃんを抱っこして
リオちゃんの気持ちを代弁しながら
リオちゃんの気持ちを受け止めて、
すぐに落ち着いて泣き止みました。

それが、
初めてのリオちゃんの涙です。

これもその日のうちに
お家の人と共有しました。
リオちゃんが泣くほどなんて、
どんな気持ちだったんだろうということ。
初めて保育園で泣いて、
感情が溢れ出すことが出来て、
またこれからリオちゃんが
心の面でどんどん成長していくこと。

お家に帰った後、
ナイーブになっていたりなど
気になることがあれば
園に知らせてほしいこと。

ママは
「おうちでは大きな声で
よく泣いて怒ってます」
とまだまだ保育園とお家では違うリオちゃん。
その日からも

ほとんど泣くことはありませんが、
お友達とのトラブルでは、
たまーに
泣いて怒ったりもしています。

#いろんなことを乗り越えた今

年少さんになるころには
お給食も時間内に
完食できるようになりました。
トイレトレーニングも
リオちゃんペースでゆっくりでしたが、
保育園ではずっとパンツで
生活できるようになりました。
喜怒哀楽も
思い切り見せてくれるようになりました。
お友達と大盛り上がりで
遊ぶようになりました。

なにより、

めちゃくちゃ
おしゃべりさんになりました!!

これぞ、
お家のリオちゃんなのでしょう。

でも、
やっぱり人見知りなリオちゃん。

カメラマンさんなどの撮影が入ると、
急に固まります。笑
で、カメラマンさんが離れると
「だって恥ずかしかったんだもーーん」
と笑顔でおしゃべりしています。

こんなこともお家の人と話しながら
昔を懐かしみながら
今のリオちゃんの成長を
改めて感じました。

そんなリオちゃんは、
塗り絵がめちゃくちゃ得意です。
じっくりと集中して
枠内をはみ出さないで丁寧に塗り、
塗ったところも
まばらじゃなくて
均等に色がついていて綺麗です。

1年前の心配が今となってはウソのようです。

あの心配や、
職員間でのミーティング、
リオちゃんへの配慮は
「なんか気になる」
という気持ちがなければありませんでした。


何もしなくても
いつかは話せるようになったのかもしれません。

でも、
向き合い続けてきた私たちは
リオちゃんや保護者と、
他の何にも変えられない
信頼関係で繋がっています。

子どもに対して「気になる」と思ったら、
そのままにしないこと。
まずは、誰かに相談すること。
これはとても大事なことだと思います

いかがでしたか?
リオちゃんが普段の自分のままリラックスして
保育園に登園できるようになるまでの
成長ストーリーでした。

今回のお話はこれでおしまいです。
また次のお話でお会いしましょう。

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