見出し画像

【子どもの主体性を考える】設定保育と自由保育。

こんにちは。
保育園の園長をしているSanaminaです。

今回は子どもの主体性についてに考えいきたいと思います。
その前にまず、
設定保育や自由保育、自由遊びについて知ることから始めましょう。


○設定保育


設定保育は、保育者が明確なねらいを持って、保育を行うことを言います。
子ども達の年齢に沿った成長目標や指導計画を設定し、それに基づいたカリキュラムに沿って日々の活動を行います。
リトミックや制作、お散歩など活動内容は様々です。
対象は、クラス全体のことが多いですが、数人、グループごと、数クラス合同など活動内容によって変わることもあります。
計画保育、一斉保育とも呼ばれています。
私の勤務する園は年齢ごとに豊富なカリキュラムが組まれています。
リトミック、制作、お散歩、集団遊び、自由遊びに加え、英語、体育、クッキング、学習などもあり設定保育といえます。
これら全て、年齢ごとの計画があり、それに沿って進めていきます。

設定保育は集団生活のルールを覚える基礎となります。
保育者が集団に向け話し、それを聞いて行動する。
そこにはお約束や決まり事も含まれます。

待つ時間

「待つ」という中には「順番を守る」なども含まれています。

聞く時間

「聞く」ということは「静かにすること」「話す人の方を向く」なども含まれますよね。
また、話を聞いていないと何をすれば良いのかわからなくなって結局自分が困ってしまいます。

始める時間

一斉にスタートするわけですから「自分がその流れについていく」という意識が生まれますね。

行動する時間

自分の行動によっては良くも悪くも周りに影響するということを覚えていきます。
集団生活を過ごしているのですから、集団の流れやルールを覚えることは大切です。


今が何をする時間かがしっかりと決まっているのが設定保育です。
座っていないといけない時間、決まった活動の時間、自由にしていい時間など区切りがはっきりとしており、メリハリを持って1日を過ごすことができます。
大人なら当たり前のことですが、子どもにとっては経験しないとわからないことです。
このように設定保育の中で、社会性を養っていきます。
設定保育は1日の流れが決まっているので、先生もその流れに沿って保育をしていきます。
みんな同じことに取り組むので、平等な保育を受けられます。
グループもだいたい決まっていることが多いです。クラスで何かをするときにも取り残されてしまう子は少ないです。
みんなで一斉に活動に取り組むので苦手なことにも取り組んでいきます。
苦手なことも先生に手伝ってもらったり友達の真似をしたりして続けていくうちに、できるようになります。
苦手を克服する経験は大切ですし貴重ですよね。
今後の成長にも繋がりますし、何よりできなかったことができるようになることは、子どもにとって大きな自信になります。


集団生活に必要な社会性が身に付くので就学するにあたっても、安心して馴染んでいけるのではないでしょうか。


○自由保育


では、設定保育の反対で使われる自由保育とはなんでしょう?

自由保育とは
保育内容は生活や遊びを通して決めていきます。

その日何をして過ごすのかは、先生と子どもが相談をしながら決めたりしながら、基本的には子どもを自由に遊ばせます。
自由に遊ばせているように見えますが、先生が様々なヒントを出したり選択肢を与えたりすることで、考える力や自主性が身につくともいわれています。

いくら自由と言ってもどこまでが自由にさせるのかなどは、しっかりと決めておかないと危険なことも多いです。
自由の限度やルールを教えることは必要です。

また、「子どもたちを好きに遊ばせるだけ」にならないようにすることも大事です。
基本的に好きな遊びをして過ごすので就学の際に、ギャップに困惑することも少なくありません。
また、自分の好きに過ごせるということは、必然的に苦手なことを避けてしまうことになります。
行動や興味など、とことん自分の好きを追求できることは良いですが、自分の好きなことだけに偏りがちになってしまう可能性も考えられます。

子どもが自分たちで遊びを考えたり、子ども同士でコミュニケーションをとったりすることが重要視される自由保育。
保育者は、環境作りや、上手く遊びに発展できるような援助をしながら見守ります。

自由保育は自分で遊ぶ人を決めることができるので、自分で友達を誘ったり、時には友達とぶつかったりしながら、人間関係も学べます。
中には自分から声を掛けられずに取り残されてしまう子もいますが、その場合は保育者が仲間に入り仲立ちをしながら解決に導きます。
全て子ども任せというわけではありません。

自由保育とはいいますが、時間やできることには限りはあります。
決められた時間や環境の中で、子どもと保育者が相談しながら遊びを発展させていきます。

○自由遊び


ここで、みなさんに伝えたいことが自由遊びと自由保育との違いです。
自由保育は保育法ですが、自由遊びは遊び方の一種となります。
私の勤務する園は
様々なカリキュラムに沿って保育を行うため、活動内容はほぼ決まっています。
そのため、子ども達は見通しを持って生活しています。
ただ、全て決められた活動をして決められたグループで決められた行動をするわけではありません。
その中に
「自由遊び」という活動もあります。
お散歩先で自由に遊ぶ時間。
好きな玩具で好きなお友達と自由に遊ぶ時間。
このような時間も設定保育に含まれています。

設定保育の中で過ごす子ども達は自由遊びの時間を楽しみにしている子は多いです。
「次は○○で遊びたい」
「次は○○ちゃん、一緒に遊ぼ!」
など、自由遊びを特別な時間とし、
期待を持ったり、ワクワクした気持ちを持っている姿を見ます。
設定保育では子ども達の社会性が身につく中で、人間関係の学びもたくさんあります。
でも、この「自由遊び」の時間はまた違う学びがあります。
私たちにとっても様々な気づきに繋がります。
友達との関わり方、表現方法、言葉の発達、興味関心、得意、想像力など、一人ひとりの個性がしっかりと見えてきます。

自由保育は基本的に自由遊びの時間が主になります。子ども達の自由な発想が継続して遊びに繋げられるのは良いですよね。
「今日はこれを作ったから、明日はこれを作ってみよう。」とか
「明日、この続きをやろう。」とか。
今の自分の遊びを次の日、そのまた次の日、そのまた次の日と継続して考えることが出来ます。

○子どもの主体性とは


それでは、本題の子どもの主体性について考えていきましょう。
これは私の主観も入っていると思うので
こんな考えもあるんだという感じで読んでいただき、みなさんの「子ども主体性」について考えるきっかけになればと思います。

主体性とは
「自分で決められることは自分で決め、行動すること」とあります。

つまり、子どもが自分で考えて何をするかを決め、意欲的に取り組むことです。
よく似た言葉で使われるのが「自主性」ですが、
自主性は決められたことを進んで行うことを言います。

主体性(自己表現、積極的な行動、自己決定力)を育む教育は、
持続可能な社会の担い手を育てる観点から、
また個々のwell-beingを向上させ、
より豊かに生きる力を与えるためにも重要だと言われています。

*well-beingとは
個人の権利や自己表現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態を意味する概念であると厚生労働省は定義しています。

これからの未来を担う子ども達には
「主体性」を身につけることが重要だということです。
社会に出た時に
自ら課題を発見し、行動し、よりよく問題を解決できる資質や能力を求められているのです。

日本の子ども達や若者は
「自分の考えをはっきりと相手に伝える」
「上手くいくかわからないことにも積極的に取り組む」
「自分の決断、意志に誇りを持っている」
の項目において先進国と比べても低いのが現状です。

主体性を育むうえで重要視されているのが
「アクティブラーニング」です。
アクティブラーニングとは
教師による一方的な講義形式の授業ではなく、グループディスカッションやディベートなどを通じて能動的に学び、社会的能力や教養を含めた汎用的能力の育成を図る教育手法です。

*汎用的能力=どの分野においても自立するために必要な基礎の力であり、生涯にわたって必要な力(コミュニケーション能力・熱意、意欲・行動力、実行力など)

主体性とは「自分で考え、自分で決めて行動する」ことでしたね。
では「主体性がある子ども」
とはどのような姿ですか??

・自分から「これで遊びたい!!」と自分で選び、積極的に行動する子
・友達の様子見て、それに加わる子
・自分は中に入らずにその様子を見ている子

実はこれら全ての行動が主体的とも言えるんです。
結局全ては自分の意思で行動を選んでいるからです。
積極的に率先することが主体的というわけではないのです。

大人の勝手な物差しで「この子は主体性がない」と決めつけず、その子の意思をしっかりと尊重していきたいですね。

これらを知った上で
主体性を育む保育てどのような保育なのでしょうか?

自由保育ですか?
設定保育ですか?

結局どちらも主体性を育むことができるんです。

主体性と自由は違います。
子ども達が主体的に生活するためには
まずは必要最低限の
ルールや約束、決まり、人との関わり方を守れるようになっていなければなりません。
でないと、ただの自由。わがまま。自分勝手。に過ぎず、人を困らせる行動が多くなってしまうでしょう。
大人なら限度がわかるかもしれません。
でも、子どもはわからないんです。

そのルールが身についた上で
主体性が育めるような働きかけをしていくことが私たちの役目だと思っています。
何もかも自由でのびのびすることが全てではないということです。

全ては子ども達の未来を見て保育をしています。
大人になった時に
社会に出た時に
しっかりと「生きる力」を持っていて欲しい。
自分が主役の人生を歩んでほしい。

設定保育の中の自由遊びのススメとは
これらの思いが含まれています。


補足:乳児の自由遊びと設定遊び

設定保育の保育園でも乳児クラスは自由遊びがほとんどでしょう。
つまり、さほど自由保育と変わりありません。
赤ちゃん達は、自らの思うままに行動して楽しむことで、健やかに成長していきます。
もちろん、そんな赤ちゃん達の中でも社会はあり、人間関係を学んでいます。
そして、少しずつ成長し遊び方を覚えてくると、徐々に設定遊びを取り入れます。1歳児クラスの後半にもなれば、おままごとやお買い物ごっこなども楽しめるようになったりします。
ただ自由に遊ぶ時間から、成長に応じて遊び方を知らせていき、設定保育への導入をしていきます。
「今日はみんなでこの遊びをしましょう。」と遊びを設定する日を少しずつ設けていきます。

それを楽しませるのは保育者の役割。
遊び方を知らせるのも保育者の役割。

こうして乳児は、自由遊びから設定遊びを学び、「今は〇〇をする時間」という区切りが身についていきます。


ここまで読んで、設定保育と自由保育の良いところや気になるところが、どちらにもあったと思います。
どんなお子様に育ってほしいのかが保育園を選ぶポイントにもなりますね。
私のブログが少しでも参考になれば嬉しいです。


今日のお話はこれでおしまいです。
また、次のお話でお会いしましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?