九条 モモ

赤が好きな詩人。 そんなにいつまでも ひろがってゆくイマージュがある。 ー 「愛」谷…

九条 モモ

赤が好きな詩人。 そんなにいつまでも ひろがってゆくイマージュがある。 ー 「愛」谷川俊太郎

最近の記事

きらり

What a spectacular. 四ツ葉にブラックホール 裂けて、咲いたダリアの花 が、ガガガガガッと割れて、 モーゼの海 に、そそり立つ三島が燃やした金閣寺 さんごじゅうごで モナリザとにらめっこしましょ 笑ったら、ダメよ あっち向いて、来い 奇異な旅人よ、サルーテ! 紅いシャクナゲ揺れ 硝子窓に、サイレン赤く鳴り 蒼いヒマワリ咲き 硝子窓に、体液青く飛ぶ 月の火山が爆発した日に あの星人の哀しみが見えた 気がしたあの星人を 人は、恋と呼んだけど 地球人以

    • 最後の恋

      東京タワーを見上げていた。 酸いも甘いも何度も噛んで、 あなたと出逢った。 「あなたは、初恋の人に似ていただけ」 突き放すわたしを、 「恋は、落ちたそのときが、いつも初恋」 と、あなたは追いかけてきた。 病院の待合室で、テレビが教えてくれた、 ありふれた恋の理論。 「こんな理論さえ当てはまらないわたしたちに、」 「明るい未来が待っているとは、思えない?」 と、あなたは笑ってくれた。 「未来は、」 「すべて明るいもの、なんでしょ」 と、わたしは笑っていた。 見上げた

      • 理由

        「雪が好きだ」とあなたが言って、 名前を呼ばれたような気持ちになった。 「どうしたの?  あんまり唐突に言うから、  わたしの名前を呼んだのかと思った」 と笑ったら、 背中越しのあなたの気配が一歩近づいた。 なのに、「ん?」としか返事をしなかったから、少しむっとして振り返ると、 あなたは、オルゴール店内の背の高いクリスマスツリーを見上げていた。 「夏のほうが好きだったんだ」と言ったあなたは、グレーのジャケットに、白いタートルネックを着ていた。 「なんとなく」と答えるの

        • 哀れなるものたち【鑑賞記録7】

          ベラ・バクスター「poor things. lol 」 エンドロールの最後に、 彼女は、そうジョークを言って、笑った。

          ウォンカとチョコレート工場のはじまり【鑑賞記録6】

          夢を見ることは、時に、 人生を残酷に映すこともあるだろう。 それでも、君は、夢を見る。 なぜだろう。 夢は、最後のその時も、 きっと、夢見る君のそばにいる。 さあ、醒めない夢を見よう。 夢は、君の人生を、 チョコレートのように甘くする。

          ウォンカとチョコレート工場のはじまり【鑑賞記録6】

          気持ち

          背伸びして、あなたのロングコートの 1番上のボタンをとめる 唇を躱すより あなたを傷つける方法を知りたくて 合いそうになる目をそらす あなたを送り出した後 リビングに戻ると カーテンが風に揺れていることが いつも、気になる あなたはこの部屋にいない、と 風に教えられているような気持ちに なるんだろう あなたがくれる沢山の幸せや愛よりも たった一言が許せない、わたし クリスマスの光に彩られた街中で 歩くのが遅いわたしを 振り返ってくれるあなたからも 目をそらした あ

          冗談

          「海だなぁと思って」 港町のテラスで、 君は当たり前のことを言ってみせる 晴れた日には、いつもわざと、 クラウディー・アップルを頼んでみせる 優しく海が薫る店内に夕陽が差込み始める頃、 グラスにジュースを少し残し、 君が言い始める冗談に、 わたしは渾身の防衛戦 「アップル・ジュースが、  夕陽より紅くなればね」 なんて、言ってみせた 「雪は、冬の花だよね」 と当たり前のことを言ってしまったわたしに、 「じゃあ、花火は、夏の夜空の雪だね」 と返す君の横顔は得意

          窓ガラス【エッセイ1】

          包摂性とは、外れることを、語れるようになること、だと思う。その先に、お互いを外れていると思わないようになること、それが多様性なのではないだろうか。 外れていることと、窓ガラスを割ることは、違う。しかし、この国では、外れていることと、窓ガラスを割ることが、まだまだ同義で語られてしまい、取り締まりと気づかずに取り締まりに近いことが行われている。 外れていることを、個性と、なぜ捉えられないのか。まだまだそういう社会だから、外れていることが、苦しくなる。 そもそも、なぜ「外れる

          窓ガラス【エッセイ1】

          かなしみ

          悲しかった恋が、 東京タワーの優しい灯りに消えてゆく 「あと何度、  愛してると、  伝えればいいだろう」 と哀しむわたしに、 「変えられるものが、  運命だとは、思わない」 と哀れを溶かしてくれたあなた 「忘れていいんだ」 と言うあなたに、 「忘れていいのかな」 しか、わたしは返事することできなかったのに、 あなたは、 「嘘でいいんだよ、好き、なんて」 とは決して言わなかった 秋の東京タワーが見える公園で、 あなたと手を繋いだら、 雪の結晶が、幸せに

          喫茶店で交換したコーヒーカップ 23年、持ってたの もうあの頃のように 誰かを傷つけることはできなくなったし 100円にこだわっていた君を もう、「君」と呼べる年でもない 20年前に気づくべきだった 電車での会話が相性のすべてだってこと 「君」は、走り去る電車の中から 手を振ることしかしてくれなかったのに そんなが「君」が、ただ、好きだった 増えていくお土産の写真 3日に1回になったSNS すべて気づいてた どちらも30代になって 「黒い線の上に、赤い線を引くことが、

          渋谷交差点

          池の水面が風にゆれて 薄暮に手招かれ 10月7日の名もなき渋谷の 小さなこの公園だけに 恋人達の秋がやって来る 子どもとすれ違えば わたしの心のどこかが痛み 最初から踵が磨り減った 深紅のハイヒールを 渋谷のデパートに探しに行く 老夫人とすれ違っても わたしの心のどこかは痛み 最初から踵が磨り減った 深紅のハイヒールを 渋谷の同じデパートに探しに行く 手慣れたフォンコール お手のもののアンコール 一人で注ぐアルコール ラウンジから外を眺めれば 窓に映るエスカレーターし

          渋谷交差点

          こんにちは、母さん【鑑賞記録5】

          「君と僕は、違う」 と、立場や世代に社会的に捉われて、 自分と相手との間に線を引く主人公に、 「人は悩んで、恋をするものよ」 と、教える朗らかな母さんは、 どこまでも粋に生きている。 母さんに導かれて、 主人公が辿り着く答えに、 わたしたちも気づかされる。 「人は、そんなに変わらない」と。

          こんにちは、母さん【鑑賞記録5】

          この宇宙の秘密

          ー Universe, Universe ー それは、この宇宙の秘密。 この宇宙で、 1つの星が死ぬとき、 星は、一篇の詩を歌う。 ー Universe, Universe ー それは、この宇宙が運命(さだ)めた秘密。 この宇宙は、数多の詩を編む、 大きな大きな、1冊の詩集。 ほら、今日もまた、星が死ぬ。 そして、最後に、星は歌う。 あの星は、生きた。 一篇の詩を歌うため。 この大きな大きな宇宙のなかで。 ー Universe, Universe ー 知

          この宇宙の秘密

          君たちはどう生きるか【鑑賞記録4】

          宮崎駿の精神世界。 吉野源三郎『君たちはどう生きるか』 にインスピレーションを受けた、 宮崎駿の脳が考えた、「生きる」、 ということ。 この地獄のような世界で、 美しく生きるとは、 どういうことか。 宮崎駿が描く、 生きるという冒険についての、 哲学と夢。 男と女が、本当に愛し合うとき、 最後は、 その父性と母性で惹かれ合う。 それは、ともに、 守り、守られる、ということ。 それは、ともに、 互いを守りたい、と願うこと。 夢を知り、勇気を胸に闘い、愛を

          君たちはどう生きるか【鑑賞記録4】

          受胎

          わたしの身体をつくるものすべては、この宇宙のあぶれもの すべて、はじめに、光になれなかったもの わたしたちが生きることが、光を追うことであるワケ 生命とは、はじめから、死を目掛けて走っているもの それでも、わたしは分裂し、増殖する 死について口にしたところで、わたしは分裂して、増殖している 生きたいと思っているのは、 わたしなのか、遺伝子か この生じている意識は、いったい誰のものなのか 我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか ーポール・ゴーギャン

          クラウン・クイーン

          破壊のレースを纏って 現れた クラウン・クイーン 「赤と青が混ざると、白だよ」 と、奴は、笑う 138億年に一度の 神々の大パレードに、姿を隠し この星に、舞い降りてきた 奴の破壊行為が先か 我々のサイレンが先か 鳴らせ、鳴らせ 世界中のサイレンを 鳴らすぞ、鳴らすぞ 奴は、狂ったように、鐘の音を いずれにせよ この星の滅びの合図 今夜も 奴は この星の耳目を独り占めに 華麗なダンスで 魅せて やりたい放題 奴の微笑で 女たちの人格は分解していく 男たちの遺伝

          クラウン・クイーン