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最後の恋

東京タワーを見上げていた。

酸いも甘いも何度も噛んで、
あなたと出逢った。


「あなたは、初恋の人に似ていただけ」
突き放すわたしを、
「恋は、落ちたそのときが、いつも初恋」
と、あなたは追いかけてきた。


病院の待合室で、テレビが教えてくれた、
ありふれた恋の理論。

「こんな理論さえ当てはまらないわたしたちに、」
「明るい未来が待っているとは、思えない?」
と、あなたは笑ってくれた。

「未来は、」
「すべて明るいもの、なんでしょ」
と、わたしは笑っていた。

見上げた場所に、病院の天井はなかった。


「運命って、何だと思う?」


お互いのなかに消えない何かを抱えて、
わたしたちは、
最後に、どんな恋をしてゆくだろう。


あなたの肩の上から見た東京の空に、
黄昏が沈んでいく。

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