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たべもの業は「趣味の延長」ではほとんど成功しない=飲食業の困った!を解決相談所大分

 先日あった事例ですが、
「郷土料理を出す小さなお店」を出したいというご相談がありました。
発端は、旅行先で訪問した郷土色いっぱいのお店が気に入ったからです。
風光明媚なロケーション。手作り感満載のおいしそうなひなびた料理。
優しい心を込めたおもてなし。

そういうお店を自分も持ちたいということで、小さな空き家を借りて、
開業したいとのこと。

<その方の想い>

週に3~4日間だけ営業したい。
昼3時間、夕方3時間だけ営業したい。
●メニューは、「自分が食べてもらいたい料理」を10種類くらい
 レシピにまとめていました。

その方から学んだことは以下のことです。

🍓1:いつまでの期間経営するか決めていない

 ほぼ中年の方と思う年齢ですが、面談時は、開業準備に入って数か月の
ご様子であり、目先の「開業する」ことだけが喜びでがんばっていると
見受けられました。

「どういうことがきっかけで開業をしようと思われましたか?」
「いつまで(何年先まで)営業するお考えですか?」

この2つの質問をしました。

いつまで・・・とお聞きしたことには、理由があります。

①初期投資額を回収する場合は、一応の年数設定が必要になる
 (ローカル立地なので、例えば5年間目安とか)

②キッチンを新設するので機材をどのように選ぶかが課題になります
 (出したい料理が作る機材しか図面にありませんでした)
 例えば、1年~3年以内にメニューの広がりが想定されれば、事前に
 機材を入れておくか、機材スペースを確保しておかないと、
 キッチン全体の組み換えが必要になり、追加投資が必要になります。

③機材の耐用年数を見て、中古機材の比率を高くできるかどうかが決まる
 営業年数が5年を超えれば、基幹機材は新品を多くする必要があり、
 数年間の目安であれば、中古機材を半分程度とみても差し支えない。

以上の理由です。


🍓2:どんな料理を1年後作りたいと思うか
    まったく見えていない

 開業当初は、「売りたい料理」を作って売る。
そのうち、作りたい料理が、そこそこしか売れなくなったら、
反対に、
消費者から買ってもらえる料理」をつくらざるを得ない。

売上づくりの点からしても、売上の立つ料理を売るようになる。

相談者にとって、自己資本の投資であっても、
やがては、「1年頑張っても赤字」「1年頑張っても儲けはこれだけ」だと
事業を始めた喜びも出てきません。

月間で出てゆく経費を利益として手に入れる「売上高」を持つ
●自分の労働価値を「人件費」で確保できる売上目標を持つ
●売上目標を実現できる「営業日数と営業時間」を確保する

私は、何もわからずに夢の投資をして、後で出店しなかったら良かった
と後悔されない為に、先に開業するなら事業」として取り組みましょうと
暗に伝えました。


🍓3:どれだけの投資が必要か見えていない

 ざっと見ても、
●店舗の内装費
●調理機材費
●調理器具類、食器類、備品類
●エアコン
●包装材など
●看板経費
●駐車場の確保など

少なくとも最低でも200万円~300万円はかかってしまいます。
さらに、業務用仕様で機器を計算すると、500万円以上かかります。


🍓4:趣味から生まれるお店なので、
 経費がかかるため売上ノルマがあると思って
 いない

  店舗を借りずに、持家を改装した場合はどうですか?と聞かれましたが、「同じように経費はちゃんとかかります」と回答。
家賃が不要という以外は、全く同じように経費がかかります。

●食材購入費
●人件費
●光熱費
●販促費
●配送費
●その他諸経費
●銀行返済金、リース契約料など

経費が膨らむ分だけ、採算ラインの売上高は上がります。
まして、年商が少なくても、インボイス制度に加われば、
もっと売上の加算が必要です。


🍓5:飲食店で料理の作り方を学べば、開業
   できると思っている

 飲食店を開業して失敗する経営者の方には致命傷が4つ。

料理の儲かる仕組みを知らない
●飲食店の経営のコツを知らない
●従業員の雇用のコツを知らない
●金融機関との付き合い方のコツを知らない

いずれも、どこかでつまづいて、それが後の致命傷になっている
ケース多いのです。


🍓6:原価計算の意味を知らない

 料理の原価計算をすると、「売価-原価=粗利益」という小学生でもわかる仕組みが見えてきます。

初めて開業する人は、関わったことがないため、以下のことを知りません。
どの料理はどれくらいの利益率が適切か」はまったく知らないのです。

飲食業の経営に数年以上関わった人は、この感覚を身につけています。

売価、原価、原価率、利益率を総合的に勘案しながら、お店に必要な
利益の確保を目指します。


🍓7:歩留まり率や重量変化率も知らない

 料理ひとつ見ても、魚の歩留まり率と重量変化率、野菜の歩留まり率と重量変化率を知らなければ、適切な売価はつけられません。

まして、弁当や総菜など、出来上がりの分量で商品価値を作り上げる商品は、これを無視すると、本当の利益率を見失います。

デパ地下などの「量り売りコーナー」はこの歩留まり率、重量変化率、
賞味期限などの計算と管理が重要です。
たべもの業は、低音調理だけでなく、本当に科学の世界です。


🍓8:開業は「事業規模」でないと成功しない

 1人飲食店でも、人件費を「喜びの価値」として毎月受け取るためには、
大型飲食店と同じ経営の仕組みが必要です。

開業してから立ち往生するよりも、開業する前に知っていて、

本当に、開業へ1歩前に踏み出す決心があるかどうかを、
確かめてみる段階を踏む方が良いかと思います。

コロナ終息後は、開業が増えると思いますが、
半数は1年前後で消滅方向になります。

生き残りたい人は、
「学んで強くなる」しかありません。よろしくがんばりましょう!

(了)



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