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村上さんのいるところ

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人の心の動きは、制度や社会倫理と連動しないこともあります。

人の心の動きは、制度や社会倫理と連動しないこともあります。そしてそれは善とか悪とかの問題とはまたちょっと違ったものなんだと、僕は認識しています。

要するにそれだけのことなんです。
できれば危険なことはやらないに越したことはありません。
なるべく平和に暮らしてくださいね。

じぶんのことは好きですか?

あまり自分については考えないようにして生きています。なるべくほかのことについて考えるようにしています。ほかのことについてどう考えるかという、姿勢や考え方の中に「あなた」はいます。その関係性が大事なのであって、あなたが誰かというのは、じっさいにはそれほど大事なことではありません。そう考えていくと、少しらくになれるんじゃないかな。

なぜ今もドストエフスキーなのか?

僕はトルストイもツルゲーネフも好きで、よく読みました。
でも現代という時代から見ると、ドストエフスキーの小説が持つ「同時代性」は圧倒的に傑出しています。

現代の読者はドストエフスキーの小説を、「有名な古典小説だから読む」というよりは、むしろ今ここにある問題へのアクチュアルな回答(あるいは回答の示唆)を求めて読んでいるような気がします。

フランツ・カフカの場合もそれは同じことです。彼らの抱えてい

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もっと一人になりたいよな

作家というのはおっしゃるとおり、基本的には一人で黙々と仕事をします。誰も手伝ってはくれません。
編集者と会うのも、一ヶ月に数回程度のものです。でもだからといって、とくに孤独を感じるようなことはありません。

むしろ「もっと一人になりたいよな」と思うくらいです。ほんとに。

フィジカルな好奇心、少しでも意識を広げていきたいという思い。

本当に正直な気持ちを申し上げまして、僕は「女性にもてたい」と思ったことは一度もありません。僕が好意を持つ特定の女性にできれば好かれたいものだ、と思っていただけです。その二つの気持ちのあいだにはやはり差があります。どれだけ女性にもてたって、あなたが好意を持つ女性に好かれなければ、何の意味もありません。そうですよね? 不特定多数の女性に広くもてたって、たぶん良いことなんてとくにありません。そういう経験

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意味という座標軸でとらえてしまうと、小説は味気ないつまらないものになってしまいます。

いつも言っていることなんですが、小説には意味なんてそんなにありません。というか、意味という座標軸でとらえることができないからこそ、小説が有効に機能するのです。

意味という座標軸でとらえてしまうと、小説は味気ないつまらないものになってしまいます。
物語の足がとまってしまいます。「意味はようわからんけど、なんかおもろいし、読んだあと腹にたまるんや」(なぜか関西弁になる)というのが僕の考える小説の理想

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得るものを少しでも多くして

そうか、三十代後半で「年をとったな」と思うんだ。僕はその年代は生きることに忙しくて、そんなことを考える暇もありませんでした。

自分の老化にがっかりすることはあるか? 実感することはあるけど、とくにがっかりはしないですね。
年をとることには、それなりにメリットもあるからです。失うものもあれば、得るものもあります。

失うものより得るものを少しでも多くしなくちゃ、というのが僕の目下の課題です。

大人というのはあくまで容れ物です。

失礼な言い方になりますが、「大人というものは素晴らしいものだ」という考えそのものがちょっと間違っているような気がします。

大人というのはあくまで容れ物です。
そこに何を入れるかというのは、あなたの責任です。

達成なんてそんなに簡単にはできません。ちょっとずつそのへんのものを容れ物に入れていくことからすべては始まります。

28歳なんてだいたいまだ大人じゃないですよ。始まったばかりなんだ

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全員に気に入られなくてもかまわない

お客の全員に気に入られなくてもかまわない、というのが僕の哲学でした。
店に来た十人のうち三人が気に入ってくれればいい。そしてそのうちの一人が「また来よう」と思ってくれればいい。それで店って成り立つんです。経験的に言って。

それって小説も同じことなんです。十人のうち三人が気に入ってくれればいい。そのうちの一人がまた読もうと思ってくれればいい。僕は基本的にそう考えています。そう考えると、気持ちが楽に

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ほんとにきれいな女性

「40代できれいな女性はほんとにきれいな女性であり、そこらへんの若い女の子なんてとてもかなわないんだ」
そんなこと言いましたっけね。覚えていません。
「やれなくてもいいから一緒にいたい女性」もいいですね。
僕もだんだん成熟してきたのかな。

女のいない男たち

一度孤独を知った人間は、死ぬまで孤独の影(可能性)を背負って生きることになります。
それがあの作品集のひとつのテーマです(すべてではありませんが)。

がんばって背負って生きてください。

彼女、できるといいですね。

ゆがまないように、できるだけいろんなものをまっすぐにする

このサイトには「心を病んでいる」方からたくさんのメールが寄せられています。僕の本を読んでいる人に、とくにそういう方が多いのでしょうか? それとも全体的に世の中にはそういう方が増えているのでしょうか? わかりません。でもひょっとしたら前者かもしれませんね。
河合隼雄先生と昔よく話をしたんですが、僕の小説にはそういう傾向があるというようなことを、先生もおっしゃっていました。

考えてみたら僕自身、

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自分の人生というのは実験室みたいなものだと考えること

自分の人生というのは実験室みたいなものだと考えることです。
「よし、自分を実験台にしていろんなことを試してみようじゃないか」と。僕はいつもそう考えるようにしています。

たとえば、30年間毎日せっせと走り続けたら、僕はいったいどうなるんだろう? そう考えて実際にやってみました。実際にやってみるとすごく面白いですよ。いろんな発見があります。「なるほどね、こういうことだったのか」と。

時間はかかりま

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60年代的命題の光芒?

「白か黒か?」みたいな命題はいかにもかっこいいですが(1960年代的?)、それはいろんな状況を単純化し過ぎます。
そういうところからばかりものを見ていると、現実がバランスを失い、どんどん一方に偏っていきます。

たとえば「だから作家は机を離れて、アフリカに行って難民救助にあたるべきだ」みたいなことになりかねません。それはひとつの考え方ではあるけど、すべてではありませんよね。

一歩引いて静かにもの

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