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インフルエンザの贈り物

久しぶりにインフルエンザにかかった。予想通りの高熱と体調不良で、初日の記憶はあまりない。そして、私は熱が40度近くまで上がると悪夢を見る。いつも決まって同じ夢。現実と非現実の境がなくなる不思議な夢だ。

内容は細かく覚えていないが、重力が螺旋状にどんどん変化しながらシーンとシーンが重なり合っては消え、再び現れては消えて、それらは次第に増えていきニューラルネットワークのような宇宙として広がっていく。気の遠くなる広大さに恐ろしさを覚える夢だ。

今これを書きながらふと思い出したが、以前ネパールで高山病にかかった時も似たような夢をみた。あの時は部屋に飾ってあった曼荼羅が螺旋状に回転しながら少しづつ模様を変え頭の中を自由に動き回っていた。

そして、こういう類の体調不良に陥って悪夢を見た後は頭の中が静かになる。体調が優れているときには、これからやりたい事や、旅の準備のこと、仕事のことももちろん、色々なことを考えて、頭の中は意外と忙しい。でもあまりに体調が悪くなると脳にエネルギーが通わなくなるのか、雑念が消える。布団の中で丸まっていると「もうどうでもいいや〜」という気分になってきて、これが不思議と心地よい。もちろん体調はすこぶる悪いので不快ではある。ただ思考がストップするというのが別の次元で穏やかなのだ。

インフルエンザは初日に爆発的に発熱し、その後は面倒臭そうにズルズルと熱が下がっていく。その間も無思考的静穏は続いていく。解熱がはじまると体が動くようになるので、ネットニュースを見たり、興味のある本を読んだりする。すると今まで見えてこなかった情報の奥に横たわる物事の本質が見える。そしてそれらは見ようと力まずに見えてくるので、頑張る必要もない。頑張らないということは、力みが無いので持久的に他の情報もすらすら見れてとても面白い。

インフルエンザも風邪も好きではないが、この静穏状態は捨てがたい。物事には陰陽があるというがまさに納得。体が陰に苦しむとき脳は陽を見出すのかもしれない。

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