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ノンカーイのお金配りおじさん🇹🇭

カンボジアとラオスでの旅を終えた私たちが次に訪れたのはタイ。メコン川を渡り陸路での越境となった。東南アジアにはよく行くが、この広大な地を支えた重要な自然環境であるメコン川をしっかり見たことが無かったので、メコン川沿いでありラオスとの国境の町でもあるノンカーイにしばらく滞在してみようと考えた。

そのメコン川沿いの町ノンカーイで、少し不思議な体験をした。

初日、夕食を探すためメコン川沿いを歩いているとバイクに乗ったおじさんが近付いてきて日本語で話しかけられた。おじさんは神奈川県に住んでいたことがあるそうで日本が大好きだという。というわけで君たちにご馳走したいと言い始めた。どういうわけだかわからない。そういう、どういうわけだか分からないことはだいたい詐欺で、無邪気に乗っかるとかなり危険だ。

しかし、どんなに断ってもおじさんは強引に屋台で焼き鳥とおにぎりを買ってしまい、そしてなぜか100バーツ札を私たちにそれぞれ1枚づつ渡してきた。私も数々の国を旅してきたが、金をくれようとするおじさんに出会ったのは初めてだ。私も立派なおじさんなのにだ。

そうしておじさんは鬼気迫る勢いで、焼き鳥とおにぎりとお金を私たちの手に握らせる。「そんなにお金をくれると言うなら寺に寄進する」と近くの寺に行こうとすると、それも遮って私たちがゲストハウスに戻るのを視界から消えるまで見守った。

そして、翌日もまたメコン川沿いでおじさんに出会い、今度は地域の特産物を買ってもらった。私はなんだか恐ろしくなり翌日にノンカーイを離れた。

後日談を先に書くと、タイでの旅を終えて、最後にラオスに戻る時にも町ですれ違った。その時わりとはっきりと私と目が合ったのだが、おじさんは気付かなかったふりをして人混みに消えていった。このことはパートナーを怖がらせたくないのでまだ話していない。

ただの日本好きのタイ人のおじさんがここまでする理由は一体なんだったのか最後まで分からなかった。神の啓示でもあったのだろうか。いずれにしてもちょっと不思議な体験だった。私としては「ノンカーイのお金配りおじさん」は世界的にもレアケースとして、後世に語り継いでいきたい。

基本的にはこういう行為をする人は危険です。でも、理由は分からないけれども、おじさんが突如としておじさんにお金を配ってしまうことが世界のどこかでは起きるのです。それだけ世界は私たちの想像を大きく超えたものであるのでしょう。固定概念の崩壊は人間の一生の間でなんども、死ぬ直前まで続く性質をもった一つの概念です。それを忘れないように。というのが、私が後世に語り継ぎたい最も重要なメッセージの1つです。


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