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最適解につながるロープワーク思考法

今回はクライミングのロープワークにおける思考法についてお話しします。

結論から言うと「何をすべきではないか」を常に考えることです。
クライングジムでマットの敷かれていない10mの壁をロープ無しで登るのは、すべきではない事です。ではどうすれば良いのか。この時に考えるのは2つ。マットを敷けば良いのか?それともロープを使えば良いのか?クライマーであれば「ロープを使うのが当たり前」となりますが、未経験者であればマットを敷くことを考える人も居るかもしれません。「そんなわけないだろう」という声が聞こえてきそうですが、山岳事故などはこういった「そんなわけないだろう」的な事故が多いのも事実です。

それでは詳しく解説していきます。

ビレイをする時に皆さんはどこに注意をしますか?
正しくセットされているか?ビレイ中のたるみは適切か?ビレイの位置はどうか?などに注意を向けると思います。

ここで最後の「ビレイの位置はどうか?」について2通りの解説をします。

1、ビレイヤーは壁から離れてはいけない。

2、ビレイヤーは1本目の中間支点からロープ角度30度圏内に留まる。

1の解説は馴染みがあっても2の解説は「??」となる方が多いと思います。1の解説では「何をすべきか?」を説いています。ビレイヤーは絶対的に壁から離れないことを求められるので、ここに正直に従えば相対的なリスク、例えば落石の危険がある岩場や核心が下にあるルートではビレイヤーを危険な領域に誘いかねません。またトップロープ時にはかなり首に負担をかけることでしょう。

2の解説は重力の方向に対してビレイヤーは30度圏内に留まればどこにいても良いことになります。落石の危険がある場合は30度の円錐の外側に、核心が下にある場合はビレイヤーのフォールラインを外した1番外側に、トップロープでは壁から大きく離れても安全となります。

「何をすべきか」という思考の解は基本的に1つです。しかし「何をすべきではないか」という思考はすべきでない事以外は自由ということになるので、解の幅が広がり相対的なリスクに対して最適解を求めやすくなるのです。

私がクライミングを始めた20年ほど前、世の中にはそれほど多くの技術書は出回っていませんでした。インターネットも無いので今ほど簡単に情報を入手することもできず、往復2〜3時間かけて山道具の店に行き書籍を購入するか、先輩から学ぶしかありません。当時私がやりたかったクライミングはマルチピッチクライミングやアルパインクライミング。多くのロープワーク技術が必要となります。そこで何冊が技術書を購入し、クライミングジムに通い、先輩方に指導を仰ぎました。それから2年ほどで業界に入り今に至ります。

それから3年後あたりからアメリカに通うようになり現地のクライマーと一緒に登り、現地で技術書を何冊か買いました。辞書を片手に何とか翻訳してそれなりに理解できるようになって衝撃を受けたとともに、今まで感じていた違和感がすっきりと腑に落ちました。

20年前、私が入手した日本の技術書には「こうするのが正しい」「これが正解」という内容がほとんどでした。そのため、それ以外のシチュエーションに出くわした時に大変混乱します。一方でアメリカの技術書では、物理現象に基づいた法則が紹介されていて、今まで腑に落ちなかった技術のほとんどがアメリカの技術書でしっかりと理解できるようになりました。

それから私の講習会では「何をすべきではないか?」という思考をもとに受講生の皆さんと一緒に考えて学びを深めていくスタンスになりました。基本的な内容と共に、私が考えた独自の技術をお伝えしています。また、受講生の方がYouTubeで見た技術を一緒に試してみたり、昔から正しいとされていた技術を検証したり、日本的ではない思考と内容で展開しています。

以前、知り合いのガイドさんに「アメリカナイズドされ過ぎている」と揶揄されたこともありますが、それはある意味で客観的に見ても思考が私の思い描いた方向に着地した証拠でもあるので褒め言葉として解釈しています。

講習会は基本的にプライベートレッスンとなっていますので、皆さんのお好きな日時をご指定ください。その際に「こういうことを学びたい」という要望を添えていただけると嬉しいです。

ロープワークの一つ、支点構築の法則に関する記事はこちらにありますので興味のある方はご購読いただけると嬉しいです。


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