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アイスクリームケースの中に!

その日はタイミングがわるく店員が対応しているレジ以外にセルフレジにも列ができていた。
アイスクリームの冷凍ケース付近の列に並んでいた初老の方がさっと、自分のカゴに入れていた生鮮の刺身をアイスクリームのケースに移した。
そのまま列は進んでいき、後ろの人は本来冷凍ではないお刺身盛り合わせのパックのその後を見守っていた。
その初老の方の言い分もあるかもしれないし、
注意を受け入れるような人ではない可能性が高い。
後ろにいた私は「並んでカゴを見ていますから、お刺身売り場の元の場所に戻してきてはいかがですか」と言いたかったが、中身が少ないカゴをカートに乗せている様子をみても、脚などの身体のどこかが「不自由だ」と言われてしまうとそれは難しいと考えた。こういう場合、家族連れで来店してこどもが居たりしたら、活発で元気が有り余っていそうな子に元の売り場に戻してくるよう頼む家庭もあるだろう。しかし、刺身盛り合わせは丁重に扱う必要があるし、パシリのようなことは関連のない誰かに気軽には頼めない。責任は、商品を買わずに持ち運んだままの状態で放棄した人にあるだろう。一時的な保管場所として冷凍品のケースを選んだのだろうか…
元々の売り場ではない冷凍ケースに置かれてしまった生鮮食品を放っておくことは不本意だけれど、本人に指摘せずこっそり対処するのはなんだか嫌だとそのときの私は感じた。「お刺身を本来あった場所に戻せてホッとする」という安心感より「なんで私がこんなことを…」というモヤモヤのほうが勝る予感がしていたので悩んだ。お刺身を放棄する際、彼の振る舞いは戸惑いのない堂々とした一連の動きにも感じられたので、もしかしたら通りかかった店員さんに元に戻してもらうように頼むのかもしれないし、以前もこの人物は似たようなことをしたのかもしれない。
私は、その人物に対して自分の手足を動かそうという気にならなかったが、どうしてもお刺身盛り合わせのその後が気になり、タイムリミットのようなものにだんだん焦り出していた。身内ではない人へのフォローはスーパーに対しての親切にはなるかもしれないが、傍若無人な行為をなんでもかんでも優先するのは違う気がするし、いろんな人が見ている可能性を考慮すると交流って難しい。
私はどうしようか考えながら、やはり関わりたくない気持ちが勝り、店員に状況を伝えることに決めてセルフレジに進んだ。

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