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鬱の年の瀬

鬱ってすごいよ。なんもおもんない。

私は全ての季節の中で今くらいの時期が2番目に好きだ。
1番は夏が好きなのだけど、とにかく2番目に今みたいな、11月末から1月頭にかけての、「年末!師走!年明け!」などと忙しなくやたらギラギラした時期がとても好きだ。
世間や人が1年のうちで脂が乗っている感じがする。
静かで落ち着いていて、なのに賑やかで、みんなどこか浮き足立っていて、無礼講みたいな余裕がある。
寒さはスッキリした心地が生まれて、あったかいご飯は美味しくて、クリスマスや正月の派手で厳かな雰囲気は心持ち豊かになる。安っぽいイルミネーションがキラキラ瞬いていても、なんとなく素晴らしく壮大に感じる。

だのに今年ときたら。鬱ってすごい。
地獄みたいだ、なんもおもんない。年末商戦は退廃的に感じるし、遺伝子的な醜い競争に見える。
クリスマスギフトは義務。責務。重責。
まあこいつにはちゃんと選んでやるかと思った相手にすら、自分がギフトをうまく選べないあまり、
幻滅されるんじゃないか、やらないほうがマシなのでは、と思っている。
パーティーやごちそうは虚無主義で溢れているし、食べる資格を感じない。包装紙やイルミネーションも海洋ゴミの元にしか見えない。
オーナメントやぬいぐるみのあたたかさに涙しそうになってはその隙に彼らが私に悲壮な囁きをする。「ねえママはどこ?」「さみしいよ」「たすけて」「君を犠牲にしてでも僕と一緒にいてよ」「さむいよ」うるせえ。
クリスマス映画がなんだ。俺がグリンチだ。
正月はなんだ、明けたらなんだって言うんだ。来年がなんだ、どこに未来があるんだ。
年賀はがきの値上げにすら将来の暗雲を連想してしまうし、お年玉付き年賀はがきが普通の年賀はがきより高いのを見て「そうか…貧乏人は助け合いの輪の余興にすら入れてもらえねえんだな」と目眩がする。
正月太りがどうのとか言ってる連中は正月じゃなくてもちょっと習慣変わるようなことがあればすぐ太るんだろ。正月じゃなくてお前が悪い。
そんでもって賑やかな店内BGMはやかましくて、私を締め出そうとしてるんじゃないかとすら思う。
おまけにクリスマスがまだ終わってないのに値下げシールが貼られたクリスマス雑貨たち。
正月用品、次はお前たちの番だよ。
すぐお前たちもゴミになるからね。
去年までも多少のニヒリズムは抱えていたがここまでじゃなかった。ちゃんと楽しかったしワクワクした。
もっとあるが、もう良いだろう。

鬱ってすごいよ。私はクリスマスやお正月が本来大好きなのに、こんなに悪口が書けてしまうんだ。
そのくらいおもんない。

だからね、このままだと年末年始の悪口で終わってしまうから無理やりいい感じのことを言って締めるけど、これを読んだ人の周りでやたら何でもかんでもつまんねえつまんねえと言う奴がいたら、一度でいいのでそいつが何か一人で抱えきれないものを抱えてはいないか確認してみてほしい。そいつはまだ救えるかもしれないから。
鬱は発症したら一生モンらしい。私は今年やたらひどくなってやっと病名がついただけで、小学生の頃からその気がずっとあるからあんまり絶望していないけど、そうじゃない人が突然ぶっ壊れたら、これはとてもじゃないけど耐えられないと思うよ。

来年はもっと楽しめるといいなあ。ぼちぼち生きていきます。



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