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社会学~空き家問題~その1【死ぬまでにしたい20の趣味】

「祖父母が住んでいた家が空き家になっているけどどうしよう」
「両親が他界して実家は誰も住んでいないので空き家になっている」
「実家を相続したけど職場と離れすぎていて住むのはむずかしい」
こういった悩みは、空き家を所有してみないとわからないものです。

かくいう私も現在空き家の問題を抱えておりますので、自身の問題としても空き家問題を調べてみました。

立地がよくてすぐに買い手が見つかりそうなら問題ありませんが、実家が過疎地域のため売っても費用の方が高くつきそうだったり、親戚関係の兼ね合いですぐに手放しづらいなど空き家になってしまうにはそれなりの理由があります。

特に、親や先祖から相続した一戸建てであれば築年数も古く処分に困ってしまうのが現状です。

そこで、実際に空き家所有者で処分に困っている私が日本の空き家について調べてみました。
これを読んでも空き家問題は解決できませんが、空き家問題に興味を持つきっかけになってくれれば幸いです。


現在の空き家状況

総務省の「平成 30 年住宅・土地統計調査」によると、総住宅数は6240万7千戸と2013年より2.9%増加し、1世帯当たりの住宅数は1.16戸となっています。
数字だけみても空き家があることがわかります。

余っている住宅があるということは、中古住宅が売買されたり売却解体されるよりも新築として建てられる住宅の方が多いということになります。

空き家は 848 万9千戸と 2013年より3.6%の増加で、空き家率は 13.6%と過去最高となっています。

また、持ち家と賃貸の比較では、持ち家は 3280 万2千戸で、持ち家住宅率は 61.2%となっており、持ち家の取得方法は以下のとおり「新築(建て替えを除く)」が最も多くなっています。


  • 「新築(建て替えを除く)」が 990 万2千戸(持ち家総数に占める割合 30.2%)

  • 「新築の住宅を購入」が 738 万9千戸(同 22.5%)

  • 「建て替え」が 565 万6千戸(同 17.2%)

  • 「中古住宅を購入」は 483 万3千戸(同 14.7%) 

  •  「リフォーム前の住宅」は 336 万5千戸(同 10.3%),

  •  「リフォーム後の住宅」 は 146 万9千戸(同 4.5%)となっている。 

政府は空き家問題への対策として、2015年に「空き家対策措置法」を施行しましたが、内容としては「空き家を所有しているなら早くなんとかしろ。問題が起こればペナルティーね」とも受け取れるものです。


空き家があることで問題となること

空き家を放置したままにしておくと、近隣に迷惑をかけてしまうことがあるだけでなく、所有者にも金銭的な負担が発生しつづけます。

近隣に迷惑をかけてしまう例としては以下があります。

  • 倒壊による事故

  • 犯罪の根源や温床

  • 雑草の繁茂

  • 害虫の発生

また、所有者が負担するものには以下があります。

  • 固定資産税

  • 近隣に何らかの損害を与えてしまった場合の損害賠償

  • 巡回サービスを利用する場合はその費用


なぜ空き家があるのか

相続した一戸建てが早期に売却できればあまり問題は起きないのですが、様々な問題から早期に売却できなかったり、家屋を残しておくことで税金が優遇されることなどから、売却できない一戸建てが空き家として残ってしまうのが現状のようです。

税制

土地などの固定資産には固定資産税がかかりますが、住宅用地が200㎡まであれば、固定資産税が1/6になる「住宅用地の特例措置」があります。
空き家となっている家屋を解体して更地にするとこの特別措置が受けられなくなりますので、家屋が残ったままとなり空き家となっているのです。

東京都主税局
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/kotei_tosi.html


人口減少と供給の問題

日本では2008年に人口がピークとなって以来減少が続いています。
人口は減少していますが、新築の住宅供給は続いているため、1世帯あたり1.16戸の住宅があることになっています。

総務省 平成 30 年住宅・土地統計調査

https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/kihon_gaiyou.pdf

また1973年以降総世帯数を総住宅数が上回る状態が続いており、その差は広がる一方で空き家が増え続ける状況となっています。

国土交通省 令和4年度 住宅経済関連データ

ハウスビルダーや工務店は新築住宅を建てて売ることで成り立っているので仕方ないのですが、これは今の日本人が中古住宅より新築住宅に住みたがる傾向にあることから建築業界の責任ではなく、国民の文化とも言えそうです。

誰も住まなくなった一戸建ての家屋と土地の再利用までを考えた仕組みを国民の文化として醸成していければ、空き家問題は解決に向かうのかもしれません。


売りたくても買い手がつかない

空き家は全国的に存在していますが、山間部では空き家率が高い傾向にあるようです。

山間部などの土地が傾斜している場所では更地にして駐車場にするなどの他の目的での利用が進まないことや、利便性や建て替え費用などの問題から買い手がつきづらい状況が推察できます。

また比較的人口が多い都市部とその周辺地域では、空き家を更地にして商業利用したり地域コミュニティの場所にするなどの利用方法が考えられますが、まとまった面積が確保しづらい点や管理者や所有者の問題などから空き家のままになっているのではないでしょうか。

全国の空き家率
NPO法人 空家・空地管理センター

自治体の空き家バンク制度を利用するのもいいのですが、空き家バンクをやっていない自治体もあるので、個人所有の一戸建ての場合は所有者まかせではなく、国や自治体が買い上げて競売に出すというような仕組みがあったらいいのですが。


空き家の所有者はどうしたいのだろうか

空き家を放置している所有者は、所有している空き家をどうしたいのでしょう?

所有者がとれる選択肢としては以下の3つになりそうです。

  • 売却か賃貸

  • 自分で住む

  • 先祖の家土地なので手放したくない(現状維持)

空き家の所有者それぞれに個別の問題がありそうですが、所有しているだけで税金を払わなくてはならないので、売却か賃貸に出したいという人が多いのではないでしょうか。

個人的な例になりますが、私は親の住んでいた一戸建てを相続した時に早々に売却したかったのですが、叔父叔母の心情も考慮してしばらくはそのままにしておきました。
年に数回は掃除や換気をしに行っていたのですが、自宅からかなり離れているためコストが大きな負担となっているのが正直なところです。
数年が経過しやっと売却することにしたのですが、空き家となっている一戸建ては生活に不便な場所にあるため、なかなか買い手がつきません。
そこの行政は空き家バンク制度を休止しているため、どうにもできず現在に至る状況です。

このように手放したくても、そうできない所有者が多いのが現状かもしれません。


空き家の利用例

問題となっている全国各地の空き家ですが、空き家を活用している例もあるので見てみたいと思います。

商業利用

立地に恵まれている場所にある空き家であれば、古民家カフェなど商業利用している例もあります。
https://aki-katsu.co.jp/magazine/archives/228

知名度のある観光地が付近にあることや駐車スペースが確保できることなどの条件がありそうですが、地元の名産を利用したメニューなど独自のサービスを提供できれば魅力的なお店にできそうですね。

企業やSOHOのオフィス

大企業のサテライトオフィスやベンチャー企業や個人事業主のオフィスとしての活用も進んでいるようです。
オフィスとして利用する場合、車通勤が可能か公共の交通機関など通勤の利便性の他、食事や休憩できる場所が付近にあることが条件になりそうです。


リノベーションや空き家管理業者

空き家にあたっては自治体の他にも不動産会社など民間企業などもサービスを提供してくれています。

空き家活用.net
https://akiya-katsuyou.net/category2/58

NPO法人 空家・空地管理センター
https://www.akiya-akichi.or.jp/

ハロー!RENOVATION
https://hello-renovation.jp/

カリアゲJAPAN
https://kariage-japan.com/

日本民家再生協会
https://minka.or.jp/

三井のリハウス(不動産会社による巡回サービ)
https://www.rehouse.co.jp/sell/support/junkai/


まとめ

現在の日本では、人口が減少しているにも関わらず新築住宅の供給が続いていることもあり、世帯数より住宅数の方が多いのが現状です。

余っている住宅は、空き家となり倒壊などの問題が起こる可能性があります。
空き家所有者は、税制などの面から家屋を解体しないため空き家として残ったままになっています。

また空き家は売却したくても買い手がつかなかったりと放置されがちな状況である反面、商業利用で成功している例もあります。

中古住宅市場が活性化するなどで空き家問題が少しでも解決に向かうことを願っております。


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