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【超短編小説】消しゴムと鉛筆。


僕は鉛筆が羨ましい。


だって、君の身体が文字として残るじゃないか。 


例え、短くなって捨てられたとしても、君は世界に残り続けることができる。


でも僕は、鉛筆を消す役割で、消しカスとなった僕は捨てられる。


小さくなって、影も形もなくなって、世界からいなくなる。


それに、僕は最後まで使って貰えること自体少ない。


いつも、途中で買い替えられて、僕は机の隙間や床下に忘れ去られ、年末年始に見つけて貰う。


そしてそのまま捨てられてしまうんだ。

時々、練り消しとか、消しゴムスタンプとかで形として残してくれる人もいるけど、飽きて捨てられることが殆どだ。


僕は、鉛筆に生まれたかった。


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私は、消しゴムに生まれたかった。

だって、ノートの世界を綺麗にしてくれるから。

私は、書き手の握力によって直ぐに折れてしまうし、「それは書いちゃいけないよ」という文字に気付いても、止めることができない。

訂正することができないんだ。

それに、最近はデザインが可愛い鉛筆や、シャープペンシルが流行っていて、絵を描く人や年配の方にしか買ってくれる人がいない。

でも、消しゴムは違う。消せないペンシル以外では必ず必要とされる。

私は、どんどん小さくなっていって、書きにくくなると途中で捨てられてしまう。頑張って使ってくれる人もいるけど、ごく少数だ。

そして、消しゴムよりも寿命が短い。同じように使われても、消しゴムの方が長く生きていられる。

練り消しとか、第二の人生を送れるやつもいる。


私は、消しゴムに生まれたかった。

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