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ディスクレビュー: 在りし季節の遭逢 / 野口恵 (CD)

空気のように音楽を吸って吐いて呼吸している人の心象スケッチ、sassya-ベーシスト野口恵のソロ作2020年アルバム

もうずーっと思っていることがあって、インディーロック/ポップスの謳い文句って全部"浮遊感"だの"優しい"だの"明るい"だのそんな言葉ばかりが並んでいて、そんな言葉だけしか語られない音楽に聞こえるのが嫌なんだけど、人が作り出すこの"音楽"という謎の営みが表面にみえるそういった要素だけでなくて、その奥にある何か歪んだものからむしろ生み出されているような気がする。野口恵がそうであるかはわからない。2019年に名盤『脊髄』をリリースしたsassya-のベースであると説明した方が3LAを利用しているリスナーの皆様には的確なのかもしれないが、彼女は2013年からソロアーティストとして活動を続けていて、発表してきた作品の数も実はsassya-よりも多い。本作はそのsassya-やSPOILMANもレーベルメイトであるKerosene Recordsからのリリースとなり、これまでの初期荒井由美や中島みゆき等の70年代のニューミュージック、フォークを経由しながらまた新しいポップな地点へも到達する冒険心がある。だが柔らかなアコースティクな質感からバンドサウンドまで様々な楽曲を聴かせながらも一貫して感じる孤独の気配、つまりはコントラスト。人は何をもって優しさを知るのか、何をもって明るさを知るのか、そして何をもって生を知るのか。2020年がどうした!うるせえ!社会的背景や文脈も関係ない。空気のように音楽を吸って吐いて呼吸している人の心象スケッチ。無限の色を散りばめた、街の風景。

tracklist:
1. それきり
2. 部屋
3. 密ごころ
4. 波風の果てに
5. 青時雨
6. リバー
7. グラス
8. 物数奇
9. 誰もいない海
10. 滅びについて
11. ひと

Text by Akihito Mizutani (3LA -LongLegsLongArms Records-)
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3LA -LongLegsLongArms Records-
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