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雑穢 #1011

雑穢とは、実際に体験した人の存在する、不思議で、背筋をぞっとさせるような、とても短い怪談の呼称です。今夜も一話。お楽しみいただけましたなら幸いです——。


 二階にある自室でゲームをしていると、階下で料理をしていた母親から、夕飯が出来たよと声を掛けられた。
 おやもうそんな時刻かと、自室を出て廊下を進み、階段を下りようとした。
 その時、ふと背後が気になって振り返った。二階の廊下のライトは、人感センサーで自動的に点灯するようになっている。消灯までは十分な時間がある。だからまだ視界は明るいはずだ。それに階段のライトは点いていたので、廊下のライトが消えていても、ぼんやりと見えるはずだ。
 しかし、そこには一切を見通すことのできない暗闇が広がっていた。
 一瞬見ただけで全身を鳥肌が覆った。階段を駆け降りてダイニングに飛び込む。
 家族は夕食を食べる準備をしていた。
 「どうしたの」と声を掛けられ、「何でもないよ」と平静を装う。
 食事の後で部屋に戻ろうとした。階段を上り切ったところで廊下を覗くと、まだ暗闇は晴れていなかった。それを突っ切らないと部屋に戻れない。
 一度目は諦めて一階に戻り、風呂に入ることにした。
 二度目も諦めて一階に戻り、家族から何やってるのと不思議な顔をされた。
 暗闇が晴れたのは午前二時半を回ってからだった。

次の話


雑穢

note版雑穢の前身となるシリーズはこちらに収録されています。一話130文字程度の、極めて短い怪談が1000話収録されています。

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