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ラジオの記憶㊴『「スフィア基準」を初めて知った』------『大竹まことゴールデンラジオ!』

 ポッドキャストでラジオを聞く機会が多くなった。ときにはyoutubeで聞くこともある。

 だから、時間も問わず、それにラジオ番組のコーナーだけを聞くことも増えた。

 そんな中で、「大竹まことゴールデンラジオ」の「大竹紳士交遊録」というコーナーを比較的マメに聴取するようになったのは、だいたい15分程度という短い時間のせいもある。


「スフィア基準」

 何人ものゲストがコメンテーターとして登場し、話をする。そのメンバーは入れ替わりもありながら、不思議とこのコーナー全体の感じは変わらなくて、そして、自分が無知のせいもあるのだけど、初めて聞くような情報も多い。

 その中でも、この「紳士交遊録」のコメンテーター・深澤真紀氏は、特に自分が知らないことを伝えてくれることが多い印象がある。今回も災害に関する「スフィア基準」という言葉は初めて聞いた。

 検索をしてみると、すぐに多くの記事や資料が見つかる。

 内閣府の公式サイトにも、「ソフィア基準」についての記述があった。

人道憲章と人道対応に関する最低基準(通称:スフィア基準)は、1997年にNGOグループと国際赤十字・赤新月運動が開始したスフィアプロジェクト[2]にて、策定されました。これは1990年代における人道機関による国際的な活動の増加、さらに1994年の大湖地方の難民危機を受けて、「多くの人道援助機関及びNGOが共通して使用する人道対応に関する基準が必要である」という認識の高まりを受けたもので[3]、紛争や災害の被害者が尊厳のある生活を送ることを目的に定められた基準です。

スフィア基準では、「人道憲章」、「権利保護の原則」、「コア基準」(全てのスフィア基準に共有される必須のプロジェクト基準)とともに、「人間の存続のために必要不可欠な4つの要素:(1)給水、衛生、衛生促進、(2)食糧の確保と栄養及び、(3)シェルター、居留地、ノン・フードアイテム(非食糧物資)、及び(4)保健活動」の分野における最低基準が定められています。特に「人間の存続のために必要不可欠な4つの要素」に関する章では、人間が生命を維持するために必要最小限な水の供給量、食糧の栄養価、居留地内のトイレの設置基準や数、また避難所の一人あたりの最小面積や保健サービスの概要などが具体的に紹介されています。これらの基準は比較的高い水準で定められており、そうすることで、紛争や災害時などの緊急時において、支援を必要とする人々が高い水準の援助を受けられるようにすることを目的としています。同じような基準は、UNHCR緊急対応ハンドブック[5]でも紹介されており、多くの国連機関、国際機関及びNGOは、これらの基準を参考にしながら緊急人道援助活動を行っています。

人道対応に関する最低基準を定めておくことは、支援者及び支援対象者にとって、重要となります。まず支援者においては、援助の説明責任や品質維持のために活用することができます。さらに支援対象者にとっては、特に脆弱な立場にいる者への支援が優先されることで、支援対象者が平等且つ公平な支援を受けられるよう配慮されています。同時にスフィア基準はあくまでも一般的な基準であり、紛争国や被災地の文化や食糧事情、また風土などにより、支援を受ける人々のニーズに対応した臨機応変な援助を行うことが重要となります。このように、スフィア基準は、紛争や災害などの緊急時において、支援を受ける人々の苦痛を軽減するために実行可能なあらゆる手段が尽くされ、人間としての尊厳をもって生活を送るために役立っています。

(「内閣府」サイトより)

 現在、どのような状況にあるとしても、ここに述べられていることは、ごく穏当で、しかも真っ当なことでもあるのに、この文章の最初には、こうした言葉がある。

本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません。

2013年8月9日
国際平和協力研究員
外山 聖子

(「内閣府」サイトより)

 どうして、わざわざ、こういう断り書きみたいなものが掲げられているのだろうか。

災害関連死

「大竹まことゴールデンラジオ」の「紳士交遊録」での深澤真紀氏の言葉によると、「スフィア基準」が定めている基準に、日本は届いていない、ということだった。

「スフィア基準」は、かなり膨大な量の基準があるらしいのだけれど、その中でもトイレの数や、一人当たりのスペースも具体的に定められていて、その基準に日本の災害時の避難所が届いていないようだ。

「スフィア基準」も知らなかったし、これだけ地震も多く、台風もあり、災害大国といってもいい国が、その基準を満たしていないことも知らなかった。

 それだけだったら、非常時には多少大変な思いをしても我慢すべきだ、他にもかける予算があるのだから仕方がない、といった言葉が自分の内面からも聞こえてきて、それを正当化するような思いにもなるのだけど、深澤氏の話は「災害関連死」に及んだ。

「災害関連死」で亡くなる方が思ったよりも多いこと。「スフィア基準」を満たしていれば、それは防げたかもしれないこと。深澤氏の話を全部を理解したかどうかは分からないものの、そんなようなことを知った。

 この記事は、2016年の熊本地震で、ご自身のお子さんを、災害関連死で亡くした方がインタビューに答えている。

 災害関連死の遺族としては、能登半島の災害関連死が、どうしても気になってしまいます。災害のあとに、避難生活で持病が悪化したり、体調を崩したりして亡くなってしまうことが災害関連死です。

 能登半島地震発災直後、高齢の男性が命を落としたとニュースで知りました。その男性は、避難所の床で寝ていて朝起きたときにはすでに息がなかったそうです。

 熊本地震でも避難所への段ボールベッドの供給の遅れが問題になりました。段ボールベッドは、過酷な避難所生活のなかで、災害関連死を防ぐ有効な取り組みの1つと言われています。もしも避難所に段ボールベッドがあったなら、その男性は亡くならずにすんだのではないかと思わずにはいられませんでした。

(「PRESIDENT」Onlineより)

 災害が起こるのは、日本という国の立地条件から言えば、仕方がないのかもしれない。だけど、災害が起こって、幸いにも助かったとしても、避難所などの環境が良くないために亡くなったとしたら、それは人災に近いものではないかと思ってしまった。

 ラジオを聴くまで、「スフィア基準」という言葉も、考え方も知らなかった人間が、何かを言う資格はないのかもしれないけれど、それでも、「災害関連死」を減らすことは、少なくとも目標にすべきことではないか、と思う。

不安

 以前、この「大竹交遊録」で、同じように深澤氏の言葉で、基本的人権に関することで、国際的に目指す基準が定められているのに、日本が、そこに届いていないことも知った。さらに、そのことに関して、国際的な機関から、勧告や要請などを受けているのに、それに応えていないことも初めて知って、(それも恥ずかしいことだけど)驚きもあって、それに関する記事も書いた。

 だから、災害に関しての「スフィア基準」に関しても、それまで知らなかった人間が言うのは、やはりおかしいのかもしれないけれど、今後のことについて、自分だって、いつ災害に巻き込まれるか分からないから、やはり考えてしまう。

 それも、貧乏だったりするし社会的には弱い立場だから、自分で自分を守れる範囲もごく狭い人間から見ると、これからたとえば災害時には避難するしかない人間に対して、最低限の環境しか提供されない上に、これから、さらに少しでも向上することがあるのだろうか、という不安がある。

 それは、繰り返しになるけれど、内閣府のホームページに、「スフィア基準」のことが書かれているのだけど、その冒頭にこんな言葉があるからだ。 

本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません。

2013年8月9日
国際平和協力研究員
外山 聖子

(「内閣府」サイトより)

「スフィア基準」というのは、様々な災害や国際紛争の経験をもとに制定されてきた基準であり、そこには政治的思想などの前に、人を大事にする、という人類共通の「常識的」なことに関してだけ述べているようだった。(初めて知って、しかも部分的にしか知らないのですが)

 でも、そのことに関して、その冒頭に「本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません」とあるのは、拒絶感のようなものを感じてしまった。

 つまりは、これは屈折した見方かもしれないけれど、「スフィア基準」というものがあるとしても、日本政府は、その基準を満たすための努力をしない、といったことにつながるのではないか、という不安も生じさせる。

 これまで基本的人権という、フランス革命以来の人類の常識の一つでもある考え方に対して、民主主義国家を名乗る以上は、しかも先進国会議に参加する国としては、少なくとも実現に向けて努力すべきことも、(人権機関の設立など)努力していないように見えるから、この災害時に関する「スフィア基準」に関しても、これからもあまり重視しないのだろうか、という思いになってしまう。

 先進国の中で、これだけの災害が多発する国なのに-----という気持ちにはなった。

 ただ、これもラジオ番組で、「スフィア基準」を知らなければ、ずっと分からないままだったとも思うと、改めて恥ずかしさと、さらに知ることの大切さは確認できた。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。




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