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そば屋の出前。

 今から考えれば、もしかしたら都市伝説の一つかもしれないけれど、そば屋に関するこんな話があって、同時に、ある程度の年齢以上ではないと知らないことかもしれない。

 そば屋に出前を頼む。

 時間が経つ。

 まだ来ない。

 ガマンができなくなって、そのそば屋に電話をする。

 すると答えは決まっている。

すみません。いま、出ました」。


そば屋の出前

 こうしたやりとりは、以前はもっと全国各地でされていたと思うのだけど、現在は、ウーバーイーツなどもあって、かなりシステムが変わっているし、宅配ピザだと注文から30分以内で届けます、といった約束がされているようだから、昔話のようになっているかもしれない。

 もしくは、実は思ったよりも、あまりされていない会話の可能性もある。

 ただ、こうした、なかなか来ない出前に対して、注文するお客側は、こんな推測による会話をしていた。

 「あの、いま、出ました、というのは、ウソだよね。まあ、ウソというのは言い過ぎかもしれないけれど、さっき出前に出た、というのは、まだ支度をしていて、でも、まだ準備段階だとすると、待たされたお客は、もういい、と断ってしまう可能性もあるから、だから、いま出ました、って言うんだよね。

 もしかしたら、こちらの注文を忘れていた可能性だってある。だから、電話をしてから、届くまで、またさらに時間がかかることが多いよね」。

 だから、いつの間にか、どんな仕事や作業に関しても、まだできていないのに、問い合わせに対して、「いま出来ました」と口走ってしまうことを、「そば屋の出前」と表現される時代もあった。

 ただ、それは、よく考えたら、どこまで本当のことか分からないし、自分でも、実際には、「そば屋の出前」のような目にあったことが、それほど多いわけではない。

 だから、実際の「そば屋」さんにとってみたら、こんな話は迷惑かもしれないし、出前の中でもいろいろとあるのに、「そば屋」に関してだけ、こうした都市伝説のような話がされていたから、それだけ、「そば屋」の出前が多く利用されていて、親しまれてきた証拠なのだろうと、今だと思う。

(ここまで「そば屋」と書きすぎました。すみません)

インターネットショッピング

 洋服関係は、あるショップで買うことが多く、だから、そこで割引の期間があって、以前はメールをプリントアウトして使えたのだけど、今はスマホを持っていないと、店頭では買えないというシステムになってしまっていたので、それならインターネットで買おうと思った。

 気がついたら、その期限が迫っていて、ほぼ締め切りの日になってしまっていた。

 夜に、以前から購入を考えていたジャケットと、長袖のワイシャツを買おうとした。ワイシャツも、今はポケットなしのもあったのだけど、老眼鏡を入れるのにちょうどいいので、やっぱりポケットもあるものを探して、このショップのものにたどり着いた。

 その期間だと一割引になるので、その2点を買おうとして、コンピュータの画面上で手続きをしたのだけど、特に間違いがあるわけでもないのに、何度も、この操作は無効です、になってしまったりして、それをとにかく繰り返すことになった。明日の午前10時までが期限だから、注文が殺到しているのかもしれない。

 それで、もう無理だと思って、途中で嫌になって、もう買うことをやめようと何度も思ったのだけど、途中で止めるのも、なんだか悔しくて、それで1時間が経って、やっと注文ができた。

 こんなに苦戦したことは初めてだった。

 だけど、それは、大勢の人がアクセスする、ということの結果かもしれず、これだけ通信機能が発達しているのに、それでも起こることだと改めて知った。

注文完了

 その注文完了のメールも届いた。

 それが、その月の6日のことだった。

 そのお届け予定には、「※」がついていて、その日付は、その月の最終日だった。まだ3週間以上ある。

 だけど、その時はそうはいっても、それは、ある種の「保険」であって、だいたいがその予定よりも早く配達されることが多いので、もう少し早く到着すると予想していた。

 それから、時間が経った。

 その月の下旬になった。

他の書類

 それとは、まったく違う手続きに関する郵便物も届くはずなのに、届かなかったので、そのことも心配になり、電話で問い合わせたら、予定よりも遅くなっているが、来月の上旬には発送する、ということを伝えてもらった。

 自分が気がつかないうちに郵便物を捨ててしまったり、整理が苦手なので、ごちゃごちゃしたところにとりあえず置いて、見当たらなくなることも少なくないので、自分のミスではなく、単純にまだ届いていなくて、これから郵送されることを確認できて、やっぱり安心した。

 だから、届かないジャケットとワイシャツのことだけ、気になり続けた。

問い合わせ

 注文したジャケットとワイシャツに関しては、お知らせのメールも来ていないし、注文完了のメール以来、なんの反応もないままだった。

 あれから、3週間以上が経つし、最初の「この日まで」という予定まであと1日になった。毎回、発送をすると、連絡をくれるので、今日メールが来なかったら、その予定より遅くなるのが決まる。

 だから、予定日が明日までなのに、届いていないし、何の連絡もないのですが、といったことを問合せのフォームに書いて、送った。

 それが午前中だった。

 その日の夜に、突然、発送完了のメールが来た。

 そして、翌日の午後に品物が届く。

 その月末の最後の日の夕方に、さらに、問い合わせに関しての返信のメールが来た。

 そこには、本日、配送完了していることを確認しました、という文章の後に、この期間は多くの注文をいただいていて、お待たせして申し訳ありません。という言葉が続いた。

 問い合わせに対しての返信をするのも手数がかかるので、注文した品が無事に届いた時点で、すでに答えなくてもいいのでは、と思ったけれど、こうして、わざわざ、届いた後に、謝罪の言葉まで伝えてくれるのは、やはり丁寧な対応だと思い、ありがたかった。

 ただ、この時に「そば屋の出前」のことも思い出していた。

推測

 私が問い合わせをしたのが、期日前日の午前中。

 そして、夕方には商品の発送が整ったというメールが来た。

 さらに期日ちょうどに、商品が届く。

 そのあとに、発送完了の確認と、「お待たせしてすみません」のメールが来た。

 ここからは推測に過ぎないけれど、3週間以上前の注文に対して、もちろんネットのサイトが混乱するくらいの商品が売れたのだろうから、ギリギリの発送になるのは仕方がないのかもしれないけれど、少なくとも、その発送に関して、忘れられていたのではないだろうか。

 そして、注文した人間である私から問合せのメールが来て、確認したら、どこかで埋もれているような状況になっていて、そこから急いで手続きをして、間に合わせて、ちょうど期日に間に合った。

 これは推測に過ぎないのだけど、あまりにも自分の問合せとタイミングがあったので、それは「いま出前が出ました」というようなことは言わなかったけれど、現代の「そば屋の出前」のように思えた。

 ただ、洗練されていると思ったのは、まずは商品の到着を優先させ、その後に謝罪のメールを送ったことだ。それが逆だったら、忘れていたような印象が強まる。

 その謝罪が商品の到着後になるので、「いま、出ました」といった、相手からウソではないか、と推測されるような方法ではない。約束は守ったから本来は謝罪は必要ないのだけど、顧客から問い合わせが来るくらいギリギリだから、それに対しての謝罪で、それは誠実な対応に思える。

 
 もちろん、全部が想像したもので、事実は単純に、多忙のために順番通りに作業をしていた結果、待つ側としては長い時間でもあったのだけれど、発送する側としては緻密に計算されていて、シンプルに予定通りであって、私が問い合わせをしなくても、淡々と期日通りに届いていただけかもしれない。

 そのあたりのことは、ずっとわからない。

 だけど、「そば屋の出前」という都市伝説のようなことが存在するせいで、こうした出来事があると、自動的に疑ってしまうから、昔から、お客側から、大げさに言えば経営側の事情を、やたらと推測する習慣があるのだと思う。

 「そば屋の出前」のような都市伝説は、だから、形を替えて、これからも、ずっと存在するのだろう。




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