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「8時間を超えるトークイベントを、オンラインで視聴して、思ったこと」--------『21世紀』は「2022年」から始まった。

  中年になってからの再びの「就職活動」をしたとき、履歴書は送ってもすぐにポストに戻り続け、「お祈りメール」ばかりが届いたり、何の反応もなく、午後からの限られた時間の非正規の仕事ばかりを申し込んでいるのに、仕事は全く決まらず、そのまま1年が経った。

 あとから考えたら、かなり気持ちが暗く重くなっていたのだけど、その頃に、ゲンロンカフェという場所が始まって、通常のトークイベントをはるかに超える長時間、人と人とが、真剣に話し続ける姿を見て、そのことで、支えられていた気持ちもあって、だから、勝手に恩を感じてもいる。

 それで、「ゲンロン友の会」にも入会した。

 そのこともあって、その配信プラットフォームを利用するようにもなり、本当は、東京・五反田にある「ゲンロンカフェ」に行って、そこに来た人たちと一緒にトークを見たい気持ちはあるものの、今の、コロナの感染状況では、怖くて、出かけられず、だけど、見たいイベントがあったので、購入はした。

 あとは家で、こたつに入ってみるだけだったけれど、午後7時から開始で、おそらくは午前0時を回るのは確実だと思えたので、食事もそれまでに済ませて、備えていた。アーカイブがあるから、別にいつ見てもいいのだけど、たまにはライブに近い状態で見たいと思った。

 午後7時になって、まだ始まらなかったけれど、なんとなく微妙に緊張し、期待も高まっていたから、それは、会場に行った時と、近い気持ちになっていたようだった。

トークイベント

 東浩紀、西田亮介、辻田真佐憲の3人が、話を始める。

 今回は、2022年を振り返るというテーマだったので、1月からのスライドがあったのだけど、それが出てくるまでの時間がかなりあった。こうした無駄とも思える時間の話は、アルコールが入った登壇者もいるから、かなり笑いもあったり、冗談も入ったりもしながら、突然、話の深度が深まり、その場の色合いが変わる。

 登壇者の3人は、サッカーについてはかなり関心も薄いようだけど、このトークイベントは、展開がダレたと思ったら、急に得点が入ったりするサッカーと、似た時間が流れていくから、目が離せない感覚になる。

 だけど、問題は、サッカーが90分。延長があったとしても、120分だけど、このトークイベントは、2時間をかけて、まだ2月の段階だった。

 だから、これから、12月のことを語るまで、どれくらいの時間がかかるか分からなかった。

 これまで、こうした配信の番組は、自分が都合がいい時に、アーカイブで視聴していたから、前もって、トータルの時間がわかったけれど、今回は、ライブで見ているから、これからの展開は分からなかった。

 それが、画面を通してとはいえ、生のトークイベントを見ているときの気持ちに少し近づけて、ちょっとうれしかった。

真っ当であること

 2022年は、2月にロシアのウクライナ侵攻によって、時代が変わってしまったことを改めて確認できるような話になり、さらに7月には国内で安倍元首相銃撃事件があって、暴力がテーマになるような年になったことについても、話し合いが続いた。

 さらには、登壇者とも縁の深い宮台真司襲撃事件まであり、空気が変わった1年であって、そう考えると、怖さが襲ってくるような年であったのを、視聴しているだけでも、再確認する気持ちになった。

 休憩を何度かはさみながら、時間は進み、容赦なく、午前12時もすぎる。

 まだ終わる気配もない。


 この暴力の気配の強い時代になったことに関して、3人ともさまざまな視点を積極的に提示していたのだけど、その中で、印象に残ったのは、どんなことに対しても、「真っ当」であろうとする東浩紀の姿勢だった。

 それは、「バズる」という言葉が象徴するような「目立つこと」「人目を引きつけること」が重視され、古い表現で言えば「派手な見出しになるような言葉」があふれる現実と比較すると、もっと穏当で、スピードを抑制するような表現に感じたのだが、それを継続しているのは、しんどさもあるのだろうけど、使命感のようなものがあるように見えた。

 大事なことだと思わされた。

8時間47分

 気がついたら、開始して7時間が過ぎているのに、登壇者の3人は、まだ始まったばかりのようなペースで話を続け、考えたら、とんでもなくすごいことではないかとも思ったが、こうしてある程度リラックスをしながら、長く話し、それまで知っていることや、考えていることだけではなく、その話をしている中で、生じた言葉まで出てきているようで、新鮮だった。

 そのうちに、午前2時半も過ぎて、このままでは、最近は、ワールドカップ決勝で、午前3時を過ぎたけれど、それを過ぎそうなので、私は、途中で離脱する。

 五反田の会場には、まだ人がいて、その上で、トークを聞きながらも、自分自身も考えているのがわかる質問をしている人が、何人もいるようだった。

 登壇者もすごいと思うが、そこにいる参加者もすごい。

 翌日、起きて、残りを聞いたのだけど、全部で8時間47分だった。

 午後7時過ぎから始まったトークイベントが、午前4時前まで続き、それが、特別なことでないようにおこなわれているのは、明らかに普通ではないけれど、そういうことができるような平和な時代が続けばいいのに、と願うけれど、それが厳しくなる可能性もあると考えると、ちょっと怖い。




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