caroftheyearがつまらない理由・・・・・

今年、10月までに発表された新型車に無理やり優劣をつける10ベスト・カーが発表され、大賞が決定。
その大半がモデルチェンジした在来からある車種。去年のようなニュー・カマーと呼べるものではフォルクスワーゲンのiD 4がひとり気を吐くばかりの印象。

それはそうだろう。各社とも電動車の開発に血眼になっていてガソリン車の開発どころじゃないはず。ましてや新規にプラットフォームを開発してエンジンを載せている暇など無に等しいから(だろう)

デリカ・ミニだってそもそも日産ルークスのOEMを暖簾掛け替えしたもの。
ノミネートならなかったが好調ダイハツのキャンバスに倣ったスズキのワゴンRスマイルはもう登場から1年以上が経っていた。ホンダの国民車N-boxも新旧2台並ばないと新型を言い当てられない。

もしも今自分が自動車少年としての時代を過ごしていたなら、鉄道ファンか何かに趣旨替えしていたかもしれない。それくらい少年時代のクルマは魅力に溢れていたのだ。

検索してみてほしい。1967年一年だけをとってもどれだけの新型車がデビューを飾っていたのか・・・・・ホンダの大ヒット軽乗用N360にブルーバード510型に白いクラウンことMS50系、そのエンジン・ブロック以外共通部品のないトヨタ2000GTに豊田佐吉生誕100年記念のセンチュリー、いすゞの至宝117クーペ(発表は前年)、ロータリーエンジン1号車のコスモスポーツ、初めてのモデルチェンジを受けたマツダファミリア(モーターショーではファミリア・ルーチェのロータリークーペお披露目も)、リアエンジンに趣旨がえしたフロンテ360等々10指に余る豪華な顔ぶれ、当時まだなかったyearcarを1台選べと言われたら大論争の末、絞り込みは結局不可能だったかもしれない。

おまけに日産R380やホンダF1が現役で走り回ってもいたのだ。ルマン24時間の覇者はフォードGT・・・・これで自動車少年が健全に育まれない方がおかしい!

映画のスクリーンでは007は2度死ぬのなかでアストンマーチンに代わってトヨタ2000GTがボンドを助手席に乗せ、東京湾に40系クラウンを沈めてみせた。
だから少年漫画誌のサンデーやマガジンの巻頭をカラーで飾るのもクルマネタになることが多く、それは一般的な週刊誌や娯楽誌でも同様だった。

あるいは1969年は言わずと知れたハコスカの赤バッジ登場の年。その年の暮にはフェアレディもZが付加され、屋根が閉まり、ツインカムシックスが戦列に加わる。それだけじゃない、トヨタ1600GTの後を受けてマーク2シリーズの最強版GSSが誕生したかと思えばホンダからは1300にして100馬力を標榜する超スーパーサルーンの登場だ。マツダはルーチェにもロータリークーペを加え、そこに直径の大きな13Aロータリーエンジンを積んだばかりか、前輪を駆動しハードトップボディまで奢って見せたのだ。
軽乗用車の馬力競争も日に日に激しさを増し、スバルはてんとう虫の可愛いボディにヤングSSの名を冠してヘッドランプカバーやパイプバンパー等で凄みを利かせている。
とにかく出るクルマ、出るクルマ、ニュースに溢れていた。車だけではない。バイクの世界にもななはんという超弩級のマシンガ現れ、大型バイクの価値観を根底から塗り替えてしまったほど・・・・・・

この年代に生を受けたクルマの少なくとも10種以上は今日でも中古市場で破格の値段で取引されている物件だ。

今年デビューした新型車がのうち一体何台が後世に名を残すのだろう?
確かにプリウスのデザインは魅力的かもしれない。
デリカミニを愛用する女子は10年以上も手放さないかもしれない。

それより何より今年でカタログ落ちしていた地味なリッターカー、パッソ・ブーンに何か功労賞でもあげたい気分なのだ。軽自動車と指して変わらぬホイールベースのこのクルマ、乗ってみると過不足がなく非の打ち所がない。
たったの百万少々でこれだけの完成度の車が手に入る日本という国はなんと恵まれていることか!そう思った。
だとすればこれを上回る車には付加価値として何を求めるべきなのか?プリウス並の燃費?ヤリスGR fourのようなカリスマ性?

ダイハツがルーツのリッターカーで思い出すのは直列3気筒エンジンのシャレードやその二代目。宇宙人っぽい顔立ちのストーリア、そして二代目を数えるパッソ、ブーン。トヨタだけを見ればパブリカ1000を最後に最小クラスは長らく1300だった。久々のリッターカーがパッソ・ブーンだったというわけ。

ハッチバックのコンパクトボディは絶えてもノッポワゴンのトール、ルーミー、ジャスティやロッキー双子車のライズも土台はパッソ・ブーンのものに近いはず。
素性の良いシャーシだっただけに3代目も期待したのが、ついに生産終了(したらしい)ヤリスが大型化した後、車重800kgクラスのコンパクトカーは、もう新車市場ではお目にかかれないのが今年の寂しい年の暮・・・・・・


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