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give&giveの精神

「自分のモットーはgive&give。人の為に動いてると不思議なことにそれ以上のものが返ってくるんですよね」

先日、図らずもお会いできた、とある企業の社長さんの言葉だ。

最近よく聞く「与える精神」である。
正直、私はこの考えには疑問をもっていた。
なぜなら、これまで自分なりに実践してきたつもりだったが、周囲の状況が改善しているように思えなかったからだ。

私の現在の主な仕事はとある自治体のふるさと納税業務を推進することだ。
私はこれに上記の精神で臨んでいたつもりだった。

自治体に対しては委託事業の枠も越えて動いた。
委託事業には当然契約がある。このため、本来委託元である自治体が自ら動かないといけない部分というものが存在するが、ノウハウがなく、目的・目標設定が曖昧な自治体は手をこまねくことが多い。

ただ委託元がただ座っているだけでは、地域事業は改善しない。
地域のために自治体が動かない場合、委託先が自ら働きかけないといけない場面が生じる。このような状況に対し、自ら積極的に矢面に立ち、各方面を調整し、実績を上げていった。

返礼品事業者に関しても同様だ。
公私の枠を越え、一個人として昼夜問わず語らいあった。
本来は各事業者が各々で向き合うべき商品開発やふるさと納税とは関係のない事業における課題も、個人・組織人の立場を使い分けながら踏み込んでいった。

ただ、その結果どうなったか。
自治体・返礼品事業者双方がより「怠惰」になってしまったのである。

返礼品事業者は私たちが積極的に提案する状況に甘んじ、自ら企画を挙げることが無くなった。
ふるさと事業と関係ない課題などについても「これまでのように考えてなんとかしてよ。もちろん『タダ』で」というような態度を示してしまうような方も出てきている。

自治体は委託元としての責任感がなくなっていった。
本来、契約にはない、委託元が取り組まないといけない、こちらが業務も良心から「お手伝い」した業務はいつの間にか、こちらの責任業務に成り代わった。
「本来、我々が着手する業務ではないですが、地域の為、皆さんが自走できるまでお手伝いしますよ」という説明はこれまで再三に渡り行ってきたのにである。
意思決定権はないのに一方的な責任はある、歪な状態が随所に発生している。

ただ、事業成就の為、クオリティを落とすわけにはいかない。
地域の為、事業の為、契約事項にない業務も取り行い、本来こちらにはない責任も一方的に被るという一種の綱渡り状態が続いている。
当然、改善の為、働きかけているが相手からすると面倒な話でしかないため難航している。

全ては「地域を良くしたい」、「頑張っている姿を見ればともに立ち上がってくれるはずだ」という想いからだった。

だが結果は上記の通り。
地域の「怠惰」を増長し、「誰かが何とかしてくれるだろう」という雰囲気が支配する結果になってしまった。

もしかして自分は余計なことをしてしまったのだろうか。
失意の中、出会ったのが冒頭の言葉。正直、「あー都合の良さそうなこと言ってるなー」と思い、上記の経験を直接ぶちまけた。
それに対する回答が次のものだ。

「giveした人から何かが返ってくることはほとんどないよ。ただ本当に不思議なことに全く別の方向から、思いもよらないもの、与えた以上のものが返ってくるんよね。その内、誰か頭の良い人が科学的に証明してくれると思うけど笑」

正直、これにはハッとするものがあった。
giveしたもの以上かはさておき、全く関係の無い人から応援されることは多々ある。
実際に今、私を支援してくれている人は地域とは関係のない人たちだ。

思えばこの社長との出会いも偶然だった。
初めて訪れた四国。そこで同業者と話す機会があり、上記の悩みを相談すると、これから会う予定だけど来る?と誘われたものだ。
その社長からは最後に「骨は俺が拾ってやるけ、今年はあんたの地域の為、もっかい頑張ってみ」という、温かい言葉までいただいた。

溜まっていた毒気がスーッと抜けていくのを感じた。
どうやら、ここでもgiveとは全く異なる方面から返ってきたらしい。

give&give。与えた当人からではなく、巡り巡って予想もしてないところから返ってくる。
小さい頃の言葉を借りると「神様はちゃんと見ているよ」ということになるだろうか。
都合の良い解釈かもしれない。
自分は神様を信じてないし、何より返ってくる過程の説明がつかない。

ただ、実践し続けている社長さんの器のでかくて、眩しかった。
そして彼のようになりたいと素直に思った。
どこまでいけるかわからないが、改めて初心に立ち返り、地域にgiveしてみよう。力尽きたら、その時はその時。ちゃんとgiveできていれば、何とかなるだろう。今はそう感じている。



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