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ニューロダイバーシティが物語であると強調してしまう事情について。

ニューロダイバーシティは本来、物語ではなく、概念なんだと思う。でもわたしにとっては物語で「も」ある。前のnoteでは、物語の側面を強調して書いた。

なぜわたしにとって、ニューロダイバーシティが物語である必要があったのか、について、やっとまとまった気がするので、書いておこうと思う。


否定しようのない概念としてのニューロダイバーシティ

ニューロダイバーシティは、字義的にも本来的にも、「神経のつくりという意味での多様性」のことであり、事実だし否定しようのない概念である。この意味であれば、発達障害であろうとなかろうと、知的障害であろうとなかろうと、おそらく、カバーできる。

その「否定しようのなさ」は、たぶん、利用されている。「否定しようのない概念でしょ」と売り込みつつ、実際には、もうちょっと、特定の誰かにとって便利な概念として流通している。特定の誰かというのは、政府や大企業のようにも思える。他にもあるかもしれない。否定しようのなさが、反論を封じるために利用されてる、といってもいい。

全員を対象としない「ニューロダイバーシティ」

政府が現在推進しようとしている「ニューロダイバーシティ」は、意地悪な言い方をすると「突出した能力のある人」がその能力を発揮できるよう環境整備をしましょう、という、一部の人だけを対象としている考え方。それはそれで役に立つ場面はあるとしても、どう考えても、普遍ではないし対象者は限られる。カバーできない人が出る。

その意味でのニューロダイバーシティが便利なのは、政府にとってだけじゃないかもしれない。「能力のある人が、その能力を活かせる環境」というのは、わかりやすい。「能力があっても、その能力を活かせない環境」よりも、ずっといい。能力のある本人にとっても、その能力の恩恵を受ける周囲にとっても。

反論を許さないための「ニューロダイバーシティ」

で、いま何が起きているかというと。「ニューロダイバーシティは全人類に適用できる素敵な概念ですよ、ほら、否定できないでしょ」といいつつ、実際には、「ニューロダイバーシティの考え方に基づき、能力のある人がその能力を活かせる環境を整備していきましょう」という呼びかけが行われている。前者は全人類対象、後者は「能力のある人」対象。

「否定しようのない概念でしょ、という、一つの側面(人類全員に適用できる概念)を強調して反論を封じつつ、実際には別の側面(突出した能力のある人だけを対象とする概念)を流通させようとしている」事態に、わたしは、居心地の悪さを感じる。

個人的な物語としての「ニューロダイバーシティ」

わたし自身の個人的な物語は、「ニューロダイバーシティ」概念とたぶん、それなりに相性がよい。いろいろがんばってきた、でも消せない特性はある、その特性を、多様性の一環として受け入れてほしい、受け入れるのが当然な社会だといいな、そういう想いに合致する。

個人的な物語だから、否定されたくはない。否定されない安心感のためには、この物語を、普遍的な概念につなぐことができればとても都合がいい。だから、「神経のつくりという意味での多様性」、誰から見ても否定しようのない概念としてのニューロダイバーシティとつないでおきたい。そうすることで、わたし自身は安心できる。

「個人的な物語」がどう働くか

ここでわれながらめんどくさいのは、わたしの個人的な物語は、「能力のある人がその能力を活かせる環境を整備していきましょう」の呼びかけの実例としても機能してしまうところなんだと思う。能力主義の実例として提示したいわけじゃないのに、実例として機能してしまう。個人的な物語はその性質上、否定してなかったことにはしづらいから、実例としてはそれこそ都合がいい。

個人的には単なる(自分にとってだけたいせつな)物語であり、個人的という意味ではお気持ちでしかない。その一方で普遍的な概念に通じる物語でもあると思いたい。でも、都合よく宣伝され利用されているニューロダイバーシティのイメージにも合致するし、その論拠としてすら働くかもしれない。

もうちょっというと、自分自身の物語でしかないものが、普遍的な概念ともつながっている、と「信じたい」わたしの願いは、「突出した能力のある人」だけを対象としつつ普遍的な概念を詐称して反論を封じている政府?の目論見に、構造として似ている、とさえいえる。

その、「普遍的な概念を詐称して反論を封じている誰かの目論見と構造的にそっくり」であるという事実はわたしにとってとても居心地が悪い。だから、せめて、「反論を封じているわけではないんです」と言い訳したくて、「個人的な」物語でありまた「お気持ち」でしかない、と強調してるんだろうと、分析したりした。


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