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尾道一人旅(前編)

4月29日から5月2日まで、3泊4日で尾道に行ってきた。初めての一人旅。あまりにも良い旅だったので、記録として残しておきたい。自己満足で書く長文の記録に、良ければお付き合いください。

普段から一人で行動することはよくあるけれど、一人旅というものはこれまでしたことがなかった。初めての一人旅に尾道を選んだのは、なんだか丁度良いと思ったから。京都や大阪、金沢なんかのいかにもな観光地に行っても、私は計画を立てるのが苦手なので上手く楽しめないだろうし、普段から人が多い場所にいるのに、休みの日にわざわざ自ら人混みに行くのがなんだか嫌だった。尾道のイメージは猫と坂道の多い街。有名ではあると思うけど、派手でもうるさくもなく、地元の人と話せるような、そういう楽しみ方ができるんじゃないかと思った。ただ、期待しすぎてそれほど楽しめなかったら悲しいので「初めての一人旅だし何事も経験」だったり「そこまで楽しめなくても少しゆっくりできたらいいや」くらいの気持ちでいた。

一日目

東京は晴れていたのに、尾道はあいにくの雨。しかも駅に着いたときに太鼓の音が聞こえると思ったら、土日で四年振りの尾道みなと祭りが行われているとのこと。全く知らなかった。雨だし、普段よりも人が多くなるだろうし、あまり良くないタイミングで来てしまったかなと早々に思ったけれど、旅を終えて真逆のことを思うことになる。

本当はロープウェイに乗って千光寺に行こうと思っていたけれど、あいにくの天気なのでロープウェイは後回しにしてとりあえずお昼を食べる。尾道と聞いて「尾道ラーメン」を浮かべる人は割と多いのかもしれない。歩いていると見かける、いくつもの「尾道ラーメン」という文字。混んでいるところと空いているところの差が激しい。そこまでこだわりがなかったので、海沿いの空いているお店に入った。

尾道ラーメン

背脂が浮いている中華そば。私はラーメンには詳しくないので美味しいという感想しか言えない…(すみません)。お店によってかなり味が違うんだろうか。そのあとは駅前と商店街をぶらぶらと歩いた。メインステージで若い子達が吹奏楽の演奏をしていたのを少し観た。最近、一生懸命頑張っている姿を観るとすぐ涙が出そうになってしまう。まだ私も割と若いんだけどな。ステージを観たあとは、少し歩いて大宮湯という銭湯へ。あとから聞いた話だけれど、地元の人もなかなか行かない銭湯だそうで。銭湯に向かっていると、どんどん人気がなくなっていった。

創業は昭和2年らしい
番台のお爺さんに許可を得て掲載

漫画『風呂上がりの夜空に』で見たことがある、昔ながらの銭湯に初めて来た。番台のお爺さんから私の裸は丸見え。恥ずかしがっていると逆にもっと恥ずかしくなると思ったので、堂々と服を脱いで入った。このお爺さんも見ているのか見ていないのか絶妙にわからなくて面白い(一人で笑いそうになっていた)。銭湯に入ると、先客のお婆さんが色々と話しかけてくれた。正直言うと何を言っているか大半わからなかったけれど、人と話せたことが嬉しくてニコニコしてしまった。この時点で、私は意外とずっと一人は嫌なのだなと気付く。一人旅初日でまさかの事実。

かなり古い銭湯だったけれど、ジトジトした天気の中商店街をずっと歩いていたので、疲れが少し取れた気がした。銭湯から出たら、お婆さんに言われるまま脱衣所の椅子に座って扇風機に当たった(早く座れと言われたけれど流石に真っ裸は恥ずかしいので下着だけ着た)。

「若いけえ、そんなパンツ履いて」
「えへへ」
「気持ちかろう」
「はい」

色々とお話を聞いて、お先に失礼することに。また商店街まで歩いて、「一度つぎ」と宣伝されている生ビールを一杯だけ飲んだ。チェックインが17時からで少し時間があったので、喫茶店に入ってアイスコーヒーも飲んだ。「一人旅、かなり寂しい……」というのがこの時点での私の感想。

初日に泊まるゲストハウスに向かうと、オーナーさんとその知り合いの男性の二人がいた。お勧めのお店を色々と教えてもらい、ゲストハウスの中を案内してもらう。このオーナーさんの知り合いの男性と、この旅で長い時間を共にすることをこのときの私はまだ知らない(以下、Tさん)。

荷物を置いてお勧めされたラーメン屋さんに入ると、先ほどゲストハウスにいたTさんと遭遇して「ちゃんと勧められた通り来たんだ」と笑われた。店主の方もとても気さくで、お酒を飲みながら楽しく話した。このときまで基本的に一人だったので、人とちゃんと会話ができてすごく嬉しかった。このとき居合わせた女性のお客さんも近くで居酒屋をやっているらしく、次の日に行くと約束をした。

味玉とハートランド
里芋のゴルゴンゾーラとリモーネ

10時過ぎまで飲んだあとはTさんのお勧めのお店に向かう。一人だとかなり勇気がいるような場所にあったので、心強かった。暗い店内にお洒落な内装。すべて店主さんが作ったものらしい。ここの店主さんもずっとニコニコしていて、眼鏡が似合う素敵な方だった。

シードル
ビールが沢山あった

混んでいるときも多いらしいけれど、このときは店主さんと私とTさんのみ。「色んな日があってそれぞれの良さがあるけど、この静かな感じを初回で味わえたのは、良いタイミングだと思う」と言われた。静かだけれど、楽しい夜だった。

ハンモックに揺られていたらだんだんと眠くなってきてしまい、解散。別れ際にTさんから名刺をいただいた。ゲストハウスに着いたのはまさかの1時半頃。シャワーを浴びて死んだように眠った。初日終了時点で私の旅の満足度はかなり高かった。これだけ良い日を過ごせたのなら、後半が退屈でも許せるかもしれない。でも楽しいことはまだまだ続く。

二日目

二日目は晴れ。Twitterで知り合っていた人(以下、Aさん)と9時半頃に合流し、喫茶店でモーニングを食べた。

一日中モーニングをやっている喫茶店 今期初の早すぎるスイカ

昨日のことを色々と話していると、AさんはTさんの娘さんと親友だということを知る。このあたりから、みんなどこかしらで繋がっているという尾道のコミュニティをだんだんと実感することになる。

Aさんに尾道の色々な場所を案内してもらう。少し階段を登って、やっと坂の街を実感した。階段を登った先にある宿の従業員の方たちが、汗をかきながら何往復もゴミ出しをしていて、かなり大変そうだった。

古本屋さんや活版印刷ができる雑貨屋さんにも行った。古本屋さんでは短歌集を、雑貨屋さんでは活版印刷がされた可愛いデザインのメッセージカードを買った。

活版カムパネルラ
元診療所の古本屋 弐拾dB

お昼頃にAさんとは別れ、ロープウェイに乗って展望台へ。風が強かったけれど気持ちの良い天気だった。

猫の細道を通って下ろうと思っていたけれど、道が分からず普通に下ってしまった。でも良い景色が見れたので良しとする。お昼はお好み焼き屋さんで尾道焼きを食べた。砂ずり(砂肝)とイカ天が入っているのが特徴らしい。

この日は前日よりも人が多く、お昼を食べた後も歩くのが嫌になるくらい人で溢れていた。喫茶店に避難してアイスコーヒーを飲んだ。改めて、この旅ではコーヒーをよく飲んだ気がする。静かな喫茶店の音楽はかき消され、お神輿を担ぐ人たちの声がよく聞こえた。前日そこまで寝ていなかったこともあり、居心地の良い店内でかなり眠くなっていた。

この日に泊まるゲストハウスへと向かう。

共用スペース
基本動画ばかり撮っていたので写真がまったくない

尾道では空き家再生プロジェクト(地元の人は空きPと略していて面白かった)なるものが行われていて、ここもその一つ。本当はここでも色々な人との交流があったりするらしいけれど、私は基本的に夜中にゲストハウスに帰っていたので、ここでの交流はほとんどなかった。

少し休んでから、昨日会った女性がやっているというおでん屋さんに向かう。行ってみていなかったら、昨日もらった名刺を見てTさんに連絡しようと思った。でも、なんとなくもういる気がした。

お店の前を通ると私に手を振る男性が。

「待ってたよ」
「やっぱりいる気がしましたー!」

Tさんと合流。心が通じちゃったね。「また飲みたいと思ってたんだけどさ、昨日渡した名刺のメールアドレス間違ってたんだよね」と言われて、尚更タイミング良く会えてよかったと思った。初日に行ったラーメン屋さんやバーがいつも混んでいるのに空いていたり、このときタイミング良くTさんに会えたりと、少し雨女な代わりに私はこういう運が良い。店主の女性も来てくれて嬉しいと喜んでくれた。

おでん(ジャガイモとスジ) 筍ご飯 赤星

お昼にお好み焼き屋さんで会った女性にこのお店でも会って、尾道の観光施設の優待券をくれた。カウンターでみんなで話す感じが本当に良い。温かい空間。隣にいたご夫婦はこの日に帰るらしく、キャリーケースも持って来店していた。私がTさんと普通に話していたから尾道の人と思われたらしく「え!尾道の人じゃないんですか?!馴染み過ぎててわからなかった」と言われたことが、なんだか少し嬉しかった。

昨日行ったラーメン屋でラーメンを食べなかったので食べたくなっていたけれど「どうせなら行ってないお店に行った方がいい」とTさんに言われ、確かにと思いながら別のお店に向かった。これがまた良い選択だった。

お通しとビール

ここの店主の方もとても気さくで面白い方だった。尾道でお店をやっている人たち(少なくとも私が行ったお店の人たち)は、みんな本当に優しくて気さくで素敵な人たちばかりだった。たまにスナックをやって女装をしているそうで、ボブのウィッグをつけた写真を見せてもらった。

ここのお店には福山から着た女性と、東京から来たカップルがいた。カップルの女性の方は私と地元がかなり近かったし、今も東京に住んでいるそう。このお店の前に行ったお店の店主さんにお勧めのスナックを聞いたそうで、「みんなで一緒に行きませんか?」と誘ってくれた。

行ったお店はスナックというより高級ラウンジのような見た目だった。地元の方と初対面の私たちみんなで乾杯をした。

動画の切り抜き

私たち若者が懐メロを歌う中、地元の方やスナックのママは最近の曲(新時代とか)を歌っていて、その逆転が面白くてずっと笑っていた。松山千春を歌う男性にみんなで「よっ!千春!」なんて言ったりして。本当に楽しい空間だった。この日も2時近くまで飲んだり歌ったりしていた。このときに聴いたキョンキョンの木枯しに抱かれてがずっと耳に残っている。「私手がでかいから拍手が上手いんです」とか言って自慢しながら、何人分も拍手をした。歌声を褒められたことが嬉しくて気持ちよく沢山歌ってしまった。

カップルの女性の方がすごくノリが良くて盛り上げ上手で。こういうのって誰もがやろうと思ってできることではないから、一種の才能だと思っているのだけど、それに反して私は「なんでそんな冷めてるん?!」「落ち着きようが半端ない」なんて言われていた。私としてはかなり盛り上がっていたしテンションも上がっていたつもりだけど、それでも冷めているように見えるのかと不思議だった。良いことなのか悪いことなのかわからない。

Tさんは私の父と同じくらいの年齢なのだけど、帰り道で何故か「(カップルの女性の方の話をして)ああいうのって才能だし、良い面悪い面あるから。人にはそれぞれ良い部分があるよ」なんて言われた。二軒目で仕事の話をしたりして、私が少し暗い発言をしたこともあって「もしかして励まされてますか?」と笑っていた。

昨日と同じラーメン屋さんに行っていたら、スナックの人たちとは出会えていなかったし、この会話もなかったし、こんな夜も過ごせていなかった。そんなことを実感する旅の前半が終了。後編へ続く。

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