【書評】『研究を加速するための8か条 これを知るだけで研究者としての成長スピードも上がる。』を読んで【基礎教養部】

この本を読みながら思ったことを、書いていこうと思う。

第一条 スキルだけで満足するな

ある特定の分析装置で数値を出すことがうまくできて、(半ば予想された通りの)結果と考察が得られたからといって、その学生が本当に今後、自律的に研究を進められる能力を持っているとは限らない。単に、「その測定装置がその時うまく使えたから」というだけかもしれない。

これは教育での評価においても同じことが言えると感じた。ある問題が解けたであったり、ある試験でこれぐらいの成績を取ったからと言って、ほんとうにそれほどの実力があるのかは分からない。教師は、模試の場合は、究極的に模試の結果など参考にならないなどと言うことがあるが、学校の成績に関してはなぜかそういうことを言われないことが多いような気がする。試験だけではない。普段の授業においてもそうだ。個人的に一番ひどいものとして「考える」というものが挙げられると考えている。授業で生徒が考えるということを重視して、その場を設けるが、設けている時点でそれは考えさせているにすぎない。それにもかかわらず、生徒が考えることができるように工夫しているなどといったものであふれている。方針や姿の提示しか教師にはできることはなく、それによって生徒がどうなるかまでは手を出すことができない。それにもかかわらず、あたかもそこまでも調整できると思っているような言動が多いのは非常に問題だなと感じる。教師ができることが何なのかを理解し、それをもとに考えていくことが教師たる者の務めなのではないだろうか。

第3条 がむしゃらにも頭を使え

最初に、「何を知りたいのか」を考え、そして「それを知るためにはどうすれば良いか」を考える必要がある。

これは非常に大切なことだ(学部生にとって)。現在大学4年生で卒論に手を付けているのだが、最終的に知りたいことは教育研究部で共有しているようなものであるため、それをもとに研究しようとするとしんどいことになってしまう。教育研究部で研究とは違うことをしているので、研究では、分解してもう何段階か初歩的な知りたいことを探し、それからどうすればいいかを考えなければならないと再度今なっているのでそうだよなと思った。

全体を通して

3人に助言をもらってこの内容なのかと驚いた。全体を読んでからもう一度タイトルを見てみる。『研究を加速するための8か条 これを知るだけで研究者としての成長スピードも上がる。』。8か条とはあるが、8か条目が単なるまとめでしかなかったのでどうなんだろうと思った。何選などといったことが書かれている本でも、似たようなことが書かれていたり、それをわざわざ入れる必要があるのかレベルのものが入っていることはあるが、単なるまとめが入っていることはなかったので非常に驚いた。

また、この本が想定している層は「特に、これから学位を取ろうとしている学生の方々や、学位取得間もないポストドクター(ポスドク)や助教の方々、これまで長い研究活動で少々「疲れてきた」シニア研究者の方々、そして中堅世代の方々」となっているが、この内容的にためになるのはよく言って修士までだと思う(修士が自分を振り返るのに少し役立つ程度)。研究室で学部生に助言する程度の普通の内容に少し未来の展望まで含んだものというのが適切だと感じる。博士以上でもこれができていない人がいる可能性はあるので、意味はあるのかもしれないが、そうであるのであれば、文章の書き方などが不適切なのでよくないと感じる。少なくとも加速などこの内容ではできないと思う。

この本が対象とするような人間(研究者)が本当にどれほど存在するのかが非常に疑問である。正直、対象を自分で作り上げている感が否めないが問題はそこではない。問題だと感じるのは、研究者界隈すらこのようなビジネスの対象に入ってきているということだ。

タイトルはしょうがないとして、対象が学部生、修士課程で、note記事であればよいのではといった本だった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?