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YETTO & カンノアキオ「good driver -Summer Damn’23-」を野暮ったいくらい言葉を尽くして説明③

前回記事はこちら。

YETTO & カンノアキオ「good driver -Summer Damn'23-」という楽曲で私は64小節ラップしていて、このnoteではそれを16小節ごとに区切って歌詞解説しています。今回は17~32小節箇所です。この16小節のテーマとして、配達員で働くことの怒りとか不満とか不甲斐なさ、そしてそれによって自分たちが社会にどう搾取されて…という楽曲の大きいテーマがあったうえで、「とはいっても、この仕事しかできなかった」という気持ちも同時に存在していたので、それを歌いたかったんですよね。では歌詞を見てみましょう。

幸か不幸か 社会不適合者
業が深いなら go to the pickup
コミュニケーションは「こんちわ~」のご挨拶
conversationの合計2分半ゆえ
働ける 合間にラップ蹴る
アイデアが出る 明大前
kick the pedal 汗かっとばす
溜まるストレス 買えぬジェットバス
働き続ける U-berイズム
金稼ぐことだけが この美学
比較してしまう 売れていったアイツ
辞めていったアイツ 美味しいアイス
休憩したなら 上へ下へ
1日の累計 100キロ前後で
1万円くらい You know what I’m saying?
まぁ、これも俺の選んだ道かもね

16小節目の最後の歌詞が「個人事業のサービス業」で終わってるので、韻の連なり的に「ou」の音で始まりたいという思いがありました。改めて歌詞を見てみます。

か不か 社会不適
が深いなら go to the pickup
ミュニケーションは「こんちわ~」の挨拶
conversationの計2分半

「ou」または「o」の音を太字にしてみましたが、結果的に頭韻を意識したラップになったので、この4小節はかなり勢いがあるものになりました。そして冒頭に書いた「この仕事しかできなかった」気持ちが溢れ出ている4小節だと思います。ほぼ会話はしない。ずっと自転車を漕いでるから運動にもなる。で、お金がもらえる。「これしかできなかった」と「こうやって搾取されていく」の狭間の気持ちです。

配達の仕事はずっと考え事ができるんですよね。で、当然「この曲をどうしようかな?」と自転車を漕ぎながら考えるわけですが、突然、RHYMESTER「B-BOYイズム」の歌詞が浮かびました。

「kick the verse」の部分を「kick the pedal」に変えられるな、と思ったらこの「B-BOYイズム」引用箇所は30秒くらいで歌詞が全部できちゃいましたね。「B-BOYイズム」と自転車配達の相性はすごくいい。そして、この箇所のサックスは、私の意図を汲んでくれて「B-BOYイズム」のイントロを吹いてくれています。ありがたいですね。

まぁ、早く配達員生活を脱したい思いはあるんですが、なかなか生活的にそうもいきません。その間にも音楽で売れた友達もいれば、音楽をやめた友達もいます。そういうシリアスに自分の人生や将来のことを考える歌詞になるかと思いきや「美味しいアイス」と歌ってスカしたのち、ただただ1日100キロくらい自転車漕いで、1万円くらい稼いで、「稼ぎが落ちたなぁ」と嘆きつつも日々生活するしかないことで締めていきます。自分のできること、できないこと、やりたいこと、やりたくないこと、能力、資本、環境、状況…。いろいろ考えて、そして考えないで行動した結果、「まぁ、これも俺の選んだ道かもね」になっていきました。

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