見出し画像

土曜の夜なんてみんなそんなもん

他の20代男性同様、生活力が皆無のオワコンな暮らしをしている。そろそろ夕飯でもと思い、ヨッコラセと冷蔵庫を開けた。案の定、オイコスとザバスしか入っていない。おかしい。一回閉めてもう一回開けても同じだった。冷蔵庫が人工タンパク質で埋め尽くされている。絶望的。

***

土曜日の夕飯にUber Eatsを使うのもみじめなので、近くの魚屋に行って1200円のマグロのカタマリを買ってきた。店を出る時に、魚屋のおっちゃんに「はい、どうも」と言われたので「オウヨ」と答えた。買ってきたマグロはぶつ切りにした。最近買った包丁の切れ味がいい。主食は冷凍庫の中にあった。何週間か前に冷凍しておいた玄米と白米の混ざったご飯。レンチンしてサランラップに包んだまま割り箸で食べた。少し変な匂いがした。ボソボソした。ちょっと残した。「食べた」と言うより「食った」。「丁寧な暮らし」が北極なら僕、南極。

***

その後に何気なく冷蔵庫をのぞいた。少し前に友人からもらったワインがあった。土曜日の夜に一人なので意味もなく飲んだ。家で酒を一人で飲むことはほとんどない。普段暮らす部屋が非日常空間になった。酔っているだけだ。嬉しくもあり、残念でもあり。高揚してきたので、文章を書くことにした。酔いながら文章を書いてもロクなことにならないと頭ではわかっている。ただ、その頭がバグっている。デジタルタトゥーまっしぐら。

***

ここまで書いて少し酔いが覚めた。今一口ワインを追加。今日は朝目覚めて少し仕事をした。昼からは大学院の友人(留学生)に韓国語のレッスンをしてもらった。チンチャケンチャヌセヨ?『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』あれ面白い。その後、有志で企画しているイベントの打ち合わせをした。消費以外の活動をしないと心は割とすぐに病んでしまう。打ち合わせ終了後、そのままカフェでデカルトの『方法序説』を改めて読んだ。彼の近代合理性と比べて今の私はどうだろう。恥ずかしくて頬が赤くなった。おそらく酒のせいである。

***

今日の夜は元々親愛なる諸先輩方とご飯に行く予定だった。しかし先輩の一人が体調を悪化あそばせ、リスケあらせられた。インフルの後遺症が続いているらしい。お大事に。土曜日の夜を一人で過ごすのは意外と久しぶりかもしれない。ましてや土曜日の夜に文章を書くなんてこれまであっただろうか。クソ雑な暮らしをブチかまし、挙げ句の果てに酒飲んで、一銭にもならない駄文を一人で製造している。なんですかこれ。バケモノですか。

***

それでも「土曜日の夜ってみんな永遠に続いてほしいって思ってるよな〜」なんて、凡庸でダサい発想が出てくるから余計に救いがない。でもまあそうでしょう。平日は忙しく働き、束の間の安息を金曜日と土曜日の夜に求める。体調がよくても悪くても。一緒に過ごす人がいてもいなくても。ビバ・労働者。永遠を信じてどことなく気を紛らわせながらキーボードを叩いている人間もいる。土曜の夜なんてみんなそんなもん。

サポートしていただければ嬉しいです。さらなる執筆活動に投資します!「いいね」だけでも最高に嬉しいです!