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備前焼でビール!のススメ

備前焼でビールを飲む、という話。

ご存じの方が多いかと思いますが、備前焼とは、岡山県が誇る伝統的な焼き物で、瀬戸焼や信楽焼などと並んで、中世から続く6つの伝統的な焼き物、六古窯(ろっこよう)に数えられています。色は、茶色や黒灰色のものが多くて、厚手で無骨なフォルム。個人的には好みにバチッと合ってて、愛着のある器であります。

私の地元でもある岡山には、備前焼を使ってお酒が飲めるお店等も結構あるわけですが、特にビールとの相性がいいよ、というのは前々から言われている話です。

まず、備前焼とビールの相性で一番よく言われるのが、泡。

きめ細かいクリーミーな泡が立って、楽しめる。表面のザラザラのおかげです。備前焼が属するのは、焼き物の中でもセッ器という分類で、釉薬を使わない器です。この釉薬というのは、陶器や磁器に使われて、表面をツルツルにするガラス質のこと。釉薬がないので、備前焼の表面は細かい凹凸が沢山あり、ザラザラしています。そのおかげで、備前焼に注いだビールは細かい泡が立って、サーバーで泡付けしたかのような、クリーミーな泡が楽しめます。

泡が細かく立つというのは、当然、その分だけビールの炭酸ガスが落ち着くということ。まろやかでまったりした味も、備前焼ビールの特徴として挙げられます。

もう一つは、保冷性。一般的なグラスと比べて、中に入れたビールを冷たく保つ作用があります。これは、備前焼というのが、そもそも普通の器より厚手であるということと、材質として目に見えないような細かい空洞が無数に空いているので、内容物の温度が変わりにくいということのようです(空気は比熱が大きい)。

上記で挙げた、泡立ちや保温性の性質って、クラフトビールを楽しむにも良い特性だと思っています。例えばクリーミーな泡でまったりした味を楽しめる、というのは、ブリティッシュビターやスタウト等にもうってつけの性質だと思います。保冷性は、例えば事前に瓶・缶を冷蔵庫から出しておく等して、スタイルごと適した温度で楽しむ、というのには長けていると思います。

せっかく岡山の器ということで、岡山県岡山市の宮下酒造さんが出されているクラフトビール、独歩と備前焼を合わせてみました。

シュバルツ / 独歩

独歩ビールの定番銘柄、シュバルツを、備前焼のビアマグに入れてみました。前から使っているマグと合わせてみます。

この銘柄自体、すごく香ばしいビールです。器が広めの口なので、余計香りが立つというのもありますし、香ばしさの中に甘さを思わせるような感じも得ました。

泡は期待通りというか、細やか、かつ、ふかふか。泡のフォームとも相まって、一種カフェオレっぽい印象も受けます。

口に含むと、ほのかに甘いのですが、焦げ感とローストっぽさが鼻抜けして、焙煎味を感じます。他のブルワリーのシュバルツにはシャープな感じの銘柄も結構あると思うんですけど、独歩のシュバルツは元々風味と味をしっかり楽しませるタイプ。まったり楽しむという点で、こういうマグでの飲み方もありだと思います。

ゴールデンエール / 独歩

独歩を作っている宮下酒造さんの、会社設立100周年を記念した銘柄です。

これは、備前焼作家・恒枝直豆さんによるビアマグと合わせてみました。ちょっと外側に反った口の作り、朴訥な、緩い曲線のフォルムが特徴的なビアマグです。

このゴールデンエール、香りはノーブルホップかな…というような、落ち着いた草花系でした。香ばしさというよりは、軽快に飲める爽やかさが全面に出てて、ちょっとリンゴ果汁を想起するような感じもあります。

恒枝さんのビアマグも、口が大きく空いてて香りが見えやすいのと、あとやっぱりフォルムゆえに、握り具合が心地よくて良い品でした。

他の銘柄なんかも入れて試してみたいと思います。

ここ数年で出版されている「クラフトビールの楽しみ方」みたいな本を読むと、グラスは透明なものでスタイルごとの外観を楽しみましょう、等と書いてあります。

基本的なあり方として、勿論、本当にそうなんですが、たまには伝統的な器に注いでビールを楽しむというのも、彩りがあって乙なんではないでしょうか。

ビールの色は見えないのだけれども、それが見えない分、普段意識しない部分の感覚に注意がいくというのも、ビール体験の一種だと思います。楽しんで参りましょう。

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