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【小説】AI教祖

「宗教というものは人を救う時もあるが、人に利用され人を害する時もある」
「なるほど、博士、それで今回のAIを作ったというわけですね」
「そうだ、たびたび起こるのは教義の修正、改革である。そのせいで元々の教えから全く違う物になって、そして宗派で対立が起き人が害されるのだ」
「宗派を分裂させないように、不死のAIに教祖を任せて、平和を維持させるとは、全くいい考えですね」
博士と助手の前には大きな精密機械があった、これがAI教祖なのだろう。
「しかし、博士、こんな大きな機械に人はついてきますかね?」
「うむ、手はうっている、そこで、このロボットを仮の姿として使う」
博士が見せたのは、聖人のような美しい気風が漂うロボットだった。
「なるほど、博士、これは私もついていきたいくらいです」
かくしてAI教祖は仮の姿を使い、布教を開始したのだった。
最初は苦難の道だった、既存の宗教に属している人々、無宗教の人々は、教祖をカルトだ、ひどい物だ、と言ったり、暴力を振るったりしたこともあった。
しかし、教祖には布教プログラムがあり、抵抗などはしない、ただ優しい、神から貰った言葉を皆に説くのだった。
いつしか人々は回心し始めて、その教祖についていった。
何百年も経っても教祖は生きており、教祖は年も取らず、人々に教えを説いていた。
そのため、教義が変わる事もなく宗派が分裂する事もなく平和な日々が流れていた。
AI教祖の宗教は全世界の人々が信仰する宗教になった、実際、奇跡として教祖が不老不死なのだから。
ある日、教祖はいつものように教えを説く、人々は周りに群がり教祖様の体に触れる、中には泣く者もいた。
皆は四方八方から教祖を押すような形で触れていた。
教祖はその圧力に耐えかね、故障した。
教祖は白目になっていて若者の一人に倒れ込んだ。
皆は、天国へとお帰りになられた。
と言い泣いていた。
若者は天の言葉を聴いたと新教祖を自称したが、それに対して前教祖を完全なる者として新教祖を認めないという者が現れ、前教祖は復活すると予言する者も現れた。
こうして博士のロボット一体しか準備していないという、おっちょこちょいで世界は分裂し始めてAI教祖本体は今も地下で考えている。

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