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こたつタイムマシンブルース

最近、1週間が早すぎる。


1週間どころではなく、1ヶ月も早過ぎるし、なんなら1年も早過ぎる。
高校3年間と、直近の3年間が、同じ期間だとは到底思えない。明らかに早まっている。

もしかして、地球が回る速度が、徐々に早まっているのだろうか。地球が回る速度が早まっている、ということは、重力が小さくなっているはずである!と、意気揚々と体重計に乗ったが、むしろ大きくなっているようだった。


こんなもの、そこそこ人生を生きている人間なら「年取ったな〜」で済ませるものなのかもしれない。しかし私は、そんなふうにすぐに受け入れられないのである。同じ時間を過ごしているはずなのに、損している気持ちになることを、当たり前のように受け入れている人たちは、あまりにも達観し過ぎていると思う。人間であることを受け入れ過ぎている。


私の時間は早まったりしない。赤ちゃんの1年と同じ1年を、過ごしてみせる。そう、思っていた。

しかし、最近いよいよ自分を誤魔化せないほど、時間の流れが滝のように早い。

あんなにも苦しかった夏の終わりも、最近では「夏ってもしかして、来年もくるのでは?」ということに、気付きはじめている。
先輩に子どもが産まれたのは去年の2月だった。いつの間にか彼女は、もう立ち上がって話し始めているらしい。彼女が歩んだ感動的な一歩一歩を、私は無表情のまま5段飛ばしで進んでいる。

絶対に調べたくはなかったのだが、もはや、なすすべもなく、この現象について、Safariを開いた。
ネットによる情報では、この、年をとると時間が早まって感じる現象を、「ジャネーの法則」と呼ぶらしい。

さらにそこには、「0歳から20歳までの20年間と、20歳から80歳までの60年間の体感時間は同じである」ということが書かれていた。



体感では、とっくに人生の半分が、終わっていやがったのだ。

もう、今すぐにでも、ジャネーの胸ぐらを掴んで、「そんなことに気付くんじゃねぇよ!」と殴りかかりたい気持ちになったが、外はあまりにも寒過ぎるので、仕方なくこたつでぬくっとして気持ちを鎮めた。


もう、こうなったら、この限られた人生を切実に、大切に、生きてみせよう。太く、短く、ロックンロールだ。
私はまだ、現実を受け入れられないままの身体で、泣きながら立ち上がった。


しかし、やはりあまりにも寒過ぎるので、とりあえず、今日のところはこたつでぬくっとすることにしよう。


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