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洋服のクロスオーバースタイル

車でも時計でも、住宅でも料理でもクロスオーバースタイルは存在する。洋服ももちろん存在する。人間は欲張りで飽き性なので1つの物で多様な価値観を満たそうとするのだ。

クロスオーバースタイルとは、異なる要素がお互いの境界線を超えて混じり合うことだ。クロスオーバースタイルを用いた洋服に対して、今回は考察したい。

クロスオーバースタイルは1粒で2度おいしい

それがクロスオーバースタイルの特徴。

車で例えてみよう。

昨今流行りのSUV。自動車メーカーは猫も杓子もSUVで、多数が販売されている。

ただ、純粋なSUVは数えるほどしか無く、代表的なのはJeepのWrangrerだろう。

悪路を走破する機能性、頑丈なボディとシャーシ。SUVのオリジナルとも言える車種だ。

ただ、燃費も悪く、インテリアも簡素、乗り心地に関してはお世辞にも良いとは言えない。

そこで欲張りな人達に向けてクロスオーバースタイルだ。

トヨタのCH-RはSUVとクーペのクロスオーバースタイルだ。無骨なSUVにスポーティな流線型のスタイルを加えて、更にハイブリッドや小さめのサイズにした、街乗り特化のクロスオーバースタイル。

流行りのSUVには乗りたいけど、あんまり大きいと運転しづらいし、燃費も悪いとなあ…

と言う欲張りなユーザーの求める価値観を埋める、まさに1粒で2度おいしいを狙う車種だ。

時計で例えてみると、純粋なモデルはかのロレックスに多い。大人気のサブマリーナやエクスプローラーなどは純粋な機能美であり、余計な物は何も無い。

ダイバーや登山家、パイロットなど過酷な環境に身を置くプロフェッショナルに向けて作られた究極の実用品だ。

一方で時計のクロスオーバースタイルの代表格はウブロだろう。ゴールドケースにラバーベルト。複雑で先進的な機構に、宝飾品のニュアンスもあり、デザインはスポーティであり、ラグジュアリーだ。


こういった具合に、様々なモノにクロスオーバースタイルは存在する。もちろん洋服にもだ。

クロスオーバースタイルの洋服は便利なコピー商品だ

先に紹介した様に、純粋な商品と言う物は車でも時計でも洋服でも存在する。

セレクトショップのオリジナルなどに多く存在するのだが、例えば、ストレッチの入ったデニムを例に挙げてみよう。

言わずもがな、デニムのオリジナルはLevi's501だ。時代によって誤差はあるが、14オンス前後のインディゴデニムを用いた5ポケットデザインで長い時を経ても大きなデザインの変更もなく、完成された機能美だ。

ただ、欲を言えばシルエットはトレンドへの時代対応をしきれていなかったり、お世辞にも履き心地が楽とは言い難い。

そこに化繊や加工を入れたストレッチのデニムが存在する。デニムに実用性や利便性を加えたクロスオーバースタイルだ。

本質を求めない欲張りなユーザーは表面的な雰囲気とストレッチと言う利便性に「ひと粒で2度おいしい」魅力にやられてしまう。

ダウンジャケットで考えてみよう。ダウンは本来アウトドアウェアで、高い防寒性と天候変化にも対応出来る撥水性のあるナイロン素材で作られるのが一般的だ。

だが、昨今ダウンジャケットでもクロスオーバースタイルは存在する。タウンユースとして、ダウンの容量を減らし、表面素材をウールやツイードに張り替えたものだ。

アウトドアウェアの防寒性ときれいめな見た目、必要以上の防寒性は省き、タウンユースとして扱いやすい。

そのような商品が多数存在する。いや、むしろストレートな本物より、そのような商品の方が多いだろう。

本物に対して、消費者の欲張りな欲求を加えてクロスオーバースタイルになって行く。

それはアイディアによっては革新的なのかもしれないが、陳腐化するものも沢山ある。そして、都度本物に回帰する。要するにトレンドのようなものなのだろう。

まとめ

元々は何事においても、どんな物にもルーツや元祖がある。本物がある。

だが人間の欲求は果てしなく、それだけでは満足しなくなってしまう。様々な機能性や面白さ、新鮮さを加えて、本物を時代に合わせてアップデートしていったり、時には真逆の要素を加えて、そもそもの機能性や役割が希薄になるほどの変化を加えていく。

ただ、結局は原点回帰するケースが大半で、やはり本物は強い。一時の新鮮さや面白さも大事だと思うが、本物を知り大事にすることは何より大事なんだと思う。

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