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日本人は目に「見えるもの(ハード)を作るのが得意」、外国資本は「目に見えないもの(ソフト)を創るのが得意」って構図、いつまで続くの?

おはようございます。たつや学長です。

西武ホールディングスが資産売却のニュースが2月半ばにあった。

西武ホールディングス(HD)は、ホテルやゴルフ場、スキー場など31施設をシンガポールの政府系ファンドであるGICに売却する。売却額は約1500億円、売却益は約800億円となる見通し

僕は2つのことを思った。

高値で掴まされ、安値で売却の苦い経験

1つは、ニューヨークのロックフェラーセンタービル。アメリカの象徴とも言われるビル施設。

大統領のクリスマスツリーの点灯式はロックフェラーセンタービルのことが多い

1990年前後のバブル後半に三菱地所が購入した。しかし、設備は古く修繕費用が当初想定よりかかることが見込まれたことに加え、足元でバブルが崩壊したことで購入価格よりかなり安い金額で売却したと言われている。

まんまとしてやられた、と見えなくもない。

「またか?!」

西武の資産売約のニュースを聞いて、最初によぎったのはこのこと。

しかし、売却益が800億円出てるようなので(おそらく売却資産は価値の最大化ができていないだろうから、これでも割安なのだろうけど)、多少ホッとした(株主でもないけどw)。

今回の西武に関してもそうだし、長銀(現新生銀行)を買収したリップルウッドにしてもそうだけど、日本以上にリターンにシビアな外資のファンドが買うということは、利益を出せる公算が高いとみているのは自明。結果、日本人が持っていても宝の持ち腐れって構図になっちゃってる。

日本人は自分勝手で全体最適が苦手?!

日本人の街おこし(パリ、ラスベガス、ベネチアなどのように、客を継続的に呼び寄せキャッシュを産むような)の下手さ加減。

これまで日本の街おこしで成功した例は本当に少ない。しかし、ゼロではない。

ポイントはなんなのだろうか?


成功事例を見ると、どうやら(旅館など)単体ではなく、街を全体として統一感を持ってデザイン(エンタメ性向上など)することにありそうだ。

例えば、北海道ニセコリゾート。

ニセコは素晴らしい雪質とスキーリゾート施設があったがスキー人口の減少などで経営は青色吐息だった。

ニセコ東山プリンスホテルに随分前に泊まったがあるけれど、ゲレンデの真前にタワーホテルが立地していて、またとない素晴らしいロケーションだった。

現ヒルトンニセコビレッジ

しかし、これもヒルトンに売却され、今では、

「ワールドスキーアワード2013・2014・2015・2016」ジャパン・ベスト・スキーホテル部門最優秀賞受賞をするほどに評価されている。再生されたのだ。

キッカケは、現地に住んでいたオーストラリア人が、ニセコの雪質の良さやリゾート全体としての素晴らしさを故郷の人々に発信したことと言われていて、以降オーストラリア人をはじめ、オランダ人、中国人旅行客が詰めかけた。

ここに目をつけた外国資本が不動産投資をしたことで地域全体も息を吹き返した。

ここで思うんだよね〜。なんで日本人ができないのって。

竹下元総理がバブルの頃(30年以上前!)にやった、、ふるさと創生という名の税金のばら撒き。

地方自治体は、受け取ったお金を「箱もの(=公民館や橋など)」に使った。ひどい自治体は、誰も行かない山の頂上に変なオブジェを作った。

こうして作られた建造物が現在どうなっているかは、皆さんご存知の通り(朽ち果ててる)。

大量のお金が空中に消えてるってことだけど、問題はそれだけに止まらず、僕らの子供や孫の世代に負の資産として残すことになる。だって取り壊すにもお金かかるでしょ?

こういったお金の使い方を見ても、日本人の全体感のなさ(弱さ)を感じる。もし、個別の自治体の首長に(お金の使い道の)アイディアがないなら、隣の首長たち連合で「半永久的に価値を生み出す投資は何かないか?」って考えたらいいと思わない(「できない」もっともらしい理由はたくさんあるんだろうけど)?

中にはアイディアが浮かばずに、純金を買った自治体もあるみたいだけど、こちらの方がよほどマシ(でも個人主義だけど)。

欧米人は個人主義、
日本人は全体主義ってよく聞くけど、

僕は、

「それホントー?」って疑問に思ってる。

どこで感じるかっていうと、例えば移民の団結力と助け合う心。
海外に住むと肌で感じると思うんだけど、

イタリア人はリトルイタリー(街)
韓国人はコリアタウン
中国人はチャイナタウン
インド人はリトルインディア
※L.A.のリトル東京の日本料理店の多くは韓国人経営と聞く

などを形成して、同じ国から来た移民同士助け合おうぜ、という意識が強い。

理屈から言えば当たり前に感じるけど、でも日本人はちょっと違う。

もしかしたら海外で目立つ日本人って、「駐在員が多い」からかもしれない。その国に骨を埋めて生きようとする人たちと、会社のお金で守られ、腰掛的に住んでいる人たちの違いってこと。

だから助け合いも会社単位になってるのかな。


脱線しちゃった。
話を戻して西武のお話。

軽井沢。

東京まで1時間半の好立地。
今回の売却資産に含まれるのかどうかは不明だけど、ちょっと考えてみよう。

駅前の一等地にはアウトレットがある。しかし、7割が買い物をしないという統計があるみたい。

それじゃ、お金が出ていくだけで、生み出してない(家賃収入だけ?)!

軽井沢アウトレットモール

そして8つのプリンス系ゴルフ場。
大体12月から4月初めまでの約半年は雪のためクローズ。これでは資産が寝てる期間が長すぎる。ROAが悪いってことだね。

軽井沢駅を中心に点在する8つのゴルフ場

ここも普通に考えれば、

例えばアウトレットの規模を半分にし、
ゴルフコースを1/4に(残したコースのプレーフィーを3倍にして※)した上で、

※それでもプレーしたいと思わせる魅力を(ゴルフコース単体ではなく)街全体で創造する

高級ホテルやエンタメ施設を建設して、かつ街並みに特徴と統一感を持たせたら継続的に客を呼び込めるのではないだろうか。

今回の西武HDの引受先がシンガポールのファンドと聞いて、思い出したのが、

マリーナベイサンズホテル


僕が2006年頃にシンガポールに出張した際には、まだ影も形もなかった。観覧車もなかった(と思う)。

マリーナベイザンズホテル建設前



聞くところによれば、シンガポール建国の父、李光耀(リークアンユー)が息子にその地位を世襲する際のお土産が、マリーナベーサンズ一帯のリゾート開発プロジェクトらしい。

建設後

集客するための重要なポイントの一つは、

「〜といえば、〇〇」

といった誰でも覚えやすいシンボル(キャッチフレーズ)。

例えば、

カジノといえばラスベガス
おしゃれなカフェといえばパリ
ワイナリーといえばナパ・ソノマ(北カリフォルニア)
ベンチャー企業といえばシリコンバレー(北カリフォルニア)
水の都といえばベネチア
ココアと言ったら森永(ちょっと違うかw)

それまでシンガポールといえば、

  • マーライオン(ちょっとローカル)

  • シングリッシュ(シンガポール訛りの英語のこと)

  • Fine City(綺麗な街と罰金をかけたもの。チューインガムは輸入そのものが禁止されていてゴミをポイ捨てしたら罰金。なので街は綺麗なわけ)

  • 駐在員が人口の30%いた


くらいのもので(僕の限られた認識です)、一般インバウンド客を呼び込むにはインパクトは薄かった。

それが、

出典:マリーナベイサンズホテル公式HP

マリーナベイサンズホテルのインフィニティープール


はかなりの集客力になったんじゃないかな。

そういう点でもう一つ気になる街がある。

それは熱海。
僕の両親は十数年住んでいた。

街並みはまさにモナコにそっくり(と僕は思う)。

モナコ

街は海に面していて、急峻な山がすぐ迫っている。家や建物は斜面に立っていて、それら建物からの眺めは絶景。

モナコには世界の富豪がセカンドハウスを持っていて、高級ホテル、カジノ、マリーナなどがある。

最寄りの空港は、コートダジュール。そこからは最短時間でモナコに入るにはヘリコプター。たった15分。確か250ユーロくらい(当時)だったと思う。

コートダジュールからモナコまで15分のフライト


もちろん鉄道もある。モンテカルロ(モナコ)駅からニース駅まで14キロ。

モンテカルロ駅


一方、熱海は東京から新幹線でわずか40分あまり。

脚の便はめちゃくちゃいいし、温泉も出るし、海の幸は美味しいのに、多くの旅館は閑古鳥が鳴いている(コロナ前から)。最悪の時期に比べれば、だいぶ観光客は戻ったと聞くし、ポツポツと新しい宿泊施設ができてるけど、あくまで部分的。

だから寂れてる感が相変わらず。

「壊れた窓理論」って聞いたことがある人も多いでしょ?
窓が割れたまま放置されているビルは、人の目が届かないというサインを発しているので、他の窓も壊される。落書きもどんどん増える。
治安も悪化する。

寂れた雰囲気の街に、お金持ちが積極的に集まるだろうか?
寂れた街でお金を使おうと思うだろうか?
使うとしてもせいぜい、干物や漬物といった少額のものばかりで、これでは市の財政を潤すには至らない。

観光地版「壊れた窓理論(負のスパイラル)」で、地方財政のパイとしては、広がらない。

熱海


だから、街全体として統一感を出して取り組む必要がある。

例えば、

  • 埼玉県川越、神戸旧居留地、岐阜県美濃のように街並み(建物)に統一感を持たせ、

川越の街並み


  • 街の活気を増すために、旅行客が街を闊歩するような仕組み(単一の旅館内で完結するのではなく、他の旅館に足を伸ばして何かを楽しめる仕掛け)を創り、

  • 温泉まんじゅうを卒業し「(個別企業ではなく地域全体で)熱海といったらこれ!」といった高額な特産品を開発する

  • インバウンド客を意識し、彼らがまた来たいと思うような歓楽街(日本は東京を含め、大人が夜遊べるところが少ないと言われている)を創る

  • もし旅行客だけでなく、外国人駐在員や企業を誘致するなら、上記に加えて

    1. インターナショナルスクール(子供のため)、

    2. 英語圏の人たちのコミュニティー(奥さんのため。専業主婦がノイローゼになって帰国する駐在員は少なくない)、

    3. 広い駐車場完備のスーパーが必須

  • これらを整備した上で、経済特区なども検討価値があるかもしれない

    個人的には、モダンジャパネスクな街に変貌したら、面白いと思うんだよなあ。

ぜひ日本人の手で抜本的・全体的なシティデザインをした、世界に冠たるATAMIになってほしい。

現代は、ソフトの時代。

日本にとって、アイディア次第で大きな利益を生み出すことができるのは、資源が少ないことがディスアドバンテージにならないということ。

アニメ、オタク文化、ゲーム、東洋文化など、点で存在していた価値を

線にし、
面にしていき、

目線を外(海外市場)に向けることで、市場が縮小し続けるサイクルを逆回転させる重要局面になるのじゃないかと思うのです。

みなさんはどう思う?

では今日もハッピーホルモン大放出!

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