ことりとわたし

ひとり暮らしだった。仕事から家に帰ると、無機質な家が何となく寂しいという感情を引き寄せた。時折お花も飾ってその感情を和らげていた。
微笑むこと。意外と大切。

それに変化は訪れた。ある年の夏。ちょうどお盆も過ぎた頃。
私は一羽のことりを連れて帰った。まんまとペットショップの人に乗せられたのだ。だけど、今でも覚えている。はじめて手に乗せられた感覚を。
なんとなく、あたたかかった。なんとなく、優しい気持ちになった。
なんとなく、守りたいと思った。なんとなく、幸せにしたいと思った。

私にとって、なんとなく欠けているピースをこのことりが届けてくれるような気がした。『私があなたを世界で一番幸せにする。』そんな気持ちで連れて帰った。私が”世界一”なんて思う事は、後にも先にもあの瞬間だけかもしれない。あれから三年がたった。

今でもあのことりは私のそばにいて、日常をあたためてくれている。
嫌な事があった日も、辛いことがあった日も、寂しい時も。
叶うなら話してみたいな。幸せ?って聞いてみたいな。

最近また少し変化が訪れた。
最初に飼った水色と白のことりに、もう一羽増えた。きいろいことり。
いつか、つがいで飼いたいなと思ってたから。

わたしとことりの日常はまだまだ続きそうだ。

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