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同志少女よ、敵を撃て 読了

激動の2022年、最もジョッキングだったのは戦争が始まったことだった。
新聞や海外サイトで情報を取り、一番耳を傾けていたのが豊島さんのテレ東ワールドポリティクス。他の番組が感覚的なコメントが多いなか、ロジカルかつ数字を交えた解説の説得力が違った。多くの参考文献と併せて紹介されていたのが「同志少女よ、敵を撃て」
買おうとしても在庫がなく、入手に時間を要した。
そして、ここからは個人的な理由で読了に時間がかかった。
私は元々多読速読で、ビジネス書の類は数時間で読了する。文学作品は相性が良い場合全てを忘れて没頭してしまう。読むのは速いが、その間の集中力が凄いのだ。子供を産んでから私は文学作品を読むことを封印した。本読んでるうちに子供に何かあったらまずいからだ。本来とても好きなことに蓋をしてきたわけだ。
だが、子供達も大きくなり、「母も好きなことすれば」と言うくらいになってきた。
ただ昨年末までは仕事に忙殺され、文学に手を出す気力が湧かなかった。
年末のコロナ感染で仕事を強制終了しなくてはならない日々は私に価値観のアップデートをさせた。
読みたければ読めばいい。
年末年始の休みを使って読んでみた。

500ページないので一日で読み終わると思っていたが、なかなかどうして3日かかった。
前半は主人公の追体験を計算しながらやっていて、後半は何と戦うのか、敵は何か、他の作品にも思いを馳せていた。

戦争作品は読むと辛くなるので好きではない。
過度な美化も嫌だし、子供が辛い目に合うのは目を伏せてしまう。でも戦争はなくならない。目を逸らしてはいけない。

日常が戦禍になり、生きていくために自分をアジャストしていく中での葛藤、無力感、罪悪感、迷いを本作は鋭く描いている。

勧善懲悪なら話はシンプルだが、そうはいかない。悪は主観的なもので、完全な悪などない。自分だけが正しいと思わないとやっていけない、スコア等人の血が通わないものに指標を置きたいというのはよく分かる。

戦争ではなくとも同じような葛藤は日常生活にも多々ある。自分に言い聞かせて進んでいくしかない、でも本当にそれでいいのか、何の為に戦うのか、自分に問いかける必要がある。

本書はミステリ作品らしい。言われれば確かにそうかもしれない。だが、もっと泥臭い人間の感情、人間の本質を抉った作品で、それ故に大賞も納得だ。私はまだ戦争が終わらない今だからこそ、読む本だと感じた。これは他人事でも遠い国の出来事でもなく、身近におきる可能性があること。敵は敵ではないかもしれない、戦いの大義が想定外かもしれないこと。読んで考え、自分に問いかけるのに最適だと思う。

今年こそ戦争が終わることを祈りつつ、自分が何
のために戦うかを改めて問い直したい。

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