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映画「夏の庭」

あの世にもうすぐ逝くような住人が
鬱蒼とした庭の朽ち果てた家に住んでいる
噂があった。

「人がタヒぬところを見たい」

と少年達は考えて、ひとりで住むその老人を
タヒぬまで観察する事に決めた。

そういう内容だったので、パッケージのイメージと違い驚いた。
映画を観ると、まだあどけない
あどけない故に他人に対して残酷な事を言える少年三人が老人を観察するところから始まるのだ。

三人のうちひとりは葬儀の経験者らしい。
そしてタヒとはどういうものか少年達は興味を持っているからだ。
虫を見つけて、最期まで観察するように
夏の課題を無邪気にする子供達。

こういう状況は有り得るなと私は思う。
無邪気とはそういうものだ。

しかしタヒにそうなはずの老人は、少年達を追い払わないで自分の家の手伝いをどんどんさせてしまう。

老人の生活は少年達によって徐々に活性されていく。

映画の少年達は意外と素直に老人の手足になり、家の仕事を手伝ったからだ。

おそらく老人に対しての気持ちが対象物だったはずなのに愛着が芽生え、これが好きに変化したからだろう
「ジジイがタヒぬのを見るんだ!」
と老人に言っていた少年は、やがて「タヒなないで」と言うまでになった。

これだけだと、老人と少年達のちょっと変わった心のふれあい映画になる。
そしてそういう映画であれば、それで普通に見終わって
「良かったね」
とひとこと感想を言い、やがて忘れる映画になったのだが…

鬱蒼とした庭が綺麗になり老人の罪までも少年達の前に開かれた

何故ひとりでいるの?
奥さんいるの?
戦争には行った事があるの?
と、親しくなると知りたがる少年。

綺麗になった環境で、老人は心に閉まった物を少年に見せた。

注意:ここから閲覧注意です


老人は戦争に行った。
そこで、原住民と出会い親子をXXしてしまった。
と告げる。
さらに映画で三國連太郎演ずる老人は
少年達に懺悔をするように
やった事を精彩に語る。

家に居た老人をXして、女が逃げ出したので追いかけた。そしてXXした。
見ると妊娠していた。お腹の胎児はその時にビクビクしていた
と鬼気迫る演技で三國連太郎が言う。

(とても恐ろしい臨場感があったが…
映画なので語りだけで良いのかと私は思う。)

そして少年達は
老人のした事に驚きながら「凄い」と言う声を洩らす。

戦争という特別な時代のその枠の中でやったからと言ってもそれはXX行為だ。

しかもそれは兵隊同士のXしあいでは無い。
武器の持たぬ住民を、妊婦を追いかけてXX害した。
そして家の食糧を強奪した。

最初は誰とも交流を持たぬ、不機嫌なだけの老人でだんだん優しい笑顔さえ見せたのに

その懺悔は少年達にさぞや衝撃的だっただろう
と思うが少年達はそうでも無く?少しはぼんやりとタヒに対して考えていたが、プールに行ったりサッカーをしたり
しまいには老人が帰るに帰れなくなった家の奥さんを探し出し、夫婦の感動の再会をさせようともくろむ。

探し出した奥さんはもう認知症になっているようだったが
「夫は戦タヒしたのよ」
と言う。
男は戦場から日本に帰っても家には戻らないので戦タヒをしたとずっと家族に思われていたのだ。

感動の再会。
私から見ると少年達の勝手な行動はかなりおせっかいだなと思った。

何故帰れないのか少年達はそこを1度も思いつかない?

やがて少年達の夏の課題は終わる。
いのちのはかなさ奇妙な友情をタヒを
キラキラと輝く夏の思い出としてその庭に置き
少年達は満足して立ち去る。

ところでこの話はベストセラー本なのですね?さっき初めて知りました。本は読んでいなくて映画だけを観ました。
相米慎二監督 田中陽造脚本の映画で、ふたりの特徴は知っているので書きますが…
正直申しますがふたりは合っていないのでは?
と私は思ってしまいました。

相米慎二は「台風クラブ」で思春期の少年少女の何かありそうな期待を持つ時期の煌めきの瞬間を撮っている。
田中陽造は、鈴木清順でしか知らないが人生の脆さ美しさ儚さを蜃気楼のように書いている(実際に鈴木清順は台本をあまり気にしていないという話を聞いた事がありますが……)

映画、最後のシーンは田中陽造のイメージでしたが全体で云えば「スタンド・バイ・ミー」のような感じだったのでこの題材であったら、もっと良く映画を作れるんじゃ無いか?というもどかしさを感じました。

長くなるので

次のnoteでは、最近観て
これは傑作なのではないかと思った日本の戦争映画を紹介します。

✳X(旧Twitter)で、NGワードにしている単語をここでもNGにして文章を書きました事をお許し下さい。

追記:本の内容を確かめたら家庭に悩みがある少年達のようでしたが?
普通だったらその鬱蒼とした庭の家に毎日子供が入り浸っていたら、今だったら親が何か言うとか
行っちゃいけないと止める気がします。
 「人の家を覗いてやがる」
と、途中で言っていた別の子供達も親に告げ口しそうである。
 今でしたらスマホを使って何かやりそう…
それに近いシーンはありますが…

そういう大人達の意見や風景があまりにも少なかった。秘密でやっていたんだろうけど、親なら普通気づくでしょう?
追記の追記:実は大人は老人以外も出てきますよ。
ただし子供達の保護者では無い。
学校の先生です。しかもひとりは特別な存在で出てきます。
あとは、少年達にとって普段なら出会う事が無かった大人。

そして私は、戦争犯罪によるタヒと普段の生活のタヒを一緒くたにしているような気がしました。
タヒでも同じタヒでは無い気がします。
しかし、まぁ…これは蛇足ですね。

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