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No.15 「予感」



No.15「予感」


 大学の合格が決まった。第一志望の学校だったのでめちゃくちゃうれしい。しかし英語系の学校ということもあって、いくら得意だとはいえども英語の勉強を続けなければならないことになるだろう。音楽を作ったり絵を描いたりすることもその慌ただしい毎日の合間を縫ってやっていかなければならなくなるかもしれない。大学の中退だけはしたくないのでそこんところは身を賭してでも頑張る所存ではある。
 とはいえ、今までこれほどまでに勉強を頑張った期間は無かったので、第一志望に現役合格できた喜びは大きい。今は地元を離れて新しく住むアパートを決めたり銀行口座を開設したりパソコンを買ったりと忙しない日々を送っている(これを書いたのは二月末のこと)。
 忙しさが一通り落ち着いて、ふと寂しさが襲ってきた。一人で生きていくということが不安で仕方ない。
 今までの人生の大半を生きたこの街から、突然居場所を奪われて追い出されたような気持ちになる。つい去年まではこの街に居場所なんてないようにさえ思えていたのに、僕の頭はどうもすごく自分勝手なものだ。
 ひとりぼっちの家へと帰宅して、料理をして、勉強をして風呂に入って作曲をして寝て起きて発声練習朝食登校授業買い物帰宅……
 そういう生活を続けていったら慣れ始めて、いずれみんな大人になるのだろう。周りのみんなが大人になっていくのが寂しくなる。
 次に住む街は今の街より都会で、基本の移動手段も電車だ。街を歩けば誰も互いのことに気を配らない、不干渉のさみしい世界が広がっている。誰かが誰かを殴っても、見て見ぬふりをする街。
 そんな街に慣れてしまったら、その時僕は大人になれるのだろうか。そう思うと子供じゃなくなるというのは堪らないほど寂しく苦しいものになるのだろうな。
 ピーターパンシンドロームではないのだが、もう少しだけ子供でいることを許してもらいたかった。
 だが生活は続く。
 なんていう、この上ないほどに自分勝手なエッセイでした。

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