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投げたボールをどうキャッチするかまでは制御できない

 あれだけ”穢れた血“と言い切り、人種差別の愚かさを描いたハリー・ポッターシリーズなのに。そのファンが、舞台版ハーマイオニーキャスティングにクレームを入れて、J・K・ローリングが怒っておりました。

 壁なんて役に立たないと描き、かつ壁の向こうに住む人と、侵入を拒む側の恋愛で盛り上げた。そういう『ゲーム・オブ・スローンズ』の壁画像を、トランプが移民排斥をけしかける意味でツイッターに投稿する。役者も番組側も「意味わかって投稿してんのかオメー」状態を返す事態に。

 こういう事例を見ていて痛感するのは、読解力には当然のことながら差があるし、バイアスが入るものだということ。作り手の真逆に受け取られて暴走し、「いやちゃうねん……」となっている事例は盛り沢山なのでしょう。
 これはネットの弊害でもなんでもなくて、古典には注釈が入るもの。中国は顕著ですね。正史と呼ばれる『三国志』だって、あれは裴松之の注釈があるものを読んでいてこそ標準という流れはある。
 誤読、誤解釈をどうするか? 解釈違いで盛り上がれ! それはまあ、しょうがないと思うのです。

 好きな作品や人物については、私なりに「それは違うでしょ」というツッコミ入れてます。
 今話題の『鬼滅の刃』は、ワニ先生のインプット量が半端ないので、誤読や誤解釈も圧倒的に多いと思えます。人気がありますし。ワニ先生は意図的にかつての日本にあった矛盾点を指摘し、決して肯定してはいないと思うのですが。『進撃の巨人』くらい気合い入れて皮肉らないと伝わらんもんかな……とは思うのです。
 でもまあ、山田風太郎が日本軍をおちょくっている忍法帖だって、エログロエンタメとしてしか読まれていないことが多いもんなぁ。
 コレ、創作物の基本的なテクニックなんですけど。読者の目を逸らしたいなら、エロやギャグを入れるといいんですよ。『ゴールデンカムイ』がすごいことになっていて、重要な伏線とセットで強烈なギャグを入れるもんだから、読者が騙されると痛感させられる作品です。ありゃ手練れの仕事だな。
 日本の何が悪いって、作品そのものというよりも、作者側が「誤読やめろ、そういう意図じゃないから」と言い切れないところじゃないかと思うのです。作り手側も、指摘するのが野暮ってこともあるでしょうし。

 日本はファンダムがペンライトを振って楽しむ空気のようなものを、ともかく重視する。そこに冷や水を浴びせようもんなら、どういう目にあうか。自分の人生では極力避けてきたけれど、なんの因果か、そこに突っ込んでしまった感はある。

 結局、人間は、自分らが思っているほど自分の頭で考えていないんだと思います。実際疲れますもん。ただドラマの感想書くにせよ、自分の頭で一から考えると無茶苦茶疲れるもんです。そういうことするよりも、SNS見て感想コピペしてほいほい仕上げた方が断然楽です。アクセスがそれで稼げるなら、みんなそうすればいいと思う!
 でも、それって結局、作品鑑賞力を落としているんではないかとふと思うのです。
 ファンアート投稿とか。ハッシュタグとか。盛り上がるけどさ。でも、何かを鑑賞しつつ「この萌えを投下したらこのくらいふぁぼ稼げるかも!」と思っちゃったら、読解力は落ちると思うのです。

 ともあれ、もう、作り手が作品解釈まで制御できないし、流れを作れば洗脳装置にもできる。プロパガンダというものですね。『鬼滅の刃』は深読みや解釈次第で危険な方向に向かうともいう。これはさんざん書いてきた通り、誘導していないと思えるので私は取り上げませんが。あからさまに誘導しているか、危険な方向に向かっているフィクションは問題ありだと指摘しますってば。

 台湾の伝統食を、日本人夫婦が作り上げたという企業の捏造を、受信料を使って広めた『まんぷく』。
 そして『いだてん』。オリンピックランナーが身につけた旭日旗に文句をつける国はおかしい! そう食ってかかる人が実際いたんですよ。あれほど政治色が濃い東京オリンピックを「楽しいただの運動会じゃんねー!」と連呼するし。
 実際、誘導されてこういうことを書いている人はいた。
「今までオリンピックなんて興味なかったけど、開催意義が理解できました!」

 そういうことをふまえて、自分なりに考えて、基準をふまえて評価したいと毎度のように言っていますが。それでもこのパンチ一発でだいたい終わりますからね。
「純粋なファンの心を傷つけないで!」
「空気読め」
 まあ、そういうもんだっていい加減わかりましたってば!

 そうそう。『鬼滅の刃』の犠牲賛美かどうかとか、そのへんについては、#武将ジャパン に送った原稿にまとまているところです。

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