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ミュージカルのお手本

この記事は映画「BILLY ELLIOT LIVE」のレビューである。

ビリーが一番最初に歌う歌詞には彼の未来が暗示されている。

プロローグにさりげなくこの歌詞を忍ばせるだけでなく、スモールボーイに🆒と言わせたところが脚本家にして作詞家リー・ホールの鬼才たる所以である。

この鬼才の歌詞に曲をつけたのが、もう1人の鬼才、エルトン・ジョン‼️
歌曲のみならずダンス曲に至るまで、このミュージカルに相応しい楽曲は私達聴衆を魅了して止まない。

そこに躍動的なダンスが加わることで私達の胸の高鳴りは頂点に達する。振り付け師ピーター・ダーリングの功績は計り知れない。

また、私の大のお気に入り15分間に及ぶ「Solidarity」の構成を始め、ミュージカルの全体をまとめあげた監督の功績も忘れてはいけない。映画「BILLY ELLIOT」監督のスティーヴン・ダルドリーは私のお気に入りの監督の1人である。

ステーホームで久しぶりに映画をDVDで視聴したのをきっかけにミュージカルの存在を初めて知った。ロンドンのライブ版を何度も視聴して衝撃を受けた。

ミュージカル「BILLY ELLIOT」は脚本もダンスの振り付けも楽曲も舞台構成も全て断トツである。

初演のビリー役だったリアム・ムーアが優しい歌声だったのに対してライブ版のエリオット・ハンナの歌声は力強くて心に刺さった。バレエ、タップ、アクロバット、台詞はノーミスでその精神力に圧倒された。何故ならこの舞台は撮影と同時に世界配信されていたからだ。ただ一つ彼がびびった場面があった。Mー2のShineで彼はウィルキンソン先生のタバコケースを舞台の床に落としてしまったのだ。両手にグローブを着けているハンナにはどうすることも出来ない。先生役のラシー・ヘンズホールは慌てずそのままにして踊り続け、動きに合わせてタバコケースを舞台袖に蹴り出した。彼女はプロ中のプロだ。

オカマのマイケル役を演じたザック・アトキンソンも良かった。生き生きとしたコミカルな演技と歌の上手さと内面の表現力で、観客の心を掴み、自分の舞台を仕切ってみせた。マイケルに成りきる覚悟がしっかり出来ていて頼もしかった。
祖母役のアン・エミリーについても同じことが言える。彼女は83歳であのパワーだ。残念ながらこの公演から3年後に他界している。

フィナーレのダンスや構成も良かった。ミュージカルのお手本と言っても過言ではない!

このライブ版を繰り返し鑑賞して日本公演2020を観劇したがライブ版を忠実に再現していて日本のミュージカルのレベルの高さに驚いた。完成度の高いミュージカル「BILLY ELLIOT」を絶やしてはいけない。再演があることを切に祈っている。

(See you)