見出し画像

子育てつらい。共感だけじゃ救われない人に届け。

子育ての福祉サービスはあまり知られていない

ワンオペがどうとか、ツーオペでも無理ゲーとか、子育ての大変さはそこそこ世に知れ渡っていると思う。でも、「子育てを、福祉サービスに助けられました」という話はあまり聞かないな、と思う。

私は3人こどもがいて、2番目の子には持病と知的障害があるが、福祉サービスのおかげでなんとか生活できている。障害があったから助けてもらえたのでは?と思われるかもしれないのだけど、「助けてください」と、たくさんの門をたたくうちに、「健常な子を育てている人でも、助けてもらえる可能性はあるんだ」ということに気付いた。

確かに、こどもに障害があることで、私の困難さが伝わりやすかったのだと思う。でも、障害がなくても、「助けてくれる人が少ない」とか、「こどもが寝ないタイプ」とか、「怒りっぽい」とか、「それらが重なっている」とか、障害があるのと同じくらい大変なことだってある。それを助けてもらうことは、何もおかしいことではない。

福祉サービスにたどりつくには

どうすれば、子育てを助けてもらえるのか?まずは、お近くの区役所なり市役所なりに行くことである。がっかりしただろうか?そんなことは誰でも知っている。育児相談とか、子育てサークルとか、たいして役に立たないと思っている人もいるかもしれない。でも、まず、入り口はここなのだ。他にも、NPOとか民間のサポートもあるが、そういう情報も役所に集まっていたり、紹介してもらえることがある。

そして、大切なのは「一回相談して、断られてもあきらめない」ということである。相談の入り口は、話を聞くことで、たいていは「親御さんは頑張っておられます。お子さんもしっかり育っているから大丈夫」と元気づけられて終わる。しかし、そこで諦めない。例えば、同じところに何度も行くとか、別の窓口を探すとか。冷たくあしらわれてガッカリすることもある。でも、諦めずに右往左往していれば、助けてくれる人に出会う確率は確実にあがる。私はこう思ってあちこちに問い合わせをしていた。「助けてくれる人は、必ずどこかにいる」

子育てサービスの矛盾「困っている人は助けを求める力がない」

これも有名な話だ。私も書いていて悲しくなる。諦めずに何度も相談に行くパワーがあるくらいなら、そのパワーで子育てを乗り切ってしまうかもしれない。さらに、福祉サービスを受けるには、山ほど書類を書かなければいけなかったり、制度が複雑だったりする。だから結局、最初の「子育てを、福祉サービスに助けられました」という話をあまり聞かない、という事態が起きているのだ。

そんな難関を突破して、サポートを受けられた私の体験は、少し特殊なのかもしれない。けれど、私の体験を知ってもらうだけでも、自分の住んでいるところには、どんな制度があるのかな、と興味を持ってもらえるのではないか、と思っている。

始まりは小児検診だった

一番上の子、いっちゃんの1歳半検診、そして3歳児検診。検診で提出する書類には、必ず「育児について気軽に相談できる人はいますか?」「育児に困難さを感じますか?」というような項目がある。いっちゃんはすくすくと育っているし、それほど手がかかるタイプではない。相談できる親族もいたが、私は「育児に困難さを感じる」にマルをした。

「最後のここにマルすると、個別に呼ばれて面談になるから、帰るの遅くなるのよねー」と笑っているお母さんがいたが、私は、遅くなってもまあいいか、本当のことだし。と思い、そのまま面談に進んだ。

私の「困難」は、どこにでもある悩みだった。専業主婦だから、こどもと2人きりでつらいとか、夫が子育ての大変さをあまりわかってくれないとか。担当の保健師さんは、親身になって話を聞いてくれ、励まされ、私の面談は終わった。

その後、2人目のニンタが生まれる。まだ持病があることに気付いていなかったが、発達の遅れがあったニンタは、1歳半で再検診となった。再検診は、こどもの体重などを計るだけで、発達の専門の先生に診てもらえるわけでもなかった。そのときに療育の紹介もしてもらったが、わたしはすでに療育の申込みは済ませてあったので、来るだけ無駄だったかなー、と思った。

しかし、私は検診に行く度に「子育てに困難さを感じる」にマルをした。親身に話を聞いてもらって、励まされて終わる。その繰り返しである。それでも、毎回話を聞いてもらうのには、理由があった。

役所には「記録が残る」

いつが初めだったか忘れたが、役所からうちに電話がかかってきたことがあった。「保健師の○○です。以前お子さんの検診でお話を聞かせていただいた保健師から引き継いでお電話しています。その後どうですか?△△のことで旦那さんとケンカになってしまうこともある、とお話されていたようですが~」

その電話がかかってきた時、いっちゃんも少し大きくなって楽になり、私は、比較的明るく過ごしていた。夫婦喧嘩の内容を言われても、思い出せない。「いや、最近は大丈夫ですね!ありがとうございます!」私は明るく答えた。

電話がかかってくるなんて、なんだか面倒だな、と思わないでもなかったが、私が忘れているような夫婦喧嘩のことが、役所に記録されていて、引き継ぎまでされていることには驚いた。「話したら、記録してくれるんだ」。じゃあ、もしもこの先、子育てが継続できないような事態になったら、「あの家はこういう事情で子育てが大変だから」と、助けに来てくれるかもしれない、という期待を持った。

そもそも、万が一のときはこどもを助けにきてほしい、という思考が、我ながら、まずヤバいと思う。自分がこどもを育てきる自信がなかったのだ。良いときと悪いときの波はあったが、全体的に見て、この頃すでに、私はだいぶ参っていたのだと思う。

そのときの1番の問題は夫だった。お母さんはすぐにお母さんモードになるが、お父さんはなかなか独身モードから切り換えられない、とよく聞くが、我が家も同じだ。3人生まれた今でこそ、子育てにきちんと参加する立派な父親だが、最初はひどかった。いわゆる子育てを「手伝ってあげている」感覚。あなたの子ですけどー?と何度も言いたくなった。いや、言った。

そして、これは今もなのだが、夫は共感力があまりないので、私が困ったり泣いたりすると、対応方法がわからなくて逃げてしまう。何度も壁にぶち当たる子育て期間、夫に愚痴を言ったり相談したりできないのは、今でもけっこう大変だ。

だから、私は、検診のたびに正直に言い続けた。夫にはこんなところが欠けています。私もすぐに落ち込みます。欠けたところがある夫婦です。それは、「私たちにこどもを育てる資格がないと思った時は、いつでもこどもを助けにきてください」というメッセージだった。

ファミリーサポートが向く人、向かない人

以前にも書いたが、3番目の子ミコが産まれてからすぐ、2番目のニンタが覚醒し、かんしゃくと暴力が止まらなくなった。私は役所に助けを求めたが、勧められたらサービスは「ファミリーサポート」。一時間800円の手伝いで何かを解決できる気もしなかったし、登録作業も複雑で、生後間もない乳児を抱えてできるようなものではなかった。しかも結局、お住まいの地域で登録しているサポーターが居ません、ということでこれは終わった。

誤解してほしくないのだが、私はファミリーサポートが役に立たないとは思わない。その後、ニンタの幼稚園の送迎をお願いしたくなったとき、私は改めてファミリーサポートに登録し、利用させてもらって、とても助かった。利用するポイントとしては、手続きが煩雑なので、産後に不安がある人は、出産前に登録や面談を済ませておくこと。それから、ちょっと数時間だけ見ていてほしい人に適している、ということだ。

保育園の一時預かりを利用する

私は、母子手帳をもらった時に、一緒に役所からもらった「子育てハンドブック」を隈なく読んだ。もっと長時間こどもを預かってくれるところはないのか。

まず目にしたのが、認可保育園の一時預かりだ。しかし、これは一年に一回の利用申込み期間(私の住む地域では2月)に説明会に参加し、申込書を提出しなければならない。私もそこでは諦めたが、2月を待って再トライした。ニンタはもうすぐ幼稚園だが、ミコはまだまだ幼稚園まで長い。ミコの預け先を確保しておく必要があると思った。

申込書は、受けた予防接種から家族構成から、書くことがとても多い。用意する持ち物もたくさんあって、産後ヘトヘトの人には厳しいかもしれない。でも、一度頑張れば、その先1年、時々「保育園で預かってもらえる」1日が訪れる。混み具合にもよるが、月に一度でもいいから利用したい、という人や、就職活動をしたい人などにお勧めだ。また、仕事は決まったが保育園が決まっていない、という人は優先的に利用させてもらえる場合もある。

ミコの場合、最初は週に一度くらいの利用だったが、ニンタの病気が判明し、手間のかかる食事療法が始まってからは、「事情を考慮して」ということで特別に、平日4日間ミコをお願いすることができた。ミコは数ヶ月ここでお世話になり、その間に次の保育園を探して繋げることが出来、大変感謝している。

こどもの発達に問題がある場合

次に、ニンタの預け先を探した。ニンタは療育を受けていたので、そこで障害児一時預かりの存在を知り、利用することになる。施設の見学や手続きは、乳児とイヤイヤ期の幼児の2人を連れて行ったので、先の2つと同様、大変ではある。

発達に問題がある場合、障害児を預かり慣れている施設に預けるのは、ファミリーサポートなどよりは安心感がある。そして平日は毎日でもお願いしたい、となると、行政の補助が受けられるので、ファミリーサポートよりは安価だ。ニンタもまだ障害はハッキリしていなかったが、それでも利用することができたので、発達に不安がある場合は、こういった施設もお勧めだ。

幼児を宿泊で預けたい場合

ニンタは幼稚園が始まったが、幼稚園は夏休みなどの長期休みがある。この長期休みをなんとかしたいと、また「子育てハンドブック」を読んだところ、幼児の一時預かりというものがあった。冠婚葬祭でも良いし、親の休憩でも良いし、理由を問わず利用できる。

子育てハンドブックには、いくつかの受入施設が載っていたが、私は送迎のことも考えて、最寄りの施設にお願いすることにした。私はまた書類をたくさん書き、夏休みに週1回、1泊、くらいの頻度でニンタを預かってもらった。

しかし、これはあまり上手くいかなかった。この施設は児童養護施設の中にあり、プライバシーの問題もあるのか、ニンタと担当職員が1対1で過ごす。ニンタにとって、これがとても寂しかったようだ。そしてニンタもまだ年少で、母親と離れて宿泊するという心理的な不安が大きかった。ここを利用してから、しばらくニンタは情緒不安定になり、また連れて行かれるのか、と外出を怖がった。

その後、ニンタは別の宿泊施設を利用することになるのだが、そちらは集団で過ごすことが出来、年中にもなっていたので、もう怖がることもなかったし、楽しかったよ~と帰ってきている。宿泊で幼いこどもを預けるのは親も不安だが、全くの禁じ手ではない。どういった施設なのか、こどもが楽しく過ごせるか、という見極めは必要だが、親がパンクしてしまう前に、頼ってみてほしい。

乳児を宿泊で預けたい場合

ミコも一度だけ宿泊で預かってもらったことがある。ニンタの検査入院のとき、ミコが1歳で卒乳してしばらくした時である。

最初のうち、ニンタが入院するときには、親戚が交代でミコを預かってくれた。しかし、皆の疲労の声は私にも届いていたし、これからニンタが何回、どれだけ入院するかもわからない。私は、ニンタの回復に必要ならば、周りに遠慮せず、好きなときに好きなだけ入院したい、と考え、次の検査入院には、乳児院にミコを預けることにした。

乳児院は、いろんな理由で親と暮らせないこどもたちが生活している。人によっては暗いイメージを持つかもしれないが、なんといっても乳児のプロだ。日勤と夜勤もある。親戚に預かってもらって一族ボロボロになるよりは、こういった施設を頼って緊急事態を乗り越えることも必要だと思う。

しかも、「夜に全然寝ない」と親戚を困らせ続けたミコだったが、ここでは泣くこともなく、夜はぐっすり寝たという。乳児院の集団生活のおかげか、職員の手練手管があったのかは謎だが、意外とそういうこともある。

役所が本気をだしたらすごい

ミコの1歳半検診に話は戻る。このとき、ニンタの病気はまだわかっていなかった。かんしゃくが続くニンタと小さいミコを1人で面倒見るつらさを、役所にも度々相談していたし、自分であらゆる手立てを探して、ニンタとミコはいろんな施設に預かってもらっていた。それでも私は今にも倒れそうだった。

「子育てに困難さを感じますか」に私はマルをし、面談は、なじみの保健師さんが担当してくれた。私は切々と近況を話し、保健師さんも共感し、励ましてくれる。でもその日、私はそのまま帰ることが出来ず、泣きながら言った。

「そうじゃないんです、もう限界なんです!もし私がこどもに虐待をしたら、児童相談所が保護してくれますよね?でも、虐待しないギリギリで耐えているうちは、助けてもらえないんですか?じゃあ虐待したら助けてもらえるんですか?おかしいですよね?」

保健師さんは一瞬言葉に詰まって、「わかりました、日を改めてもう一度相談しましょう」と言ってくれた。この日から、たくさんのことが変わったと思う。実情は知らないが、「我が家に正式な担当保健師さんがついた」というイメージだ。もちろん、そこには、私が何年にもわたって訴え続けた「子育ての困難さ」が添付されていたのだろう。

保健師さんは、実に様々なサポートをしてくれるようになる。月に一度の訪問。私の体調が悪くなれば、病院の紹介や付き添い。ニンタの食事療法が始まったときは、私に万が一があったときは、食事療法を続けながら保護する約束を、児童相談所ととりつけてくれた。

そして、「ニンタさんもミコさんも、保育園にいれませんか」と提案してくれたのもこの保健師さんだった。

専業主婦が保育園にこどもを預ける

地域によって違うらしいが、私の住む地域は保育園の激戦区である。専業主婦である私の子が、保育園に入園できるとは考えたこともなかった。

このとき、ニンタは病気が判明し、食事療法を始めたばかりだった。私は1日のほとんどをキッチンで作業しても追いつかないほど、ニンタの食事療法に時間を割かれている。我が家の様子を知っている保健師さんは、私にこう説明してくれた。

「ニンタさんの食事療法に時間がかかり、フルタイム勤務と同様の状態だと分かってもらえれば、ミコさんは、“ニンタさんの看護”を理由に、保育園に正式に入園できる可能性があります」

「ニンタさんは、現在幼稚園に通っていますが、長期休みの預かり先が決まっていませんよね。食事療法をしている子は無理、という理由で、どこも預かってくれない。でも、保育園は長期休みはありません。この食事療法を始めてからお母さんも体を壊されていますし、保護者の健康上の理由で保育園を利用することもできます」。

ミコはすでに、週4日、保育園の一時預かりを利用させてもらっていた。しかし、一時預かりを毎日のように利用すると、正式に入園している人よりも高額になる。(現在、保育園の無料化が進んでいるが、このときはまだ導入前だった)。保育園の利用料は世帯の収入によって異なるが、正式に入園となれば、ミコは第2子以降ということで減額も適用される。

また、一時預かりは基本的に5時までで、保育の延長ができない。正式な入園であれば、保育時間の延長を利用して、夫でも会社帰りにミコのお迎えに間に合う。ニンタの入院の度に、ミコを乳児院に泊まり込みにさせなくてもよくなる。

問題はニンタだった。ニンタは幼稚園が大好きだ。先生もニンタの特性を理解し、熱心に取り組んでくれている。転園になったら、ニンタはどんなに悲しむだろうか。環境の変化に耐えられるだろうか。心配事が多すぎる。私はこの提案にこう答えた。

「ミコの保育園は申請させてください。でも、ニンタはダメです。夏休みの預かり先は、探しますから」

私はそのあと、思いつく限りのところに連絡をとった。まずはレスパイト入院(患者家族の休憩のための入院)を考え、食事療法に対応している病院をいくつもあたった。患者会での前例がないか問い合わせして、話も聞いた。療育の短期入所にも頼み込んだ。ミコの一時預かりをしてくれた保育園にもお願いした。知り合いのドクターにも頼った。難病支援の団体にも問い合わせた。答えはゼロだった。

ニンタが家にいる間は食事療法の準備はできない。ニンタは1人では遊べないし、食事もできない。トイレも手伝いがいる。日中はほぼつきっきりだ。夜は2時間毎に起きて私を探すから、料理と寝かしつけを繰り返しながら深夜まで作業すると、睡眠不足で私が倒れるのはすでに経験済みだった。

私はこれが限界だと諦めた。「ニンタも保育園に申請させてください」。この決定に、夫は激怒した。私も、ニンタを転園させたくない気持ちは同じだったから、夫の気持ちはわかり、黙って聞いていた。といって、夫も他に良い案があるわけでもなく、行き場のない怒りは、悲しみにゆっくりと変わっていった。

ニンタの転園のことを思い出すと、今でも悲しくなる。転園先の保育園は食事療法に理解がなく、ニンタは再度の転園も経験する。結局3つの園にお世話になった。転園の別れはつらかったが、最後にお世話になった保育園は、そのままのニンタを受け入れてくれ、私も何度も励まされた。保育園を卒園するときのニンタはとても強く成長したように見え、私はこの保育園に出会えて本当に良かったと心から思った。

「保活」はやはり大変

私はこの制度を知り、もしかして、産後ウツの専業主婦でも、保育園入園という選択肢があるかもしれないんだな、と思った。しかし、保活を始めてみて、今までと同じ壁にぶつかる。何件もの保育園に見学申し込みの電話をかけ、見学スケジュールを管理し、毎度おなじみ、山ほど提出書類を書き、専業主婦の場合は、自分がいかに困難な状態かを説明する書面も必要だ。産後ウツのお母さんに、この作業はできない。代わりに周りがやってくれるかもしれないが、そんな恵まれた環境にいる人は、そもそも産後ウツにはならないだろう。結局、困っている人には助けを求める力がない、という結論に戻る。

そして、私は今でも、専業主婦なのに保育園に通わせている、ということに引け目を感じている。これ以外選択肢はなかったし、保育園のおかげで生き延びられたと思っているので、後悔はないが、この気持ちはずっと消えないと思う。

児童相談所は怖くない

児童相談所というと、「こどもが泣いていただけで近所の人が通報→あらぬ虐待の疑いをかけられる→こどもが保護されたら会わせてもらえない」という負のイメージを持つ人もいるかもしれない。実際にそんな話も聞くし、そういうお仕事もあるのだろう。

しかし、私の出会った児童相談所の人は、皆優しかった。「児童相談所は、子育てに悩んでいる人みんなが利用できるところです。いつでも頼ってください」と言う。私も児童相談所にとても助けられた。

まず、ニンタが暴れて、このままでは手をあげてしまう、というときには児童相談所に電話をかけて、私の気持ちが静まるまで待ってくれた。

ニンタの食事療法が始まってからは、私に万が一のことがあったら、食事療法を続けながら保護します、という確約を保健師さんとしてくれた。

その後、保健師さんと実際に我が家に訪問に来てくれて、「お母さんに万が一のときは保護、ということでしたが、急に保護となると、食事の準備が間に合わないかもしれません。こちらの練習という意味もありますし、ニンタさんのお試しということもありますし、お母さんの休憩にもなりますので、時々お泊まりに来ませんか?」と言ってくれた。

ニンタは今でも時々、児童相談所の関連施設にお泊まりに行っている。お迎えに行くと、相談員の方は、どんな遊びをして過ごしたか、食事はどんな様子だったかと、細かく教えてくれる。

全国どこでもこんなに親切な相談員の方がいるわけではないかもしれない。でも、「児童相談所は子育てに悩んでいる人みんなが利用できるところ」という考え方は同じだろう。子育ての悩み相談は、たくさんの窓口があるが、児童相談所もその1つだ、ということが、もっと広く伝わるといいのに、と思う。

1人でも多くの親子が救われるように

今でも、我が家は問題だらけで、たくさんの人に支えられている。虐待や無理心中のニュースを聞くと、他人事とは思えず、胸をえぐられる思いだ。日本のセーフティーネットはややこしくて、なかなかたどり着くことができない、という指摘もよく聞く。

でも、ここに、助けられた人がいますよ、と、私は伝えたい。そして、解のわかりづらい問題の中で溺れている人を助け出すという、こんな難しい仕事に就き、惜しげもなく知恵と時間を割いてくださる方々に、心から感謝したい。大袈裟ではなく、あなたのおかげで、私は今も生きています。

どうか、1人でも多くの親子が救われますように。


サポートいただけると励みになります。いただいたサポートは、私が抱えている問題を突破するために使います!