何か良い弱音の吐き方はないものだろうか。

　ネガティブな気持ちを書き出すのは一つの排気的な儀式だから良しとする、でも読み物とするには闇っぽいテーマに触れるし書き方が難しいから良い物になりづらいよね、みたいな話をこの冬の間にちょろっとしていた。しかししかしネガティブなことを書きまくっても良い出汁の効いたスープみたいなエッセイに仕上げ切れる大した人はこの世のどこかに一定数おられるのでぼくも密かにその枠内へ入っておきたい。ちょっとした特技はありますかと問われる時「何しろ書けます」と言えるように備えておこうではないか。
　プレガバリンを一錠飲んでへろへろしながら誰かさんの文体の真似まではせずとも意気込みは見習わなちゃ。誰かに似た感じにはならないように注意しつつ何ぞ考えてみようではないか。

　音沙汰無しは無事のこと、なんて人へ言いつつ実は自分にそうとばかり言ってられないくらいローなテンションが続きすぎた我が身の前年を振り返った。
　どうにもこうにも半端な休息じゃ回復しづらくオンオフの切り替え機能が低下しがちで、日常の様々に支障があったのだ。
　仕事の能率が落ちたのは一時的だろう、とは言えど忘れ物や落し物が自分でびっくりするくらいひどくなり、それはもしも親兄弟に知られたら引かれるどころか診察室送りにされる。
　お店での貴重品の置き忘れは約半年間で財布が二回、スマホが三回。よく毎回手元に戻ってきたもんだがそれらは発見者さんがねこばばしたらバレやすい品々だからだろう。交通系ＩＣカードは同時期に二枚連続消失させてしっかり戻ってこなかった。

　後から思えば自己管理が甘いのだから注意散漫の常態化は当然だった。
　長きにわたる不調は統合しない因果が散々あり、その瑕疵を創作へ転嫁する意欲さえ出ぬ原因は改善半ばの身体にあり、それがおおむね七時間睡眠で正常に戻るのだと気付くまで、大体気体になったような心持ちで過ごした。
　好調だった頃みたいな無茶は効かない、日頃から規則正しく睡眠を取らなければいざ体が眠りたくなっても脳が眠らせてくれなくなり首も肩も手も目も意識しちゃった途端ずんずん痛くなる。
　大丈夫大丈夫、そんな気をいちいち張りたくなりもするが、身体が予後不良となっては本当に詰んでしまいそうなので今はとにかく躊躇せず睡眠を優先している。それだから布団ダイブなんてことにも気合いが入るのだった。

　肉体を回復させ精神を高揚させ、それでも何か足りない自分が頼りなくて情けなくてみじめなんだと夕暮れの海へ向かって叫べるものなら叫んでみたくはある。

　ただ動けるだけで不思議とまだまだ強いんだって気がするついでに楽勝の自己発破をかける一方、そんなことどうだって良いじゃないか今はおやすみよく寝て治れ死ぬ気で生きろってこと、ああそうさ無理なもんは無理だとにかく寝ろとにかく寝ろと頭の中の双子がエキセントリックに歌う。はいはいわかりましたよ静かにしてくれ。眠くなったら寝ます。我慢せず寝ます。がってん承知のスケソウダラダラダライ・ラマ。

　道を歩けば右にも左にも気をつけて思考のフットワークを軽くする。待機中のギアは自然ニュートラルで走るなら走るためにドライブ。燃料が切れたりタイヤがパンクしたり色々あろうがその時はその時、電車でも三輪車でも乗りかえるとしよう。
　ハンドルもペダルも単純に手足が覚えてくれているから特に意識せずとも忘れず使える、そういうことと同じで這う這うの体ながら何か書いては微妙にしぶとく前進しておる。

　うん。生身ある毎日は色々難しい。寒風の絶えぬ今日もそれなり妙な詩的によう生き抜いた、やっぱ感謝だわって落ちに着くもの。おお、落ち着け、落ち着け、昨日も今日も忘れ物は特になかったんだから、しれっとグンナイ・ダイブだい。