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敗れてもなお―感情的ボクシング論

「ボクシングが好きとか嫌いとか関係なく
これは人生するかしないかの分かれ道で”する”という方を選んだ
勇気ある人々の物語です。」

これは映画評論家の荻昌弘が月曜ロードショーで「ロッキー1」を評した有名なコメントだが、今回紹介する佐瀬稔「敗れてもなお―感情的ボクシング論」を評する時にもピッタリなコメントである。

そして「敗れてもなお―感情的ボクシング論」は、人生の節目で読み返す僕にとって最も信頼している本である。

興味のない人から見れば、ボクシングは殴り合う野蛮なスポーツだと思うかもしれない。

しかし一旦ボクシングに心が奪われてしまうと、そこに人生にとって大事なことも見てしまうことだってある。

ものが豊かになればなるほど、若者をボクシングに駆り立てる動機は形而上の思想となっていく。その思想に対する共感も広がる。高みを求めるのは高貴の心である
「近ごろの若い奴」 P.302-303
ボクシングに限らず、職業、人生の過ごし方、立ち向かい方、その他あらゆる分野、レベルにおいて技術を磨くことは必修の課目である。技術の習得は向上の実感をもたらす。
「思いつめて」 P.71

ボクシングが好きとか嫌いとか関係なく
生きていく中で自分をどう表現するか、仕事への向き合い方、思いつめ方など人生に必要な事を佐瀬さんのボクシングに対する愛情とボクサーに対する敬い溢れる”感情的な文体”を通して、教えてくれるのが本書である。

自分にはこれしかないんだという激しい思いつめ方

自分にやれることをとうとう見つけたぞ、と思ったよ。
以来、ボクシングをやっている。
これしか他にできることがなかったからだ。
身を粉にする気さえあったら成功を掴める
ベッドフォード・スタイブサント(※ブルックリンのスラム街)からきた奴にとって、自分の身を捨てるなんて、簡単なことさ
(フロイド・パターソン P.73-74)
中学校では勉強が苦手やった。成績はいつもビリです。他にやれる事はホンマ、何にもない。今もそうです。僕からボクシングとったら何も残らんのです。負けたらそのボクシングをやめなあかん。やめたら何をすればいいのかわかりません。それが怖いから、必死に練習するんですわ。ボクシングが続けられるように。
(辰吉丈一郎 P.9-10)
僕は小さい時からボクシングをやってきたし、それをやめたら後には何も残らないんです。本当にそうなんです。だから、諦めるのはよそう、どこまでも自分を信じて続けようと...
(川島郭志 P.113)

読後、

佐瀬さんの文章が的確に僕のツボを突いてくるというか
ツボよりももっと深い部分に触れてくる感じ。

あーわかってるなぁという信頼は揺らぎません。


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