見出し画像

俳句、自選自解006(空虚)

空虚とは空腹のこと曼珠沙華まんじゅしゃげ

つねたまじめ


二十そこそこの私は、いつも空虚だった。
頭も、心も、足りないものばかりだった。それでも、お腹がいっぱいになれば、何かが満たされる。

この句ははじめ、

空虚とは空腹のこと食の秋

という俳句だった。
俳誌に投句すると、泉田秋硯先生は下五を「曼珠沙華」と添削し、載せてくださった。

生きることへの虚しさ、食べることの悲しさと残酷さにとらわれていた私の心は、秋の田へとトンボのように飛んでいった。
空虚も空腹も一時のこと。真っ赤な曼珠沙華が、だからこそ美しく咲けるのだと、私の秋を飾ってみせた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?