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「怪物」

 映画は割と劇場で観ている方だったが、去年はコロナと気乗りしないのとで、一年で観たのは3本のみ。
 そうなると劇場に足を運ぶのが億劫になり、どんどん遠のいていたけれど、人に誘われて思い切って劇場に足を運ぶと、勢いがついたのか立て続けに足を運んだ。
 「ミッションインポッシブル」、「君たちはどう生きるか」、「怪物」、「キングダム」。この1ヶ月ほどで、すでに昨年を上回る。
 夏休みの関係で話題作が多くなっているからだろうか。

 「怪物」は公開して日が経っていたので、朝か夕方の二択みたいな時間帯しかやっておらずもう劇場もかなり少なくなっていた。そして満員だった。

 是枝監督の作品は、割と悲惨な目を背けたくなるような終わり方が多い気がするので、私もかなり腰が引けていたのだけれど、本当にいろんな人から、「怪物見た?見てないなら見た方がいい」と言われ、祝日の日に足を運んだ。

 子役の演技の凄さに圧倒された、良い映画だった。個人的には是枝作品の中でも救いがある方だったと思う。ビビらなくても良かったかな。

 映画は黒澤明の「羅生門」方式の映画で、それぞれの視点から見える真実を映していて、人の数だけ真実があるとはこういうことなのだな、と思った。この時の瑛太の演技はすごかった。
 自分の目に見えている真実にとらわれると、視野が狭くなってしまうのだな、と。映画を見るとそう思うのだが、いざ自分も当事者になると、そんなことは言っていられないだろう。「怪物」ってすごいタイトルだな、と思う。

 子供の、少年期の揺らぎや、心の機微がとてもよく表現されていて、本当に驚く。是枝作品の子役は台本をやるというより、割と自由で、周りの大人があてていく、みたいな話を聞いたことがあるが、今回は台本を読んでやったらしい。
 脚本の凄さと、子供達の演技力の凄さをとても感じた。

 最後は色々と解釈が分かれるところだと思うが、それがどういう形であれ、子供達が幸せであればそれで良いな、と心から思ったし、なにか熱いものがこみ上げてくるような気がした。

 周りのおすすめの通り、とても良い映画でした。そろそろ公開も終わりに近づきつつあると思うけれど、機会があればぜひ観てみてほしい作品でした。

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