もっと優しくなりたいな。
ふと、ただ唐突にそう思った。

普通は写真を見たり、何かしらのきっかけで、当時の記憶が思い出されて、そのようにふと思う。
しかし、何の前触れもなく、まるでアイディアが降りてきたかのような感覚に近かった。
驚きのあまり、口には出していなかったが、それを制するように口許を右手でおさえた。
そんな自分が可笑しくて、ついついにやけた。

そして数日後、もう一度同じような経験をした。

そういえば、夢を見なくなったな(目標を持たなくなった)と唐突に思ったのだ。
何の前触れもなく「そういえば」から始まるのもおかしいのだが、そう思ってしまったのだから不思議だ。

「優しくなりたいと唐突に思った」とぼくが客観的にもし聞いたとしたら、この人だいぶストレスが溜まっているんだろうなと感じたと思う。

優しくなりたいことも夢を見なくなったことも、何となく心の片隅で微かに感じていたことではある。
近頃、職場での人間関係が面倒でストレスを少し抱えていた。だから、ストレスを抱え込まないように、防衛本能のような何かが働いてくれたのかもしれない。

優しい人でありたい。
夢を持った人でありたい。
その思いから、自分の期待には応えたい、自分を裏切りたくないへと、そう自然に決意していた。