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おどろもどろ

僕は、あなたが嫌いだ。
世の中の過半数以上の人も嫌っているであろう。
それは、致し方ない。
あなたの性だから。

あなたのことを、幼い頃から知っている。
昔から脚が速くて有名だ。
でも脚が速いだけじゃ人気者にはなれない。様々なものを纏い選り好みのない自己中心的なあなたは、そりゃ嫌われるよ。  

普段、日中を嫌い人気を避けているように見せているのにも拘わらず、日が暮れ始めると寂しくて人に触れたくなったのか、突然会いに来る。
あなたの自由奔放さに付き合っていられるほど、僕は暇じゃない。おかげさまで寝不足だ。来るだろうと待ち構えていても、そういう時はやはり来ないものだ。

そうやってハッキリしない、自由に生き生きしている様を僕が今も昔も毛嫌いしていることに、いつになったら気づいてくれるのだろうか。
こうして、意思疎通の取れないあなたに意識をいつまでも向けている僕はどこかおかしい。

僕は、冬が好きだ。
でも、あなたは冬が嫌いなようだね。
そこが、僕があなたを好きになった唯一のところだ。だから、僕は冬が好きだし年中そのようにあって欲しいと思っている。
一層のこと寒い地域に移住するのもいいが、そう簡単にはいかない。

そして、春が訪れ夏が訪れる。
僕は、あなたの事を思い出す。嫌いだと言っておきながら幾度となく思い出す。もしかしたら、あなたに会いたいのかと疑問に思ったが、それは間違いであると断言できる。
結局のところ、嫌いなものは嫌いなのだ。
それ以外に理由などありはしない。

ここ数年、あなたを見ていない。
寂しく恋しくも、そういった気持ちは微塵もないことを一応述べておく。
そんな、あなたが一躍異様な変貌を遂げてメディアに取り上げられるまでに有名になった。
こんなことが起こり得るんだなぁと感嘆しながらも、その出来事は不思議なことではないとも感じていた。
どんなもんかと様子を窺ってみたけれど我慢できず途中で引き返した。

やはり僕は、あなたのことが嫌いらしい。
どんな立ち居振る舞いになろうが、この気持ちはこの先も変わることはない。

一方的な僕の拒絶になってしまったが、そんな拒絶すらもあなたは意に介さない。
これから先も、相変わらず生き生きと迷惑をかけ続け、沢山の人に出会って成長していくのだろう。

そんなあなたを、僕はこれからも断固として毛嫌いしていく。

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