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【開幕延期を考える】首脳陣を護るために、「開幕しないで、プロ野球」

※この記事は文春野球学校内で2020年4月2日に掲載したものです。


私も、開幕戦のチケットを押さえていた人の一人だ。
東京野球ブックフェアがあるから、金曜土曜の2戦。
メットライフドームでの、西武対日本ハム。
ご存じの通り、試合が無くなった。

日々変わっていく状況の中、開幕期日の選定よりも、まず人命が第一ではないかと考え始めている。新型コロナウイルスが、球界にも魔の手を伸ばしているからだ。

球界に忍び寄る悪夢

3/26夜に、阪神の藤浪晋太郎が感染したことが明らかになった。その後は伊藤隼太、長坂拳弥も、である。
彼らは合コン(のようなもの)をしていた、と報道されている。結果として選手3人を含む参加者6人と選手の同居家族1人の計7人が感染者となり、クラスターを生み出した。
合コンには阪神選手が計7人参加していたとも報道されるし、新たに判明した8人目が未成年女性だ、という情報もあるようだ。
ここまでは、結局何を信じればよいかわからない状況だ。


そして、志村けんが3/29に死去した。新型コロナウイルスに感染して、だ。
懸命の治療も及ばなかった。
ここで明らかになった事実は、「最新の医療が潤沢に受けられる人(財力的な意味で)も、たった2週間で死亡してしまうことがある」ということだ。

志村けんが酒好き・ヘビースモーカーであったことは知られている。肺炎の既往歴もある。
そのため、新型コロナによる肺炎の進行が速かったのではないか、とも考えられる。


そして、昨日4/1の、梨田昌孝氏感染報道だ。


『梨田さんは3月25日から倦怠(けんたい)感を訴えて静養していた。28日に発熱、30日に呼吸困難となった。31日午後に大阪府内の病院に緊急搬送された。重度の肺炎と診断され、PCR検査を受けていた。集中治療室に入っている。』(朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASN415FTGN41PTQP003.html )

※投稿日追記:4/3現在でも梨田氏の容態に変化はないようです。(サンスポ.com https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200403-00000009-sanspo-base )


パリーグ首脳陣の高齢化率

これまでの傾向で、高齢者の重症化率が高いことが明らかになっている。

そして、プロ野球OBに高齢者は多くいる。
監督・コーチですら高齢者はいるのだ。

ここで仮に「高齢者」を「60歳以上」とし、パリーグ首脳陣の該当者を探す。
ここでいう「首脳陣」とは、監督とコーチの総称であり、人数・年齢・肩書は各球団HPに準拠する(2020/4/2)。

・北海道日本ハム (1/19)
 原田豊 ファーム総合コーチ 61歳

・東北楽天 (1/21)
 金森栄治 一軍打撃コーチ 63歳

・埼玉西武 (1/21)
 辻発彦 監督 61歳

・千葉ロッテ (0/21)
 該当者なし

・オリックス (1/22)
 西村徳文 監督 60歳

・福岡ソフトバンク (4/26)
 立花義家 1軍打撃コーチ 61歳
 小川一夫 2軍監督 65歳
 久保康夫 2軍投手コーチ 61歳
 新井宏昌 2軍打撃コーチ 67歳

となる。

50代の人数はどうだろうか。

・北海道日本ハム (5/19)
 栗山英樹 監督 58歳
 木田優夫 投手コーチ 51歳
 荒木大輔 ファーム監督兼投手コーチ 55歳
 島崎毅 ファーム投手コーチ 53歳
 山中潔 ファーム育成コーチ 58歳

・東北楽天 (4/21)
 光山英和 一軍バッテリー兼守備戦略コーチ 54歳
 笘篠誠治 一軍外野守備走塁コーチ 55歳
 奈良原浩 二軍監督 51歳
 真喜志康永 育成総合コーチ 59歳

・埼玉西武 (5/21)
 馬場敏史 作戦兼守備・走塁コーチ 55歳
 秋元宏作 バッテリーコーチ 51歳
 清川栄治 二軍ファーム投手総合コーチ 58歳
 杉山賢人 二軍投手コーチ 51歳
 田邊徳雄 三軍統括コーチ 53歳

・千葉ロッテ (3/21)
 吉井理人 一軍投手コーチ 54歳
 堀幸一 二軍打撃コーチ 51歳
 諸積兼司 二軍外野守備・走塁コーチ 50歳

・オリックス (8/22)
 高山郁夫 ヘッドコーチ兼投手総合コーチ 57歳
 田口壮 野手総合兼打撃コーチ 50歳
 風岡尚幸 内野守備・走塁コーチ 52歳
 別府修作 ブルペンコーチ 56歳
 中嶋聡 二軍監督 51歳
 三輪隆 育成統括コーチ 50歳
 酒井勉 育成コーチ 56歳
 中垣征一郎パフォーマンスコーチ兼コーチングディレクター 50歳

・福岡ソフトバンク (10/26)
 工藤公康 監督 56歳
 森浩之 1軍ヘッドコーチ 55歳
 森山良二 1軍投手コーチ 56歳
 髙村祐 1軍投手コーチ 50歳
 大道典良 2軍打撃コーチ 50歳
 松山秀明 2軍内野守備走塁コーチ 52歳
 藤本博史 3軍監督 56歳
 若田部健一 3軍投手コーチ 50歳
 関川浩一 3軍打撃兼外野守備走塁コーチ 51歳
 齋藤学 リハビリ担当コーチ 56歳

以上のようになる。
50代を加えると、圧倒的に人数が増加する。

ちなみに梨田氏は66歳。球界OBの中では「若い」部類だろう。
王貞治も張本勲も79歳。長嶋茂雄は84歳だ。

パリーグ球団の首脳陣に占める50代・60代の割合を求める。
「(60代人数+50代人数)/首脳陣人数」で割り出す。
(小数点以下第四位を四捨五入)

・北海道日本ハム (1+5)/19=0.316

・東北楽天 (1+4)/21=0.238

・埼玉西武 (1+5)/21=0.286

・千葉ロッテ (0+3)/21=0.143

・オリックス (1+8)/22=0.409

・福岡ソフトバンク (4+10)/26=0.538

千葉ロッテが突出して低い。
井口資仁監督は45歳。30代のコーチは4人。最年少は31歳の伊志嶺翔大だ。

逆に、福岡ソフトバンクは突出して高い。
30代のコーチは4人いる。しかし千葉ロッテとの違いは40代の少なさだ。
千葉ロッテは40代が14人。対して福岡ソフトバンクは8人である。


最後にパリーグ全体の人数で考える。

(8+35)/130=0.331

つまり、パリーグ首脳陣のうち1/3が、50代と60代によって占められているといえる。

しかし、それは球団により様々だし、そもそも現役選手/首脳陣だからかかりやすい/にくいと論じることはできない。あくまで重症化のリスクの問題である。

年齢のみで論じることも不可能だ。既往歴や喫煙習慣がある人は重症化リスクが高くなる傾向にあることが分かっている。

現役選手でも度々タバコをふかしている写真がすっぱ抜かれることはある。千葉ロッテのブランドン・レアードは自身のインスタグラムに葉巻の写真を投稿していたりする。未成年喫煙……誰でしたっけ


開幕は危険だ

で、何が言いたいか。

現状でプロ野球を開幕させるのは危険」ということだ。


基本的に、屋外球場は解放空間だし、屋内球場でも換気がなされているだろう。
しかし、ベンチはまだしも、ロッカールームはどうか?
意図せずとも濃厚接触となってしまう場面はいくらでもある、と考えられる。

おまけに首脳陣の高齢化率。
中には監督も含まれる。

OBと球団首脳陣が練習を見ながら会話、なんてのもあるし、テレビ局のレポーターがインタビュー、というのも見受けられた。

平常時なら全く問題がない行為でも、新型コロナが猛威を振るう中では命取りになる。


もちろん、野球がない生活は物足りないし、見たかった開幕戦は見られなかったし、野球の話題がないニュースウォッチ9は最後まで見られない。


志村けんの死去には、国民が泣いた。
梨田氏の感染報道に、プロ野球ファンは不安を募らせている。

これ以上、球界に感染者を出したくない。
感染した先には、無数の悲しみが待ち受けている。

だから、開幕延期には泣く泣く賛成するし、新型コロナが沈静化するまでは無観客試合も行わない方がいいと考える。


またいつか球場で、野球選手の元気な顔が見たいから。大歓声の一員になりたいから。

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