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眠れない夜に私


小学生の頃の私は嵐の曲以外は何も知らないくらいに嵐ばかりを聴いていた。完全に親の影響である。「天才!志村どうぶつ園」の影響で相葉くんを好きになり、24時間テレビのスペシャルドラマの撮影のために金髪になったニノを見て、完全に心がニノに移った。毎年出るアルバム曲も、CMソングのシングルも、私が生まれる前の曲も、全部聴いた。当時はスマホどころかiPodも持っていなかったから音楽は車の中か、CDプレイヤーで流すかの2つの方法でしか聴けなかった。



中学生の頃、「ニノさん」という番組を観ていた。ニノがRADWIMPSの有心論の「君があまりにも綺麗に泣くから僕は思わず横で笑ったよ すると君もつられて笑うから僕は嬉しくて泣く」という歌詞を紹介し、「こんな哲学的な詞を書きたい」と話していた。その影響でRADWIMPSを聴き始めた。嵐の曲とは全く違うバンドサウンドに抵抗があった。過激な歌詞を理解できなかった。でも、好きな人の好きなものを好きになりたいという一心で聴き続けていたら、RADWIMPSを好きになっていた。有心論が収録される4枚目のアルバムはすり減るくらいに聴いた。この頃にはiPod touchを親に買ってもらっていたから、部屋でイヤホンをつけてひとりで聴いていた。当時、周りのみんなは誰もRADWIMPSを知らなかった。中学2年生のとき、同じクラスになった子が初めて「RADWIMPS知ってるよ」と言ってくれた。その子がsumikaを教えてくれて、いわゆる(と言ってもひとことで何が邦ロックなのか説明しろと言われてもできないけれど)邦ロックの世界が広がった。SEKAI NO OWARI、04 Limited Sazabys、米津玄師、BUMP OF CHICKEN、KANA-BOON、ヤバイTシャツ屋さん、クリープハイプなど、ありえないくらい色々な系統のバンドを聴いていた。ただ、恋愛ソングに特化したようなバンドがどうしても好きになれなかった中学時代だった。(クリープは派手な言い回しが好きでした、あとあの変な声が)




高校生の頃も、ずっとRADWIMPSが好きだった。「君の名は。」の影響でみんなが知るバンドになったRADWIMPSは、文化祭で友達のバンドがカバーしていて、私にとって新しい意味を持つバンドになった。きのこ帝国、リーガルリリー、SUNNY CAR WASHなど、先輩の影響で聴くバンドの幅が広がった。小学生の頃からずっと好きだった嵐が活動休止を発表した。小学生の頃からずっと好きだったニノが結婚した。当時の恋人と電話しているときに泣いてしまった。彼はBUMP OF CHICKENとRADWIMPSが好きだった。恋愛をして、backnumberに抱いていた嫌悪感が和らいで、平気な顔でわたがしも花束も聴けるようになった。ダサいなと思いつつも、RADWIMPSが相変わらず青春の真ん中にある3年間を過ごせたのが嬉しかった。



大学生になってもRADWIMPSを聴いていた。嵐は聴くと泣けてしまうので聴けなくなった。いろんなバンドが活動休止していく一方で、SNSをきっかけにいろんな新しいバンドに出会えた。BUMP OF CHICKENの持つ意味が高校生の頃よりも濃くなっていった。高校生の頃に避けていた青春をぶつけたような弾けるバンドも聴くようになった。嫌いな音楽が歳をとると共に減っていっていることが悲しく寂しく、だけれど嬉しかった。中学生の頃に聴いていた曲を今日もまだ聴いている。中学生の頃には好きになれなかっただろう曲も聴いている。青春パンクなんて呼ばれる、ハルカミライのライブにひとりで行っている。




初めてのZepp、初めてのハルカミライ。




ずっと楽しく、ずっと悲しく、ずっと、生きていたいと思えるライブだった。



あんなに近い距離に他人がいるのは生活の中には存在しない場面なのに不快がないのは、ただの他人ではなく、同じものを信じて、同じものに救われた他人だという事実があるからだろう。数千人に囲まれて、眩く白い照明に照らされているのに、私は限りなくひとりなのだという事実が、誰も私のことなんて見ていないのだという事実が、みんなで、同じものを見ているのだという今が、私を救ってくれた。誰も私を見ていない。誰も私を気にしていない。ここに、このZeppにいるのは、私とハルカミライだけだと誤解できるような音楽に涙が止まらなかった。



好き嫌いばかりしていた頃も、マイナーであればあるほどいい曲だと思っていた頃も、メジャーなバンドの良さをきちんと感じられるほどには幼さを失ってしまった今も、なんだか全てを認めてあげたい。過去の延長に、あの頃の自分が生きてきたから今の自分がいることに感謝さえ覚えるようなライブだった。きっとこの日を忘れない。忘れても、忘れちゃったことを何度でも思い出すと思う。



12月に武道館でまた彼らの音楽を聴けることがたまらなく嬉しい。サイコ〜でした。全部、あなたのための、私のための世界だと思う。眠れない夜には音楽を聴こうね。またね。



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